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国際会計基準はM&Aに有利か?

2018.07.16 カテゴリ: 会計・税務

1.国際会計基準(IFRS)導入200社超える

 本日の日本経済新聞に国際会計基準導入企業が200社を超えたという記事が載っていました。記事によると大企業の導入が多く東証の時価総額ベースで3分の1を占めているそうです。特に私個人として国際会計基準導入にネガティブな見解を持つものではありません。外国人投資家を増やしたい、資金調達海外で行いたいなどあればこれは明確に必要だと思います。ただし、日本経済新聞ではM&A後の会計処理で国際会計基準の方が有利だからという理由が多いと述べています。どこが有利なのでしょうか?

2.M&A後の会計処理

 日本基準だと20年以内の一定期間でのれんを均等償却しなければならないが、国際会計基準はのれんを均等償却する必要はないので会計上の利益が減りにくいということを日本経済新聞では理由としてあげています。これ自体誤りはないのですがうのみにしてはなりません。別に会計基準から見て日本基準ののれんと国際会計基準ののれんに明確な差はないのですが実務上は違います。そもそものれんはざっくりいうと、買収してきた会社の購入価額で純資産価値を(資産から負債を差し引いたもの)を上まわる部分です。そして、PPA(取得原価の配分)という手続きがM&A上あり、この純資産価額部分を厳密に測定するとともに、のれん部分も無形資産部分(顧客リスト、ブランド、ノウハウ等)とのれん部分に分けていきます。いわゆる広義ののれんと狭義ののれんに分けていくとでもいえるかと思います。

3.日本基準と国際会計基準(IFRS)のPPAの違い

 あくまで私見ですのでご注意いただきたいのですが、実務上日本基準のPPAはわりとざっくり行います。償却していくという意味ではのれんと無形固定資産にあまり会計処理の差異がないからです。一方国際会計基準の場合、のれんは償却しないですが無形固定資産は耐用年数が確定できるもの(将来のキャッシュフローを生み出す期間がわかるもの)は償却しますのでかなり厳密にPPAは行います。

 要するに日本基準と国際会計基準ののれんは実務上範囲が異なり、日本基準ののれんのうち国際会計基準だとPPAで無形固定資産にいれられて償却処理を求めらることがあるということです。

4.大企業以外は国際会計基準をどう考えるか?

 グローバルに世界を相手に拡大していこうという企業が国際会計基準を導入することには全く異論がありません。一方国内主体にやっていこうという企業、ただしM&Aなどは積極的にやっていこうという企業はどうでしょうか?確かにのれんの償却という意味で会計処理上有利です。しかし、一方国際会計基準導入にあたってはふつう専門家の関与も必要ですし、前に述べたPPAも国際会計基準だと専門家も厳密に適用するということでかなり高い報酬が必要になります。

 最近はわかりませんが某大手監査法人は国際会計基準の導入で必要以上とも思える監査手続きや、やたらと細かい質問を繰り出す一方、系列のコンサル会社を紹介するなどマッチポンプ的なあまり好ましくない例も以前は散見されました。

 安易に横並びに国際会計基準を導入することはお勧めしておりません。国際会計基準導入はいずれ遠くない将来義務化されるように思われますので導入自体は反対しませんが、時期や専門家との交渉を慎重になさった上、されるのが良いのではないかと思います。

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