ブログ

HOME > ブログ > 企業経営での留意点 > 経営戦略 > 令和元年終わりの株式時価総額を見て感じたこと

令和元年終わりの株式時価総額を見て感じたこと

2020.01.07 カテゴリ: 企業経営での留意点経営戦略

1.令和元年の終わりに感じたこと

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さて、昨年の終わりに再確認したことはやはり日本企業の落日でしょう。特に平成は株価時価総額という観点から見ると凋落一方でした。

 以下が平成元年終わりの世界の株価時価総額のトップテンです

NTT
日本興業銀行
住友銀行
富士銀行
第一勧業銀行
IBM
三菱銀行
エクソン
東京電力
ロイヤルダッチシェル

なんと日本企業がトップテンのうち7社をしめています。では、昨年の終わりはどうだったでしょうか?

サウジアラムコ
アップル
マイクロソフト
アルファベット
アマゾン
フェイスブック
バークシャーハザウェイ
アリババ
テンセント
JPモルガンチェース

 トップテンに日本企業はゼロ、50位までで入っているのは唯一40位のトヨタだけでした。確かに平成元年終わりといえばバブルほぼ絶頂期でしたから、ある程度仕方がない面もありますが、もう少し詳しく見てみましょう

2.ランキングの中身

 実は平成元年のリスト上位は日本は金融・電力・通信などの規制産業ばかりではありますが、新日鉄などの重厚長大、パナソニック、日立、東芝などのエレクトロクス勢も50位以内にランキングされていました。

 金融などはバブルで異常に高評価されていた面はあると思いますが、合併で当時より規模が大きくなっていますし、令和のリストでも10位のJPモルガンチェースの他にもVISAやバンクオブアメリカなどもリーマンショックから立ち直って50位以内に入っています。

 そのほか気づくことはGAFA(アルファベット、アップル、アマゾン、フェイスブック)勢などIT企業の台頭とアリババ・テンセントの中国勢の台頭でしょう。中国勢については基本は国内市場の巨大さに依存しているので、中国の成長の鈍化とともにある程度は淘汰される企業は出てくるとは思われます。

 一方地味ながら旧来型の食品・生活用品・製薬などの製造業やエネルギ―通信といった分野も健在で50位以内に以下の企業がランキング入りしています。
 J&J、WM、ネスレ、P&G、ロシュ、エクソン・モービル、AT&T、コカ・コーラ、ペプシなどです

 やはり米系企業に比べ日本企業は元気がないなというのが実感です

3.元気がない日本企業の要因

 一つはよく言われていることなのであまり述べませんがGAFAのようなIT業界のプラットフォームを作れるような巨大企業が生まれなかったということが言えるでしょう。アメリカと比べると新しい産業・企業の台頭があまりないということです。これはなぜか、どうしたらよいかは自分の将来のテーマとしても考えていきたいことです

 一方、割とモノづくりということで日本は強いと思われていますが、ここでも株価時価総額として気を吐いているのはトヨタのみです。まずエレクトロニクスから見ていきます。

 日本のエレクトロニクス企業は元気がないです。しかし、サムソン(14位)とインテル(27位)は生き残る事が出来ています。この業種、大胆な集中投資が勝負を分けている気がします。インテルノメモリーを捨ててマイクロプロセッサーへの集中投資やサムソンの液晶、有機EL、DRAMへの投資を見ていると日本のサラリーマン社長ではきっちりリスクをとった判断が出来ず太刀打ちできなかった言えるでしょう。

 ただ、サムソンはイ・ゴンス会長のカリスマ性の下、軍隊的な統率で大きくなった会社なのでこのカリスマ亡き後はだんだんと普通の会社になっていくような気はします。

 もう一つは、自動車やエレクトロニクスと比べ特に生活産業は海外進出が遅れているという点もあるでしょう。ウォールマートやP&Gなど米国市場は十分巨大であるのにも関わらず海外進出は日本企業に比べるとずっと先を行っています。
以下のように海外比率は随分低いです。

イオン 海外売上9.1%(2019年第二四半期)
WM   海外売上 23.4%(2018年末)

花王 海外売上 33.0%
P&G 56%

 このようなマクロ的な要因についてはかなり強いリーダーシップを持ったトップが必要で、毀誉褒貶はありますが、孫正義さんや柳井正さんのような存在が求められるのでしょう。

一方、平成の間に日本企業で失われてしまったと思うようなことはあります。

4.失われた昭和の良さ

 平成をすごくざっくり見ると、企業で一番使われた言葉は「リストラクチャリング」ではなかったでしょうか。そしてどちらかというと大きく事業の構造を変化させるというよりも「ダウンサイジング」で人員削減や無駄をそぎ落とすといった側面が強調されていた気がします。

 ただ、その中で日本企業で無駄だと思われていたもので、実は大切なものもなくしてしまった気はします。昭和的なものにノスタルジーを感じているだけかもしれませんが。

 中高年のおじさん、そのうち部内にやたらと顔は広い、会社の生き字引みたいで誰が何を知っているか良く知っていて、いつも社内をぶらぶらしている方はほぼ整理されてしまいました。たいてい部下無しの課長級(参事とか調査役とかいった役職)だった気がします。

 私も若いころは正直言って高い給料をもらって何やっているかわからないおじさんと思っていました。しかし、困ったとき、意外な知恵を出してくれたり、他の部署の上長と渡りをつけてくれたりとお世話になり見直しました。当然中高年のおじさんの中には本当にさぼっていたやる気のない方もいましたが、こういったおじさんは今から考えると組織横断的なプロジェクトの重要なサポーターだった気がします

 少し経営学的に言うと組織の中には暗黙知(マニュアルなど文書にはなっていない知恵・知識)があり、組織が大きくなると、えてして部門やセクションの中で埋もれているのですが、そういったおじさんはうまくそれを掘り出して全社的に使えるようにコーディネートしていたわけです。

 こういったおじさんは「タバコ部屋」で語らったり、他の部署のおじさんたちと飲みに行ったりして、日ごろのぶらぶら活動の他にも情報を仕入れていたようです

 当然、こういったおじさんやタバコ部屋などををそのまま復活させるのはできないとは思います。私の想像ですが稲盛さんの「コンパ」(単なる親睦のための飲み会ではなく、経営陣から新入社員まで胸襟を開いて本音で語り合い、みんなで目指すベクトルを合わせていく場)などはこういった暗黙知をうまく出していく手法の一つではないかと思われます。

 新年、失われてしまった日本企業の良い部分見直してみたらと思った次第です。

 

お問い合わせはこちらまで

TOP