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成功する就活のための会社資料を読み込むカギとは

2024.09.07 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

目次

1.息子の就職活動

 地方の国立大学大学院(理系)にいる息子が帰省しています。理由は両親に顔を見せるためではなくインターンシップのためです。インターンシップで主流なのはグループワークでミニプロジェクトをやってもらいプレゼンするというような形態が多いようです。オンラインの場合など、プレゼン前夜はほぼ徹夜もあるようで結構大変そうです。

  一方、最近の学生は冷めています。一生いられる会社よりも、将来転職ができるようなキャリアが形成できる会社が人気は高いようです。コンサル人気などはそこにあるのでしょう。

 私はブラック企業さえ避けてくれれば有名企業でもベンチャーでも行きたいところへ行きなさいという派でほぼ進路については口を挟んでいません。よく母親はかなり息子の就職気にするといわれていますが、妻は転職が多く、今は自営の私のことを見ているので大して気にはしていないのは一緒です。

 ただ、本当に行きたいと思った会社についてはちゃんと調べてほしいと思います。個人的には会社の新卒用パンプレットもさらりと目を通す必要はあるとは思うのですが、やはり志望企業を自分調べて現実をしっかり見てほしいです。しかし、企業の資料など膨大、何を見ればよいかはわからないと思われます。そこで少し私見を述べてみます。

2.企業情報の宝庫、有価証券報告書の読み方

 やはり企業情報の宝庫といえば有価証券報告書でしょう。ただ、有価証券報告書がいいよといっても膨大でどこを読んでいいかわからないでしょうから、ここではいくつかポイントをあげてみたいと思います。

 まず第一章「主要な経営指標等の推移」過去5年間の財務数値の売上・営業利益・当期純利益くらいはさらりと見てみましょう。売上、営業利益、当期純利益あたりの推移をみて。成長しているのか、割と安定しているのか、揺れ幅の大きい会社か、業績が悪いのか。大体のイメージつかめます。自己資本利益率(ROE)もよく話題となった8%を超えるレベルか否かなど見ておくといいかもしれません。

 3.事業の内容は全体的にどんなビジネスやっているのが系統図として書かれていて、一目でわかり結構参考になります。HPよりも一覧性があります

 そして5.従業員の状況です。部門ごとに人数が書いてあり平均年収(ただし持株会社制度だと本社部門のみなのには注意)もわかります。そして管理職に占める女性の割合や賃金の男女差、育児休業の率なども記載、会社のホワイト度が分かります。

 一般的に先端技術の会社などはまだまだ女性従業員自体が少ないので業種格差はあるのですが、同業種比較ではやはり女性管理職が多く、男女賃金格差が少ない企業の方が一般的には風通しがよく働きやすい場合が多いので実は男性も注目した方が良いポイントです。

 第2章.事業の状況1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】は役に立つ情報もあるのですが、一般的には言葉も難しい場合が多く無理に目を通す必要はないかもしれません。ただし、2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標は是非読んでみてほしいです。人を育てるうえでどの程度その会社が力を入れているかが特に同業他社と比べるとはっきりわかるところです。結構最低限の通り一遍の抽象的な記述しかしていない会社も多いです。  

 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析も財務会計に強い学生などだったら目を通してほしいですが一般的には難しいでしょう。これはむしろ後述する決算報告会の資料などでカバーしたほうが時間の節約になります。

 意外に見た方が良いのは第4章提出会社の状況4.コーポレートガバナンスの状況等(2)【役員の状況】です。役員の経歴を見ると、かなり年齢を重ねて役員になっている人しかいなければ年功序列が強いと判断できます。また、中途も割と抜擢して役員にしているか、親会社からの天下りばかりかなどいろいろと情報が収集できます。

 5章の経理の状況は財務会計等に詳しい人は見てもよいとは思いますが、それ以外の人は冗長で、これも決算報告会の資料の方が見やすいです。

 以上より、有価証券報告書、一見無味乾燥な資料に見えますが、結構飾れない情報の宝庫です。真剣に企業研究する際はぜひ見てください。

 

3.決算報告会資料や統合報告書などの見方

 会社の決算報告会説明資料、一般の株主向けに作成されているのでポイントが簡潔で有価証券報告書に比べわかりやすいです。構成はだいたい当期の業績と来期の見込みが書かれています。そして、いくつかの事業を行っているグループ企業の場合、事業セグメントごとに業績とその予測が述べられています。もし、グループ企業の特定の分野に興味があるならば、例えばソニーで音楽部門に興味があるならばその事業セグメントの数字くらいはさらりと頭に入れておいた方がいいでしょう。現在の業績はどうで、将来はどんな感じか程度に目を通しておく感じです。

 そして、意外に就活生にとってだと重要だと思うのは中期経営計画書です。これは将来どんな方向に行くかを投資家に対しある程度の約束をするものです。特に大きな会社の場合、将来売却してしまう部門などは普通に出てきます。そういった事業部門の場合、将来切り離すなど明記してあるか、そうでない場合中期経営計画で言及している部分が極端に少ないです。

 すごくわかりやすかったのがセブン&アイホールディングスの中期経営計画で、以前はイトーヨーカドーやそごう西武、ほかのビジネスの言及もそれなりのページを割いていたのですが、最新のものはほぼコンビニ事業一色になっています。こういったように中期経営計画は将来の会社の方向性が比較的現実的に書かれていることが多いので参考になります

 最後に統合報告書です。前述の有価証券報告書が会社の財務報告ならば統合報告書は非財務情報の報告です。前者と違い法令で定められているわけではないので、上場企業にありがちな横並びのお作法に従っているケースも散見されますが、本来は割と記載は自由なものです。

 当然企業の気候変動や環境保護の取り組みなどに興味がある方はそこも読んでいただければいいと思いますが、やはり就活生にとってはダイバーシティや人的資本についてどの程度記載があるかでしょう。このあたり抽象的でさらっとした記述の会社と具体的な取り組みや数値も入れて丁寧に記載している会社と大きく分かれます。

 ダイバーシティ、特に女性などは女性の活用がどれだけ進んでいるかなど興味があるかもしれないですが、意外にそれは男性の就活生にも重要です。ダイバーシティが進んでいる会社は社内の雰囲気も自由闊達な社風、若くてもどんどん活躍できる企業であるケースが多いです。そもそも保守的で超年功序列みたいな会社でダイバーシティ(そもそも年齢で差別しているわけで)はなじみません。

 確かに就活している会社、今後一生働く会社ではないかもしれません。しかし、その期間が3年程度であったとしても有意義な社会人人生を送れるかどうかは重要だと思います。本命の会社であれば、ある程度調べて自分の選択は正しいか確認することは大切だと思いますので是非参考にしていただければ幸いです。

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