仕事への熱意のない日本人
2018.01.22 カテゴリ: 働き方・仕事術、勉強術・仕事術・心がけ。
日本経済新聞の電子版(昨日の本紙日曜版にも載っています)に興味深い記事が載っていたので紹介します。骨子は世界の企業の調査で仕事へのエンゲージメント(仕事への熱意)を調査したところインドが77%と首位、米国は59%、ヨーロッパは40%台、韓国も40%でしたが、日本は31%と先進国で最下位で、だいたい似たような調査で常に日本は低いと伝えています。日本人は真面目、勤勉と言われますが言われたことをしっかり指示通りにこなすという真面目さは高いが、積極的に仕事にかかわりあうエンゲージメント(熱意)は低いと論じています。論者は労働の流動性が増して、働く人の選択肢を増やすことと、職場で年功序列でなく若いやる気のある人々の発意やアイディアを生かすべきだと論じています。
上記のようなホワイトカラーではないですが、アメリカなどで身近に感じたことがあります。出張などで行った際、一人でファーストフードなどに行くと日本とは段違いなことに驚きます。動きは緩慢ですし、かなりの確率で注文も間違えます。ヒスパニック系が多く、英語も私と下手同士であまり通じず私のような外国人は特に面倒くさそうに扱います。食事をしても心が荒むことがあります。それに比べると日本のファーストフードは作り笑顔とはいえにこやかにてきぱきとして気持ちがいいです。こういったファーストフードのようなマニュアル系は本当に日本は素晴らしいです。
一方で中級以上のレストランなどでアメリカでは根強い人気を持っている店などは逆です。私が今回ファンになって何回か通ったホワイトプレインズのイタリア料理レストランはとにかく給仕の人が楽しかったです。本日のおすすめなども前菜だけでも5種類くらいあるのですが、よどみなくそれぞれ個性のある調子で説明してくれて心からお勧めだよと言っているのが良くわかります。「XXであがった新鮮なSword Fish(メカジキ)をオリーブオイルとバターでソテーしてとマッシュルームとXXのソースを添えて召し上がります・・・(忘れたので多少中身は適当ですが)」といった感じです。別に日本の給仕の方でも同じようなことは言っているのですが大抵淡々と説明されて「一生懸命覚えました」感が出てしまいます。「”Sword fish”ってどんな魚」とか「ソースよくわからなかったんだけどどうしておいしいの」なんて質問も全く嫌な顔せずに楽しそうに答えてくれるのでこっちもメニュ―選びから会話が楽しめわくわくます。アメリカでご飯食べるのは英語力のヒアリングの問題もあり、疲れる部分もあるのですが、給仕の人に仕事に熱意と誇りをもってやっている人が一定以上のランクの店では多いので楽しめます。逆に日本は疲れないのですが、なんか淡々としていてメニュー選びで楽しい店というのは多くはない気がします。確かに日本は決められたことをきっちりやるのは得意ですが積極的に何かやるという部分はこんな点でも弱い気がします。
さて本論に戻りますが、私は全然この日経の論者の考え方には反対ではないですが少し違った見方をしています。そもそも日本人はアピール下手で仕事に熱意をもって働いています的なアピールはしないし苦手です。そういった意味では多少低めには出ると思います。加えてここには残酷な現実があると思います。おそらく調査は世界の一流企業だと思いますが、そもそも「積極的に仕事にかかわりあう熱意のない人間」は会社に残れずクビになる確率は欧米では非常に高いです。残念ながら日本企業だとまだ年功序列でほぼ上司の言ったことをその通りやっているだけ、または部下の尻を叩いてやらせるだけの管理職などでも少なからず存在しています。こういった人間は2000年前後のリストラクチャリング&フラットな組織ブームの中でほぼ欧米企業からは姿を消し、また韓国のSamsungなどのモーレツ企業では秒殺でしょう。要するに「積極的に仕事にかかわりあう熱意のない人間」自体が少ないのではなくほぼ淘汰されて一流企業からは姿を消しているある意味厳しい企業社会だといえるのではないでしょうか。
今までの日本の教育、企業の在り方はとにかく言われたことをきっちりやることが重視されていました。大学の試験や資格試験などでも試験委員と異なる見解を書くとまず合格できません。一流企業はこういった「忖度」をして自分の意見を押し殺す人材を日本の一流大学から採用しているわけですからそもそも「積極的に仕事にかかわりあう熱意のある人間」を育てるのは難しいかもしれません。私はこれは結構根の深い問題だと思っているわけです。
日経電子版を購読している方は以下参照
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25509470Q8A110C1X12000/