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なぜ報道特集の「関係悪化〜中国との向き合い方は?」は炎上したのか

2025.12.03

 毎日ニュースなどで日中関係が取り上げられることが多いです。その中でTBSの11月29日の「報道特集」が特に話題になっており、SNSなどでは山本恵里伽アナのコメントが炎上しています。 きれいごとに聞こえるかもしれませんが、考え方の異なる人たちが、お互いを非難し合う分断状態というのは建設的ではないと思います。この中でなぜ「報道特集」が問題視されているのかを私なりに見ていきたいと思います。

目次

1.報道特集の内容を整理する

 私なりに整理してみると以下のような内容だったと思います。

 高市総理の「台湾有事は存立危機事態になりうる」という発言に中国が反発し、日中関係が急速に緊張。『報道特集』では、この緊張が文化・経済・世論にまで及んでいる様子が紹介されました。

・中国側で起きた動き

・バンダイナムコのイベント
・日本人アーティストのライブなどが次々中止。
日本文化に親しむ若者は「国家の立場に従う」と語り、政治発言を避ける雰囲気が目立ちました。出版審査の停滞など、文化面での制限も取り上げられています。

  • 日本国内の空気

 首相官邸前で若者が「対話と平和」を訴える集会を開催。山本恵里伽アナは「反戦・平和という当たり前の言葉が言いづらい空気がある」と述べ、国内にも萎縮が広がっていると指摘しました。

  • 経済面

 レアアース依存の不安はあるものの、専門家は「全面的な規制は考えにくい」と解説していました。番組の結びは「1972年の日中共同声明に立ち返るべき」という提言でした。

ではなぜこの番組は「中国寄り」と炎上したのでしょうか?

2.なぜ番組は「中国寄り」と見えたのか

残念ながら編成の偏りが原因と私には感じられました。

  • 主張が“慎重・融和派”に偏った

 平和運動家、長谷部恭男教授(憲法学者で安保法制違憲派)、毛丹青氏(知日派文化人)小長啓一氏(日中国交正常化時代の田中総理の秘書官)などが中心で、安全保障の専門家が登場しませんでした。

  • 国際的な視点が欠けた

 台湾、米国、ASEANなど“当事者”の認識が紹介されず、日中だけの問題のように矮小化した構図になりました。

  • 文化遮断を行っている主体が曖昧

 イベントや出版停止の主導が中国側である点が明確に説明されていませんでした。

  • 解決策が日本側への提言に偏った

 「共同声明に立ち返り、日本側から新たな行動を」と語られ、責任の主要部分が日本側にあるかのように描かれています。中国側に求められるべき軍事的圧力の抑制、経済的威圧の停止、言論統制の緩和といった点はほぼ示されません。

 一つの意見として傾聴に値する部分はあるもの結局「対話」「平和」「文化交流」の価値を重視するリベラル系の編集方針で公平で客観的な視点の番組ではないと感じられました。では我々が求めるものとしてどうすればよかったでしょうか?

3.バランスを取るためには何が必要だったか

 まずいえるのは視点の多様性でしょう。特にそもそも国際政治や安全保障の問題なのにその専門家の解説が全くないというのはあまりに残念でした。その場合、台湾や東南アジア諸国、米国、欧州など多国間の視点もいれて広い視野の議論が広がったと考えられます。

 加えて、中国政府の行動の評価もそのなかでなされるはずです。経済制裁・文化圧力・言論統制について、国際法や外交慣例の観点から評価する必要があったといえます。

 国内の言論萎縮の分析、正直私は以前全く感じずこの点は不要だと思っていました。しかし、SNSの特に山本恵里伽アナのコメントに対する一部過激な荒れ方を見ると逆に確かにそういった傾向はあるかもしれないとは感じられました。

 最後にこの問題に対して一つ私がヒントになると思っている箴言をあげたいと思っています。それは中世の政治学者のマキャベリの言葉「自分の身を守る意思がない国に、平和や独立は訪れない」です。

 すこし、言葉の背景を説明します。マキャベリは中世イタリアの都市国家フィレンツェの外交官でした。16世紀、フィレンツェはフランス と スペイン(神聖ローマ帝国) という強国に挟まれ、外交の一手を誤れば独立が失われかねない不安定な環境に置かれていました。ここまで極端ではないですが日本も中国とアメリカという「力による正義」を信奉する2つの大国の狭間にいるという意味では類似点があります。

 「自分の身を守る意思がない国に、平和や独立は訪れない」は“武力の強化”だけを意味するのではないでしょう。でも理想だけでは国を守れない。現実を見て、自ら判断する必要があるという考え方といえます。

 『報道特集』は平和・文化交流・国内の空気を丁寧に描いていると感じます。しかし、そういった理想論だけ、そしてリベラル的な見方だけのストーリーに偏りすぎるとかえって反感を買って議論の分断の要因になるのではないでしょうか。安全保障・国際情勢・文化遮断の背景といった現実的な視点で見ていくことが大切と言えると思います

 

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