一風堂はなぜ世界で成功したのか?ーその秘訣とは
2025.07.18 カテゴリ: グローバルビジネス、企業経営での留意点、経営戦略。
目次
1.本場の味を求める外国人の話
今回は「ラーメンの海外進出」、中でもグローバルブランドとして確立した「一風堂」の戦略と魅力について、実体験も交えてお話ししたいと思います。
すこし前になりますが、あるクライアント企業のフィリピン法人の方とランチをご一緒する機会がありました。「何か行ってみたいお店はありますか?」と尋ねたところ、返ってきたのがこの一言。「一風堂に行きたいです。フィリピンでもよく通っていましたが、日本の味を一度試してみたくて」。本当はもう少し高級なお店にご案内したいと思っていたのですがご本人、食事の後は「日本の方がおいしい、来て本当に良かった」と大感激でした。
こうした体験を通じて、ラーメンがもはや“日本のソウルフード”という枠を超え、“文化的体験”として海外で受け入れられていることを実感します。
よくアメリカでモノが高い例えに「アメリカではラーメン一杯3000円だよ」といわれますが本当なのでしょうか。調べてみると、たとえば、一風堂ニューヨーク・イーストヴィレッジ店では「KURO-OBI」ラーメンが26ドル。為替レートを1ドル140円で換算すると、なんと3,640円!です。それでも支持されているというのは、それだけ「ブランド」としての価値を確立している証でしょう。
2.グローバルブランドへの道——数字で見る一風堂の成長
一風堂を展開するのは、「力の源ホールディングス」という企業です。1985年に福岡で創業し、当初は地元で愛される豚骨ラーメン店としてスタートしましたが、2005年ごろから本格的に海外展開を開始。現在では世界13か国以上に出店しています。
店舗数は、国内156店・海外140店。
さらに注目すべきは、その売上と利益構成です。
- 国内売上:155億円(セグメント利益15億円)
- 海外売上:146億円(セグメント利益11億円)
つまり、売上ベースでは国内と海外がほぼ拮抗しており、海外事業はすでに一風堂の重要な柱になっています。 特に注目すべきは、海外でしっかりと利益を確保している点です。なかなか飲食での海外での成功難易度は高いです。成功の一つのポイントは価格帯が高めの市場でプレミアムポジションを築いていることでしょう。そしてそれが、収益性にもつながっているといえます。
ニューヨークでの初出店(2008年)は、当初こそ試行錯誤があったものの、ラーメンの味に対する高評価や、様々なお酒やおつまみ(前菜)の提供など現地に合わせたサービス改善により、徐々にリピーターを獲得しました。「和の世界観」と「現地ニーズへの適応」の両立が、世界中での支持に結びついているといえるでしょう。
でもそれだけが成功の秘訣でしょうか?
3.国ごとに違う進出モデル
一風堂の海外展開は、単純な多店舗展開ではありません。国の成熟度や市場環境に応じて、「直営」か「ライセンス契約」かを戦略的に使い分けています。
たとえば、
- シンガポールやアメリカなどの先進国では直営店中心。
→ ブランド管理・品質維持を徹底し、「ジャパニーズ・クオリティ」を自社で保証。 - フィリピンやタイなどの新興国ではライセンス展開。
→ 現地パートナーの知見を活かし、初期投資やリスクを抑えつつスピード感ある出店。
このように、“守るべき品質”と“任せる柔軟性”を見極めていることが、一風堂の強さのひとつです。
特に新興国では、信頼できる現地パートナーと組むことで、土地確保・人材採用・マーケティングなどの課題を効率的にクリアできるのが大きな利点です。
一方、直営展開は収益性が高くなる一方でコストも大きく、ライセンス展開はリスクを抑えつつ確実に収益の一部を得ることができる――このバランス感覚が、グローバル展開成功の鍵だといえるでしょう。
海外のホームぺージを見るとよくわかるのですが、「zuzutto」という表現で「すする」食べ方から説明しています。 “ラーメン文化の発信者”として世界中で存在感を示す一方、冷静な経営戦略で着実に利益を積み重ねているといえます