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新リース会計基準とそれが全日空やファーストリテイリングなどに与える影響とは

2023.01.08 カテゴリ: IFRS会計・税務

1.新リース会計の導入

 昨年の3月決算から新収益会計基準が導入され、会計業界では少し話題になりました。これはIFRS(国際会計基準)15と平仄を合わせたものといえ、業種・業態によってその作業は異なりますが様々な取引の検証などやたらと検証作業は大変だったという印象があります。ただし、実際の財務報告の数値の影響は気にするのは監査法人だけといったレベルの会社がほとんどではなかったでしょうか。消化仕入が相殺消去される百貨店や卸売業など代理店取引的な商慣習あったっところは別ですが。

 自分も実際にお客様の支援で監査法人から求められる山のような検証作業を会社の方とやったものの影響は売上の1パーセント未満というところ、1年間のその影響額よりも、かかった人件費の方が多かった感は強いです

 一方で早ければ2025年3月には導入される、逆に言えば3月決算の会社であれば来年4月くらいから準備は開始しないと大きな影響が多方面に及びそうなのがリース会計基準でしょう。 ちなみに新しいリースの国際会計基準であるIFRS16は2019年開始事業年度から適用されていて、内容的にはほぼそれと平仄を合わせた感じになるでしょう。ということでIFRS16をざっくりとみていきます。

2.IFRS16とは

 今までのリース会計、ファイナンスリースとオペレーティングリースと分かれており、前者のみリース会計の適用となっており、リース物件も借り手の資産に計上、そして支払リース料総額も元本相当金額を債務として計上されていました。ようするに固定資産を借入金で購入したのと同様の会計処理となるわけです。一方オペレーティングリースは賃貸借処理、要するにリース料を費用として計上するという会計処理でした。これが、IFRS16では固定資産(使用権資産)として計上して、リース債務と両建てほぼ現在のファイナンスリースと同じ会計処理となります。

 以前リース会計が導入された際も、オペレーティングリースについてもその間借り手は独占的にその資産を利用できる使用権を持っているわけだからこれを資産として計上し、対応する債務も計上すべきという話はありました。ただし、様々な業界やリース会社からの異論もありその際は見送られた経緯があります。

 しかし、投資家サイドから企業の分析で結局オペレーティングリース部分を注記等で調べたうえ勘案して様々な財務指標を求めていることもあり、オペレーティングリースも使用権資産として計上すべきという意見が多く上がっていたらしいです。

 一般的な企業でオペレーティングリースといった場合、事務所・店舗などの家賃や航空機リースなどが当たるでしょう。ではそれがどのような影響をもたらすのでしょうか?

 

3.導入会社における影響

 とりあえず金額が大きいのは金額の大きな不動産の賃貸借関係、とりあえずIFRS導入企業で思い当たる企業として店舗賃貸が多いファーストリテイリングの財務数値(2020年8月期)を見てみましょう

 店舗を多く借りているのでその賃貸借部分が資産化されました。その結果、使用権資産、リース負債として約3370億、前年より新たに増加、前年比総資産約2.0兆円から2.4兆円と2割程度増加のほとんどがこのリース基準の変更に伴うものといえます。

 そして、リース料として計上されていたものが減価償却費と金利部分に分かれて計上されることとなります。その結果、家賃が約1400億減少、約1300億が減価償却費、約100億が金利となります。

 経営指標としてはEBITDA(税金・金利・償却費控除前利益)が約1400億高くなり、ROA(当期利益÷総資産)やROIC(税引き後営業利益÷(純資産+有利子負債)は分母が約3370億円増えるので数値は低下します

今後において大きな影響を受ける先としては小売業界のほかは航空業界でしょう。それでは全日空はどうなるでしょうか

 解約不能のオペレーティングリース、おそらく大部分は航空機と思われますが2022年3月現在3433億ほど残高があります
資産資産・負債に計上される金額は現在価値に引き直されるので少し小さくなるとは思われますが3000億近く固定資産、固定負債が両建てで増えると思われます。

 現在総資産は3.3兆くらいですから約1割程度総資産が増えると思われます。このように結構この新リース会計の影響は業界によっては大きいのではと思われます。企業側としては数字を積み上げるのも大変なのですが、それが正確であるという監査法人向けの検証がそれに拍車をかけるので自分は検証側の立場に近い存在ですが、少し気の毒な気はするのです。

 

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