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日本企業に真のCFO(最高財務責任者)が生まれない根本原因

2023.09.22 カテゴリ: CFO人の育て方企業経営での留意点

目次

1.CFOに関するモヤモヤ

 CFO(最高財務責任者)という名称は、各企業で最近は頻繁に見かけるようになりました。ただ、上場会社において単に財務経理担当役員のことをCFOと呼んでいるケースも多いです。私は経理財務担当役員とCFOは似て非なるものだと思っています。シンプルに言うと、経理財務担当役員は過去を語る人(経理の数値は過去の数値だから)、CFOはどちらかというと未来を語る人です。

 財務経理担当役員の相手はたいてい財務では銀行、経理では監査法人となり、たいてい経理と財務を行き来したたたき上げといったケースが多いです。銀行や監査法人は過去の数字に興味ある人たちですがが、CFOがよく対峙する投資家は未来に興味があるひとたちです。

 すこし、余談ですが、よく上場企業は監査法人とわりとマイナーな数字の開示関係でもめることがあります。­­­会社の立場として中には開示に消極的な会社もあるかもしれないですが、たいていは別に開示自体に否定的なのではないです。開示にかかる労力コストと開示の読者への便宜が全く割に合わないからです。その際、監査法人などが「そんなことで投資家に説明できるのですか?」とよく言うのですが、そんな過去の些末な数字に興味を持つ投資家など私は少なくとも見たことがないです。大体興味を持つのは監査法人くらいで「監査法人以外は全く誰も興味関心がない事項」で膨大な労力を会社が費やすのは本当にむなしいとよく会社の方から愚痴を聞きます。

 未上場のベンチャーにおいてのCFOはどうでしょうか?特にアーリーステージだと単なる資金調達屋さんを求められることが多いです。VC(ベンチャーきゃピタル)やエンジェル投資家などに顔が広いかが一番求められています。でも、これビジネスモデル自体がユニークで投資家に対する社長のピッチとプレゼンテ-ションに魅力がないとどんなにCFOが頑張ってもダメです。本当はこういったビジネスモデル構築や投資家ピッチなどに深く関与できるような能力がより必要な気もするのですがあまり期待はされていないようです。

ということで日本の会社におけるCFOという立場、今でももやもや感を持っています。­­­­­­­­­­­­­­­­­­

2.CFO思考

 CFOに関する本、教科書的な本やどちらかというとテクニカルな側面でとらえている本が今まで多かったと思います。別にそれらも良書で素晴らしい本もあるのですが、なんとなく「う~ん、それだけで本当のCFOって日本に定着するのかしら?」というのはかねがね思っていました。

 そこでふと手に取ったのが「CFO思考」徳成旨亮著です。多分この本を生き生きとさせているのは著者が海外投資家とガチンコの対話を積み重ねてきたことがあるでしょう。特に米系の投資家、確かに結構日本人感覚からすると失礼な輩が多いのですが、実はあまりにもストレートすぎるだけで、本質を突こうとしているだけだったりします。

 一つ本の中にあったエピソード「オフィスの設定温度は何度か?」という質問、さすがの百戦錬磨の著者も返答に困惑したそうです。これに対する投資家の話は要するに「日本の会社は地球にやさしくなどと御託を並べ28度とかにしているがアメリカのアマゾンやグーグルは21度、冷たい方が頭は働き生産性は高くなる、一流企業であれば優秀な人間の能力を最大限に活かす方が大切なのでは?」というのがポイント、要するにどれだけ経営者が従業員の生産性に興味を持っていうかの問いでした。

 これもまた余談ですが、私はアメリカで働いていた時、冷房で夏でも寒くて膝に毛布かけて自分の部屋の中ではセーター着ていて同僚が最初は珍しがって見に来ていました。多分21度だと寒すぎて私は生産性落ちますが、確かに28度はなんとなく熱気が残っていて個人的には嫌な温度かもです。

さて、そのような著者が要するにどのようなCFOを目指すべきか主張しているのでしょうか?

3.どのような

 私が共感した部分、まず前提として日本はルール疲れをしているという指摘です。そもそも様々なルールが欧米由来でとにかくまじめに形式美を追従してしまうのは美点もありますが大きな欠点でもあるということです。J-SOXにしてもコーポレートガバナンスについてもとにかく細部までこだわって形式美的にきっちりやってしまい疲弊しているわけです。本来はこういったもの、きっちりリスクを取って「リスクとリターンの比較衡量」で手を抜くところは手を抜く必要があるのではと提唱しています。

 私はこの考えには共感しますが、日本の上場企業に同情するところはあります。基本的にルールには役所系が絡んでくることが多く、日本の役所は「リスクとリターンの比較衡量」という考え方は基本的にありません。どんなコストがかかってもゼロリスクを目指す方向にもっていこうとします。

 例えば監査法人の法定監査なども結局、管轄官庁の金融庁の言いなりなので、「リスクとリターンの比較衡量」 感覚や「コストベネフィット」感覚のない「監査の厳格化」という形式美の追求に陥り、会社側の担当者を無駄に疲弊させるだけでなく、監査法人の優秀でまじめな会計士自身も過重労働でつぶしています。

 当然CFOという役職は最後の防衛線なのでリスクについては敏感であるべきだと思うのですが、この本での強調点は「アニマルスピリッツ」です。つまり、むしろ取れるリスクはしっかりとっていきそれを逆にサポートしていくのもCFOの重要な責務であるという点です。

 現在、私も思うのですがさっと予測数値を作って成功するような新規事業は計算が間違っているか、仮定が甘々かどちらかです。汗を頭と体にかきながらどうやったらリターンが多くなり、そのためにはリスクをどこまで取れるかを必死に考えていくことが必要でそこでCFOは大きな役割と存在感を示すべきだと思います。リスクを取らなかったというのがこの30年の根本原因で例えば「半導体敗戦」も巨額投資にしり込みしてしまった経営陣であることを考えればその通りでしょう。

 確かにこの本で語られているようなある意味イケイケなCFOがどんどん誕生するとなかなか今後の日本企業も楽しみかもしれません。

 

参考 CFO思考 

www.amazon.co.jp/dp/4478118043

 

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