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曙ブレーキはなぜ事業再生ADRを申請したか

2019.02.11 カテゴリ: M&Aグローバルビジネス企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略


 

     

    1.事業再生ADRとは

 

 曙ブレーキが1月30日に事業再生ADRを申請しました。事業再生ADRなのですが、ざっくり申し上げると第三者が仲介する法律に規定がある私的整理です。対象は金融機関だけであり一般的なサプライヤーなどの商的取引は影響を受けないですし、上場も維持されます。破産や会社更生のような法的整理ではないのですが、一方私的整理のようによく言えば自由、悪く言えば適当で不透明な手続きはある程度手続きが法律で規定されているためできません。法的整理の手続きの透明性と私的整理の自由度を組みあわせたとでもいうのではないでしょうか?したがって別に倒産したわけではないですが、債務負担が重く、かなり資金繰りが厳しく金融機関の間での調整が必要になったということだと思われます。

 

 

     

    2.曙ブレーキとは

 

 独立系のブレーキ専業自動車部品メーカーで昨年2018年3月期の業績は売上約2600億、税引前利益7億程度の中堅企業です。特徴的なのは売上の半分が北米、日本国内が3分の1で北米にかなり売り上げ依存しているということが言えます。顧客層を見てもGMが約27%、日産が14%、トヨタが10%、フォード、クライスラーがそれぞれ5%と4%といった具合です。ただし、利益ベースでみると北米事業は2017年度に少し黒字を出した以外はトントンか赤字で業績的には足を引っ張っていたといえます。実は日本を除くアジアでの利益率は高く、2019年度で見ると地域別でみると利益を出しているのはアジアだけで特に中国とインドネシアでは2桁の営業利益率を稼いでいます。

 北米事業はまずGMとの合弁会社を設立してGlasgow工場を建設したのち(後に100%子会社に)独ボッシュより北米のブレーキ事業を買収し、ClarksvilleとColumbiaの2工場を手に入れました。これは工場とともにFord社の事業も手に入れるということが目的だったようです。ただし、この2工場とくにColumbia 工場はずっと赤字が続いており業績の足を引っ張っているようです。加えて、Ford社の仕事も現状約売上の5%程度とあまり受注することができず稼働率的にも問題があるのではないかと思われます。

 

 

     

    3.今回のADRの申請の背景

 

 今回、適時開示資料では米国企業の国内乗用車生産からの撤退と生産の混乱による失注とアナウンスされています。したがって、マスコミ的にはトランプ政権の貿易戦争によりGMが乗用車国内生産から撤退した被害者第一号的なとらえ方もあります。しかし、確かにこれは一つの引き金ではありますが、根本的な原因ではありません。実は2018年末から流動比率(流動資産÷流動負債)は70%程度であり、もうすでに財務内容は悪化していました。有利子負債も1000億を超えています。

 そして、この財務内容の悪さは主たる市場である北米における低収益な体質があるのではないかと思われます。生産の混乱は過去にも何度か起きており、受注が伸びると対応できずにコストが上がり、2015年GMのブレーキにおいてリコール問題を起こすなど品質にも問題が起きてしまいました。要するに稼働率が低いと赤字、高くなっても一定率を超えるとコストがかさみ赤字という循環が過去から特に北米事業では続いています。

 その大きな理由としてはブレーキ事業のグローバルなシェア的には7位であり、価格交渉力やコスト競争力が低いのではないかと想像されます。コスト構造の抜本的改善や価格交渉力を付けないと目先何とかなっても長期的には生き残れないのではないかというのが私の見方です。

 

 

 

 

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