レッドオーシャンでも高収益な地味な企業の秘密
2022.08.02 カテゴリ: 企業の業績分析、企業経営での留意点、経営戦略。
目次
1.地味な高収益企業
先日の日経トップリーダーで、千葉市の建設機械レンタルの新光重機という会社が取り上げられていました。一見すると建設機械レンタルなどという聞くからにレッドオーシャン(競争が厳しく低収益)な分野です。
ところが2022年5月の決算でも売上高約52億経常利益約8億で売上高経常利益率16.3%という高収益、しかも2011年から売上は約2倍と高い成長率です
この記事の表題も「当たり前の経営」と書いてあり、中身をみてもだれも思いつかないような驚くようなことはやっていません。しかし、凡事徹底というかやるべきことを一つ一つしっかりやりきっているのが秘訣といえるでしょう.
上場企業でない中堅企業、えてして胡坐をかいて社長は高額報酬と節税に力を注ぐといったような悪い例もありますが、この会社はまじめにきちんとした経営を行うことの大切さをあらためて教えてくれるといえます。
その前に少しレンタルビジネスというものをリース業との比較で考えてみます
2.レンタルとリース
これは、会計上の話ではなくビジネスとしての違いの話です。レンタルはオペレーティングリースとも呼ばれているので似たようなビジネスと思っている方もいるかもしれませんが、実はビジネスの性質が全く違うといえるでしょう。(注;レバレッジドリースのような特殊なものは除く)
リースは一般的には金融業ですが、レンタルは商社+メンテナンス業の面が強いです。リース、経済実態的にはほぼ割賦販売でその機械・機器などのモノを販売したのと一緒です。借主はほモノ使い尽くすし、貸主は販売代金+金利手数料を回収するようなモデルです。だからリース業にとって一番怖いのはリース料を払われないこと、つまり与信管理でありほぼ金融業と言ってよいと思います。
レンタル業の場合は、一定期間だけ使うので必ず次の使用主がいます。経済実態的にも貸主のものなのできちんと丁寧に使ってもらい、次の借主や買い手に良い値段でレンタルまたは購入してもらわないといけません。
レンタル価格の価格競争が厳しいうえ、下取り価格の想定など値付けの難易度が高いです。したがって一般的業者は価格競争に巻き込まれ十分な値ざやが取れていないというケース結構多いです。それなのにどうしてこんなに高収益なのでしょうか?
3.高収益の秘密
日経トップリーダーでは3つ要因を挙げています。MEFシステム、品ぞろえ、財務体質です。
MEFシステムとはお客様にきちんとした使い方を学んでもらい建設機械を常に良好な状態に保つことです。やっていることは単純で注意すべき使い方、たとえば「作業油は稼働3000時間で交換」などとシールが貼ってあります。ただ、このシールが一つ一つ丁寧に機器にたくさんはってあります。これによってお客様は正しい使い方をするので機械は良い状態を保つことができます。したがって、機械も長持ちするし、良い値段で売却でき、お客様も故障なく使えるのです。
そして決して大資本ではないのに品ぞろえが多く、特殊機械などもレンタルしてくれます。一見回転率の悪そうな特殊機械ですが営業がきっちりベネフィットを伝えられればある程度の使用は確保できますし、一緒に一般機械のレンタルもセットでやると十分利ザヤは確保できます。
ここで言えること、この会社の発想はお客様に機械をレンタルするということではないのです。お客様に良い仕事ができる機会を提供するという発想、お客様が本当に欲しいのは機械ではなく機械が提供する業務処理ということを理解しています。本当に欲しいものを提供しているから利ザヤが取れるといえるわけです
ところが一般的には財務体質としては高額な機械を購入してそれレンタルするので、必然的に固定資産が多くなりそのための借入金も必要でいわゆる重い貸借対照表になりがちです。しかし、この会社は比較的軽くクリーンな貸借対照表を目指しています。上場企業でないと不良債権なども会計上の処理がされずそのまま残っていたりするのですが、きちんと会計処理をしてクリーンな貸借対照表を保っています。
そして負債部分は長期に資産部分は短期にということを考え貸借対照表のバランスを安定的に運用しているのです。これが金融機関の信用を高め、十分だが堅実な投資ができ高収益となって財務体質を一層強化するという好循環につながっているのです。
以上みてきたように特に目新しく驚くような施策全然はないです。しかし、徹底してすべてを行う凡事徹底の大切さを教えてくれるといってよいでしょう