GEはフラナリー氏の就任で変わるか?
2017.12.04 カテゴリ: グローバルビジネス、企業経営での留意点。
少し古い話ではあるのですが、ジョン・フラナリー氏が8月1日にCEOに就任し、10月3日で会長も兼任し、イメルト氏は完全にGEから退くことになりました。結果で見ればイメルト氏が就任時の株価は$40程度でしたが、その後は$30ドル前後で推移、営業利益ベースでみても$300億レベルであったものが最近は$150億レベルで推移していました。最後は営業キャッシュフローが配当予定額よりも低くなり減配予測がでていて最後の一押しになったかと思います。
フランリー氏のコメントをみると”Back to Basics”(基本に立ち返る)で広がりすぎたビジネスを整理して$200億レベルで売却し、会社を効率化すると述べています。就任してすぐに電力ビジネス社長とCFOを実質解雇して従業員の整理に乗り出す方針も打ち出しています。元GEの方とも話をしたのですが、GEは他の企業と比べてもともと基本に忠実でかつすべてを徹底的に早く行うという点が大きく異なるということで意見は一致しました。短期間でかっちりビジネスプランを作り合意してすぐ実行、それを定期的に見直してすぐ実行といったPDCAサイクルが極めて厳格にスピード感をもって適用されていました。また、決めたことは徹底的に行い、例えばウェルチ氏が導入したシックスシグマなども買収したばかりの日本企業にも1年目から導入して従業員も日本語でトレーニングが行われていました。
徹底という意味では罰も徹底的で日本企業で最近続発している「品質偽装」ですが、GEなどではこの手のことには非常に厳しく例え業績の良い幹部でも関与がわかれば別にマスコミ等で公に露見していなくても一発で首です。会社のためだったとか業界では常識などという配慮は一切なく徹底しています。
結論を言うと多少イメルト氏の後半、アルストムの重電部門の買収など大型買収で多少効率が落ちた部分あったかもしれませんが、金融部門、プラスティック、放送事業の売却など継続的に選択と集中は行っており高度な効率性は維持していたと思われます。
短期的にはフラナリー氏が少し大きくなった組織を簡素化して業績は回復するとは思います。しかし、大きな流れで見るとそもそもこのGEの「効率性」がカテゴリーキラー的な企業たちに脅かされている気がします。GEはかっちりビジネスプランを作ってコンセンサスをとって効率的にPDCAを回してきました。しかし、GEの産業ビジネスに将来はいってこようというという競争相手はGoogleを代表とするに西海岸の全然違う文化の企業たちです。文化として彼らは最初からコンセンサスを社内でとってちゃんとしたものを作ろうなどという発想はサラサラありません。とりあえずモノ、サービスをとりあえず出してしまい、「後でどうするか考えよう!」というかなり乱暴な物事の進め方の企業たちです。とにかく物事を進めるスピード感が桁違いでGEの効率性では全く追いつかないでしょう。
こういった西海岸系の企業たちが株価をぐいぐい上げていますからGEなどはノロマな巨象に投資家たちには思われてしまっています。加えてIoTの世界になってくればこういった乱暴な企業たちがすごいスピードでかき回してくるに違いありません。
そういった意味ではフラナリー氏は今までのGEの延長線上の人物であり、短期的にはともかく中長期的にGEの大きな成長に貢献するのは苦戦するのではないかと思われます。ただ、GEにいきなり西海岸的企業の物事の進め方をすればいいのかと聞かれても私も回答ができません。しかし、全体ではともかくどこかのビジネスユニットでは実験する価値はあるとは思われます。