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醜い予算の数字とは何か

2018.10.29 カテゴリ: 管理会計

1.予算(昨年比)実績分析とは

 10月の半ばごろから結構業績修正の話を新聞紙上などでよく聞きます。「失望売り」などと書かれていますが、そもそもこの流れのはやい現代で予想通りいく方が変だと思います。そのもとになっている予算の話を今回とりあげます。予算の数字の使われ方を見ると醜い数字の羅列でしかないことも頻繁に見かけます。

 ある程度の規模の会社になると予算を作成するようになります。そしてだんだんと会社の規模が大きくなると予算実績分析も加わりかなり詳細な報告を行うようになります。なぜ予算実績分析必要?と考えると3つのポイントがあると思います。一つはPDCAのC(チェック)の要素できちんと予定通りいろいろな行動が行われているかチェックをしていくという側面です。これが本来の一番重要な予算の役割と思います。そのほか2つ目としては会計処理に誤りがないかのチェックです。予算は通常はきちんと論理的に積み上げて作っていますからそれと大きな乖離がある時は例えば仕訳の入れ間違えなどのケースも考えられます。意外に予算実績(または昨年比)で誤りが見つかるケースがあります。3つ目は上場会社のみではありますが、予算は公表している業績予測と関係がありますから、業績予測との対比を投資家などに説明する元資料となるわけです。

2.予算管理の現場で見たこと

 ただ、実際の現場で月次予算実績を行うと多いのが月ずれです。月ずれとは例えば予算上は9月に計上しているのですが結局使うのは11月になりそうだといったものです。こういった月ずれの管理は単月ではなく累積月で行えば十分で、単月でいちいち全部説明している企業などをみると随分無駄なことに時間を使っていると感じます。ただし期ずれとなり翌年度の執行になると問題視されるので必死です。

 月ずれ、期ずれの問題は費用だけでなく、売上も絡みます。出荷しないと売上にはならないことが多いですから製造や輸送の関係、またはお客様の倉庫の都合などで出荷ができないのは営業の方々にとっては死活問題です。ただ、このあたりを逆手にとって値下げなどを要求してくるお客様もいるのも頭が痛いです。

 一方特にBTBの営業部門では今が繁忙期です。なぜならば3月決算の会社だと今くらいに翌年の予算を作成する作業始めているのでここで予算取りをしておかないといけないわけです。特に相手が官公庁だと予算に入れていないとその年は絶望ですので必死です。

 ただ、よく考えてみると一般的に予算は1年前以上の情報に基づいて約1年前に作成されているものです。この変化の速い時代にそのようなやり方でよいのでしょうか?

3.予算管理の問題点

 本来のPDCAのCとしての予算管理を離れた使い方をされていて、「管理のための管理」、しかも場合によってはその管理が事業に悪影響を及ぼす管理となっているのが醜い数字の羅列となっている原因です。

 予算のあり方として一番問題だと思うのが官公庁だと思います。とにかく前例主義で前年行って消化したものは例え本来役割を終えたものでも既得権益として残りますし、必要ないということで使い残すと非難されます。一方ニーズがあっても新しいものはなかなか予算化されませんし、緊急な必要性があっても補正予算に盛り込まれなければだめです。

 これもかなり業種によりますが、一般企業でも予算に計上されていないので、本来必要なことなのに、来年までできないというボヤキを現場の方々からよく聞きます。こんなことだと変化に対しての素早い対応などは無理だと思います。加えて、営業の方々は顧客のために問題解決をする手法(商品)を提供する方であり、予算にあげた実績を達成するために商品やサービスを押し込む方々では本来ありません。

 経営管理をしている方々も予算で計上されているものをひたすらチェックして細かく報告しているだけでしたら極めて不毛な仕事をしているといえます。このようなことをやっている本当の理由としては「上司から差異の原因を聞かれて答えられないと恥ずかしい」ということでPDCAのCを行っているわけではありません。役員など上位の役席の方で一人でも細かくチェックすることが大好きな方がいると(必ずどの会社もいます)このあたりの作業が果てしなく多くなります。私などは会社員時代「それ何のためのご質問ですか?」などと切り返して偉い方の不興を買っていたことをふと思い出しました。

4.今後の予算

 「予算」というのはPDCAのCをするための手段であってそれ自体が目的ではありません。それを踏まえて予算の運用考え直さないといけないですよね。

 欧米企業などでは普通に取り入れられているのですが、固定予算ではなくローリング予算が主になっていくでしょう。ローリング予算とは4半期、または月ごとにその先1年間の予算を組み替えていくものです。大きな企業ですとシステムの導入が必要ですし、エクセルベースなどで作成している企業だと工夫が必要です。

 ただ、ポイントは「仕組み」を形通り取り入れるのではなく、その根本にある考えにあります。根本にある考えは、PDCAのチェック機能は保持したまま、変化に応じれるような体制にしようということにあります。欧米企業でローリング予算を導入しても前月(または前四半期)に作成されたローリング予算と今回作成されたローリング予算の差異をまた事細かく追及する会社もありますがそれは無駄な膨大な作業を生むこととなります。ポイントは一定のコントロールの下、状況の変化に適切に対応できているかであり、よく「なぜこの費用がかかると早くわからなかった」「なぜこの売上が達成できないと早くわからないのか」などと個人攻撃をする方がいますがこれは時間の無駄でもあり、隠ぺいやごまかしを生む以外何の効果もありません。大切なのは未来にどうするかであり、過去の失敗やミスは再発防止策さえとられていれば問題視する必要はないはずです。

 まとめると数字を創る際はその本来の目的をきちんと考えないと単なる醜い数字の羅列に過ぎないわけです。予算に限っていれば新しいものは美しいといえるのではないでしょうか?」

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