YAHOOの決算 -成長は鈍化しているか?
2018.07.30
目次
YAHOOの決算発表概観
YAHOOが27日に第一四半期の決算発表をしました。売上収益は9%増の2318億円でしたが、営業利益は前年同期比8.9%の減益でした。日本経済新聞などでは「事業の柱の電子商取引(EC)は楽天などに水をあけられ、メルカリなど新興勢力も台頭。日本のネット業界のかつてのスターもいつの間にか成長が鈍化している」とかなり厳しい論調でした。本当に厳しい状況なのでしょうか?そのあたり見ていきたいと思います。
YAHOOの戦略
YAHOOと楽天EC事業の大きな違いは楽天の場合、出店料、売上手数料、広告掲載料の3つでバランスよく稼いでいくビジネスモデルですが、YAHOOの場合2013年に出店料と売上手数料を無料にするという大きな戦略転換をしました。EC事業の取扱高で楽天に水をあけられてしまっているのでそれをカバーしようということがあります。また、YAHOOの場合検索エンジンをもっているので検索連動型広告で十分に稼げるという計算だっと思われます。
加えて2015年8月にアスクルを買収しました。アスクルはご存知のようにオフィス通販で有名ですが、おそらくどちらかというとYAHOO が目を付けているのは物流分野とLOHOCOでしょう。LOHACOは日用品が主ですから常に消費者と接点を持っています。そういった面で楽天に対して取扱高をもっと対抗するレベルにもっていくということでの買収とみています。
KPI(経営指標)に現れた結果
まずネット通販事業の取扱高ですが、楽天の3兆4000億円(2017年12月)に対し、YAHOOは2兆①000億とまだまだ水をあけられた状況です。まだまだ、追いつく状況にはありません。また、広告収入がどれだけ伸びているかということでショッピング広告売上高とテイクレート(ショッピング広告売上高がショッピング事業に占める割合)を見てみましょう。昨年の第一四半期の広告売上高55億に対し今期は70億と27.7%の成長で順調に伸びているといえるでしょう。その中でテイクレートは約4%でほぼ横ばいです。ショッピング収益が伸びている中で横ばいなのですから悪い数字ではないと思いますが、本来は検索連動型広告と絡めてこのテイクレートはもっと上がることを期待していたのではないかと思われ、その点では少し物足りない数字と思われます。
今後の戦略
うち手が失敗というわけではないですが、思ったほど急成長にはつながっていないというところが全体感ではないかと思われます。その中でスマホ決済の分野が新しい打ち手のようです。6月にスマホ決済のソフトバンクとの折半出資会社のペイペイを設立、金融分野も含めた新たな展開を狙っているようです。このあたりECビジネルにおける楽天とのせめぎあい、そしてあまりここでは取り上げませんでしたが、ヤフオクなどにおけるメルカリとの競合などなかなか外野的には面白い展開で楽しみです。