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コカ・コーラボトラ―ズの連続赤字から読み取れる冷酷な資本の論理とは

2021.08.18 カテゴリ: グローバルビジネスダイバーシティ経営企業の業績分析企業経営での留意点

目次

1.コカ・コーラの不調とサントリーの好調な決算

 数日前6月13日の日本経済新聞の記事で、2社の2021年上半期決算の対照的な内容が出ていたので興味を持ち取り上げてみました。これは、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(CCBJH)とサントリー食品インターナショナル(SBF)の決算で両社とも主としては清涼飲料水のメーカーだといえます。CCBJHは売上3683億、事業損益が147億円の赤字でと昨年上半期の73億の赤字から赤字大幅拡大でした(非継続事業の影響を除いた純損失は128億で76億の純損失より赤字幅拡大)。 一方SBFは営業利益が604億、純利益が前年同期比54%像の322億円とコロナ禍においても大幅増益でした。ほぼ同業ですが、なぜこんなに業績に差があるのでしょうか?

 日本経済新聞ではCCBJHは「販売数量は増加したものの飲食店をのぞいた販路で納入単価が減少」「すべてのカテゴリーの商品をそろえるCCVJHは競合他社と価格競争に幅広く対応」と
要するにマージンの減少を原因としています。

 一方SBFについては「自販機・コンビニ市場減少によるチャネルミックス悪化」による同じくマージンの悪化はあるものの、ただし、「伊右衛門」「クラフトボス」リニューアルや利益率の高い小容量商品の販売が増えて補ったとしています。また、アジアや欧州で好調だったとしています

少しこのあたり掘り下げていきます

2.2社の業績の差の理由

 CCBJHはテリトリ―が日本国内にきめられてます。一方SBFは海外販売もしており市場が広いため有利といえます。日本以外に欧州・アジア・オセアニア・米州での販売がありほぼ海外売上げは半分、セグメント利益については日本以外の方が実は多いです。SBFの日本の売上は2020年決算で2980億(全世界の49%)でセグメント利益が176億(全世界の29%)と海外で稼いでいる構図ではありますが日本でもきちんと利益をたたきだきだしています。

 CCBJHの場合、以前はブランド力等で他社に比べ価格競争に強かったといえます。価格プレミアムとして業界平均よりPET1本あたり小型PETで5.4円、大型PETで21円高く他社より取引されていると決算資料で開示していますが昨年より小型PETで2.1円大型PETで8.1円優位が減少し、どんどんマージンは縮小しています。CCBJH確かに売上原価率は当四半期で54.7%でサントリーの58.0%より低いです。それでもCCBJHよりSBFの方が消費者のニーズに迅速に応えタイムリーに新製品や新容器に対応している点が差になって出てきていると新聞記事や決算発表からは推測されます。

 実はCCBJHはコカ・コーラウェストとコカ・コーライーストが統合してできました。統合前の2016年12月期の決算はウェストが売上約4600億経常利益206億、イーストが約5700億経常利益179億の優良企業でした。ウェストは現場たたき上げの経営陣が多く、イーストは割と米国本社の支配下にある構造でしたがウェストの方が業績が良く、どちらが主導権を持つのかが注目を集めていました。

 この辺りが私はCCBJHの低迷の構造的な問題があると思っています

3.CCBJHの低迷の根本的原因

 これにはボトラーシステムについてお話しする必要があります。

 コカ・コーラの原液は日本コカ・コーラ(米コカ・コーラの100%子会社)が供給 日本コカ・コーラは原液供給とマーケティングを担当、コーヒー豆やお茶などの原材料は供給、CCBJHといったボトラーは製造・販売を担当する仕組みで。す

 CCBJHには米コカ・コーラが18.88%(うち日本コカ・コーラが15.59%)保有しています。そして、代表取締役社長CEOと代表取締役CFOはともに米コカ・コーラから送り込まれており
その他の主要なポジションも米コカ・コーラから送り込まれたメンバ―が多く、実質支配下にあるといえます。実際の事業会社であるコカ・コーラボトラーズジャパンもHPを見るとほぼ経営陣の半分は米国本社から送り込まれた人間でした。結局主導権は現場たたき上げではなく米国本社が握ることとなりました

 確かに、グローバルビジネスであればこのような日本人以外で固めた経営陣の布陣はよくわかりますが、極めてローカルなビジネスで日本のマーケットをほとんど知らない人間が半数を占める布陣というのはどうなんでしょうか?

 そういえば、以前今は缶コーヒーのヒット商品であるジョージアシリーズも日本で導入する際は米国本社が売れるはずがないとなかなか首を縦に振らず苦労したという話を聞きました。米国本社の力が元々強いうえ、当然日本のマーケット本質的には理解していない方が多いです。そのうえ、日本国内のビジネスにまで顧客ではなく米国本社の方を見てビジネスをしている人が経営陣だとすれば、サントリーなどに比べ打つ手が遅れるのも仕方がないでしょう。

 そして連続赤字なのに外国人社長は358百万の報酬、No2の外国人CFOの報酬も1億を超えています。彼らは駐在員ですから住居や家族の費用まで全部持ちですからそれも加えれば相当な人件費です。なぜこんな状況で大丈夫なのでしょうか?

 ここからはあくまでも推測ですが、100%子会社でないので認識する損益は持分の約19%だけです。コカ・コーラがCCBJHから配当をもらう一方、原液の販売で利益を吸い上げ100%子会社である日本コカ・コーラや米国本社に利益がたまればいいわけです。高い外国人駐在員の人件費もすべてCCBJHの負担でかつグローバルスタッフのローテーションとして米コカ・コーラの人材育成にもつながっています。

 以前ある関係者が言っていましたが以上より「ボトラーは生かさず殺さず」で構わないわけです。ある意味冷酷な資本の論理が出ていて、短期的には非常に合理的な判断なのです。ただ、消費者の方向を見ていないビジネスが最終的に成功するかは疑問ではあります。

 

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