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東証の再編とプライム狂騒曲

2021.09.15 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

1.東京証券市場の再編とは

 今週の週刊ダイヤモンドは東証再編特集でした。どのように再編されるのでしょうか?現在東京証券取引所は大きく分けると東証1部上場、2部上場、ジャスダック、マザーズの4つです。2021年9月2日現在で1部が2187、2部が471、マザーズ 384、ジャスダック 694,、東京プロマーケット49です。

 全上場会社3787のうち約60%が一部上場といういびつな構造です。そのため、例えば東証の株価指数であるTOPIXは東証一部上場を対象とした株価指数で、本来はアメリカのダウ平均やS&P500のような代表的な優良企業の指数であるはずですが基準が緩いため適さない銘柄が少なからず含まれています。

 加えて2部、マザーズ、ジャスダックの区分や役割があいまいで似たような企業が別の市場にいます。そのため、すべてを整理してプライム、スタンダード、グロースの3つに分けようというのがその骨子です。

ざっくばらんにいうと
・プライム 優良上場企業

・スタンダード 普通の上場企業

・グロース ベンチャー企業 高い成長の可能性はあるが企業基盤はまだ弱い

といった区分でしょうか?

2.プライム市場に残りたい企業

 現在東証一部上場にいる会社はできればプライムに残りたいと考える企業はかなり多いです。プライム落ちすると機関投資家の投資対象から外れるなど株価下落要因となるわけです。東証から一部上場企業のうちの約3分の1の664社が東証から基準を見たいしていないと通告を受けました。

 クリアするのに厳しい条件が以下の数値要件です
株式数800人以上、流通株式2万単位以上、流通株式時価総額100億以上、売買高一日平均2000万以上、流通株式比率35%以上といった条件が求められます

 しかし、この条件新規上場(スタンダードやグロースから移行する場合も含む)条件に比べ1部からプライムへの横滑り条件はまだまだ緩いです。例えば新規上場の収益基盤として直近2年間の利益合計が25億以上か時価総額1000億かつ売上100億以上というハードルがありますが横滑りの場合はありません。 したがって、この機会を逃すとここ数年は絶対プライムには行けないという企業も少なからず存在するわけです。

 多分、一番ハードルが高いと思われるのが流通株式時価総額100億以上と流通株式比率35%以上でしょう。ところで流通株式とは何でしょうか?簡単に言うと発行済株式から固定的、つまりあまり市場に流通しないだろうと思われる株式を差し引いた数をです。固定的な株式とは主要株主(10%以上所有)、役員等保有株式、自己株式、政策投資株(いあゆる持ち合い株式)などが当たります。ただし、「固定的」なので10%以上でも投資信託などに組み入れられている場合はのぞきます

 割と名前が通った大企業でもひっかかっていて、親会社などが大多数の株式を持っていると流通株式比率35%以上を満たしません。典型的なのがわずか流通株式比率が9.13%のゆうちょ銀行、日本郵政が88.99%を保有しているからです。親子上場が見直されるだろうといわれているゆえんがここにあります

 一方流通株式時価総額ですが、そもそも流通ではなく発行株式全体の時価総額が100億を割っている会社が200超あります。このあたりの企業は大変だと思われます

3.プライム横滑りのために

 プライム市場にいっても、開示やガバナンスが大変です。数値基準のほかに

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)等に基づく開示
・英語での開示
・独立社外取締役が3分の1以上
・議決権電子行使プラットフォームの利用

などが求められるようです。中にはこれを嫌ってあえてスタンダードに残りたい企業もあるようです

 来年4月から新市場に変わりますが、基準に達しない企業12月までに計画書を提出、経過措置として希望市場にとどまることができます。そういった企業から8月後半プライム市場上場維持基準の適合に向けた意思表明の開示がでました。内容はほぼ横並びで「積極的な IR 活動、コーポレートガバナンスの一層の充実を図る」といった内容です。

 具体的に何をするかというと、一つは時価総額をあげることでしょう
株主還元強化やM&A、事業の再編などで時価総額を高めます。要するに配当を増やすということでキャッシュが潤沢な企業などはやりやすいと思われます

 もう一つは流通株式数を増やすことです。 大株主に株を放出、政策保有株を減らす、新株を発行、持っている自己株式は消却などが考えられるでしょう。

 少し具体的な例を見てみましょう。アウトドアショップヒマラヤの例です

 大株主の状況をみると約54%は固定的な株式に見えます(大株主や役員等の株式+政策投資株)そして9月13日の時価総額168億でした。流通株式時価総額概算168x(100-54%)=77億です。ただ、あと14~15%大株主(小森ホールディングス)や政策投資株の株主(三菱商事や地元岐阜の地銀)などに
売却してもらえば流通株式時価総額は達成できる確率が高いです。

こういったことでプライム横滑り境界線の企業はいろいろな施策練っていくことになるでしょう。

 

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