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RIZAPの株主総会が荒れなかった理由

2019.06.24 カテゴリ: M&A企業の業績分析企業経営での留意点

1.RIZAPの株主総会

 6月22日RIZAPグループの株主総会が開かれました。個人的には今までの経緯的に大荒れを予想していましたが、「経営陣への厳しい質問はほとんどなし、瀬戸社長への励ましの声や、応援する声が大半だった。」(朝日新聞記事より引用)だったようです。もともと昨年度の決算の際の当期利益は170億の黒字予測に対し、実際の決算は217億の赤字ですから普通は大荒れでもおかしくありません。なぜだったのでしょうか?

 決算発表資料などを見ると、経営成績の不調は強引なM&Aによる拡大戦略の誤りでありそれは修正されていること、かなり構造改革も進み一服状態であること、本業は順調であること、財務体制は比較的安定的このあたりを強調しているように見えます。そして、新年度からは、また健全な拡大基調に戻るといったストーリーに個人株主も納得したというところでしょうか。なかなか決算資料の説明も非継続事業損益(翌年度連結から外れる事業の損益)76億が入らない営業損益で説明するなど数字の使い方も巧みで、構造改革および復活へのストーリー展開も上手でなかなかうまく乗り切ったと思われます。

 また役員メンバーを大幅に入れ替え、社外取締役を大幅に入れたあたりのガバナンス改革も好感されたのだと思われます。

2.RIZAPの構造改革

 主たる構造改革の部分を見ると以下の3つになるように思われます。1つ目は-RIZAPインベストメントの設立です。この中の事業を見ると本業のライフスタイルとは関連性の薄そうなサンケイリビングやパド(メディア)、五輪パッキング(精密機器製造)などが入っています。目的として新事業領域と定義して、収益拡大、シナジーの見定め、拡大・縮小・撤退を見定めるとしています。個人的には一般的に企業の戦略としてこういった「ごった煮」のビジネスに力を入れることはふつうないので、主として縮小・撤退だとは思っています。

 もう一つはグループ内の購買・物流を一本化するRIZAP トレーディングの設立です。上記とは逆に本業とシナジ―がある事業については効率化してより一層利益をたかめていく方向になるのでしょう。

 最後ですがグループKPIの導入です。主として財務指標の目標値を定めるようですが、どちらかというと今までなかったのかというのが実感ですが、少し野放図な拡大はしないという宣言のように感じました。

 今までの拡大に関しては私は批判的ですが、B2Cの小売業などの再生はなかなか巧みに思えます。店舗で不採算と採算の取れる分野をきちんと分け、不採算な部分からは撤退する一方採算の取れる部分にはしっかり投資していくような目利き力はあった気がします。小売業の衰退のパターンとしては赤字→店舗投資の縮小→店舗の荒廃→赤字の一層の拡大という赤字スパイラルがありがちですが、その部分はしっかり断ち切っているかと思われます。

3.RIZAPが渡った危ない橋

 あくまでも想像ですが、2018年度はRIZAPはかなり危ない橋を渡ったといえます。推移をみると2018年5月、黒字決算、そして170億の翌期黒字予想、そして15周年記念配当、プロ経営者元カルビーCEO松本氏のCOOとしての招聘と次々手を打ってきます。そして7月に45億の第三者割当てによる資金調達を行いました。ところがその一方で同時期に監査法人が東邦監査法人から太陽監査法人に交代というやや気になる動きがありました。そして11月に業績を大幅に修正し赤字転落を発表、松本氏もCOOを外れ構造改革担当、そして今回の株主総会で取締役も退任しました。

 この2018年の動きを単純にみるとひたすら前半に前向きなニュースを流し資金調達を行い、少しほとぼりが冷めたところで決算の下方修正という一連のストーリーのように見えます。申し訳ないですがプロ経営者松本氏は一連のシナリオの「だし」に使われた感は強く、本当ならばすぐにでも辞表をたたきつけたいところではなかったかと想像されます。そこのところを瀬戸社長が何とかなだめて今回の株主総会までは何とか残ってもらったというところではないでしょうか。 

 この一連の行為は明らかに違法とは言えませんがかなりグレーな行為です。いろいろな買収した企業の減損処理にしてもなぜ2018年3月期では行わなかったかという疑問は残り、そのあたりが監査法人の交代ではないかと疑ってしまいます。

 ただし、この11月の資金調達のおかげでRIZAPは一定の財務安定性を手に入れて生き残れたわけで、そうでなければかなり存続は危なかったでしょう。このような状況で自分がCFOだったら絶対同じような行為をしなかったかと聞かれると万全の自信はないというのが実感です。

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