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なぜコダックが倒れ富士フィルムが残ったのだろうか?

2019.02.25 カテゴリ: 企業経営での留意点, 経営戦略

 

 


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    1.ダイナミックケイパビリティとオーディナリケーパビリティ

 

ネットに載っていた慶應義塾大学菊澤教授の記事ですが、非常に興味深かったので紹介します。

https://blogos.com/article/359856/?p=1

 詳しくは本文を読んでいただければよいのですが、その前提として「ordinary capability(オーディナリケーパビリティ)」と「dynamic capability(ダイナミックケイパビリティ)」の概念があります。前者は「現状を維持しながら、より効率を高める能力、コスト削減能力、管理能力などのテクニカルな能力(技能的適合力)」をいい、後者は「変化に対応するために、既存の資源(資産・知識・技術など)を再形成、再配置する能力(進化的適合力)」と菊澤教授は定義されています。

 コダックは「オーディナリー・ケイパビリティのもと、一方でコスト削減に励み、他方で豊富な資金で大量の自社株を購入し、株価対策を講じており」一方富士フィルムは「会社として生き残るために、ダイナミック・ケイパビリティのもと、既存の高度な技術や知識資産を再利用・再配置して事業を多角化し、そこに保有資金を投入」したためコダックは倒れ、富士フィルムは生き残ったと論じています。

 私の肌感覚としてもだいたいダメな米国企業の末路はコスト削減とリストラに励みどんどん縮小均衡に至り、大抵どこかに買収されるか破たんするケースが多い気がします。ただ、富士フィルムのように今までドル箱だった事業をあきらめ大胆に他分野に乗り出して成功した日本企業というのもあまり見た記憶がありません。

 

     

    2.米国型と日本型

 

 特に米国の場合、株主主権の利益最大化が強調されすぎ、非常に短期的志向が蔓延、オーディナリケーパビリティに従って目先のコスト削減に走りがちな面はあるかと思います。しかし、一方でM&Aは盛んなので選択と集中で部門を売却したり、衰退した会社は他企業が買収してうまくその技術を生かすケースが多い気がします。確かに後者の場合企業自体は消滅するのですが技術自体は残って他にキチンと生かされている気がします。

 日本の場合も大半は既存の分野に固執したオーディナリケーパビリティ型の企業は大部分だという実感があります。しかし、なんとなくそれも徹底されないような中途半端なオーディナリケーパビリティ型でも日本市場だと生き残れゾンビとまでは言いませんが介護保険の「要支援2」みたいな企業が多い気がします。

 これを見ると企業が生き残ることと技術が生かされることは同意味ではなく、企業内に囲い込まれたまま死蔵する日本型の方がもったいない気がするのですが・・・。

 

     

    3.日本企業にダイナミック・ケイパビリティは根付くか?

 

 菊澤教授のコラムで唯一違和感を覚えたのは日本企業がダイナミックケイパビリティに適していると評した以下の下りです。「日本企業は欧米企業と異なり、職務権限が曖昧で、職務転換が可能だからです。これは、変化に対応して人員を再配置・再構成しやすい性質を持っている」と菊澤教授は述べています。これについては2つの点でハードルが高いと思います。まず経営者が大胆に大規模な人員の再配置・再構成を行うためにはかなり経営者に力量が必要だということです。富士フィルムでこれが可能であったのは古森会長の力量によるところが多く前例踏襲の調整型がいまだに多い日本企業では難易度が高いことがあげられます。

 2つ目としては移動する人自体にかなりの柔軟性が必要だということです。今まで花形部署だったところからよくわからない新規事業に回されて能力をいきなり発揮できる人材はなかなかいません。そういった意味で富士フィルムは人材育成の意味でも何か一工夫あったのではないかと思われます。

 したがって富士フィルムという特殊な企業を取り上げて日本企業にダイナミック・ケイパビリティに適しているとのはやや仮説としては弱いと思われます。

 むしろ教授がこの中で主張されている外部の資源を有効に使うオープンイノベーション型の進め方の方が現実的だと思います。この中ではソニーがプレーステーションでゲーム業界に参入した際の例で「ソフト開発企業や販売店と協力して、共にメリットが得られる関係を築くことで任天堂を破りました」といったことです。こういった外部のリソースを柔軟に生かせるような組織作りがキモではないかと思われました。

 

 

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