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ファーストリテイリング昇給40%の衝撃

2023.01.26 カテゴリ: グローバルビジネスダイバーシティ経営人の育て方企業経営での留意点

1.国内社員40%昇給?

 少し前の日本経済新聞でユニクロなどを経営するファーストリテイリングが3月から国内従業員の給与を最大40%あげるとの記事が載り話題になりました。現在海外従業員の方が年収が高い状況になっており、国内従業員もこの動向に合わせ
グローバルな人材獲得競争に負けないようにするようです。

 例えば「新入社員の初任給は月25万5千円から30万円に、入社1~2年目で就任することが多い新人店長は29万円から39万円になる」と報じています

 一方で給与体系として約20段階のグレードの基本級と役職・地域などによる手当を支給していましたが、グレードに一本化します。ちなみに1月11日の新聞記事でファーストリテイリングの平均給与が959万円と小売業としては高額とのっていましたがこれは本社分門(ファーストリテイリング単体)の平均給与なので他社と比べてもあまり意味のある数字ではないですが・・。

 さて、このような大幅な賃上げをしてファーストリテイリングは大丈夫なのでしょうか?

2.財務上のインパクト

 直近の有価証券報告書を見ると、国内従業員ユニクロ12698人 ジーユー5060人 ファーストリテイリング本社1698人
合計約2万人が国内従業員です。乱暴な計算ですが一人平均100万円増えたとしても200億円です。2022年8月期の税引前利益約4000億の約5%にすぎません。

 ざっくり粗利が50%で売上2兆円の会社ですから400億円、売上が0.5%改善すれば元を取ってしまうわけですから、これで生産性が高くなれば財務上全く問題のないレベルでしょう。

 一方、Inditex(ZARAの運営会社)の年次報告を見ると管理職クラス(店長以上)の平均で約750万円程度、スーパーバイザークラスで約500万円弱、一般社員で約300万円程度、そして地域ごとに不当なギャップがないか開示しており、グローバルに従業員を処遇するような体制が明らかです。

 想像するにファーストリテイリングの場合日本を除く海外ではこれとそん色ないくらいに処遇する一方、日本ではこのレベルに達していなかったのかもしれません。さて、これは従業員にとってよいニュースなのでしょうか

3.どういった世界が広がるか

 これは職務・責任度合いによって給与が決定するジョブ制度の徹底化という面があると思います。そして、ファーストリテイリングとしてはグローバルな企業を目指す一歩として待遇の一本化というのは重要な一歩であるといえます。そして、似たような動きが広がれば日本経済のマクロ的な見方としては賃上げによってデフレの解消が図れるのかもしれません

 日本企業のジョブ制度導入、表向きの理由は人材を獲得しやすい、柔軟な働き方の推進、能力に見合った報酬体系で
公平感を持たせるなどがあります。ただし、全部とは言いませんが自動的に給与が上がっていく中高年社員問題、特に定年延長でより顕著になった「働かない高給おじさん」対策とも言えます。要するに人件費抑制の意図が裏にあるといえますが、ファーストリテイリングの場合はこの動きとはほぼ真逆といえるでしょう

 しかし、従業員にとっては手放しで喜べる話ではないようです。ここには、ジョブ制度の徹底というものが同時に施行されます。いわゆる本人の能力・実績・成長意欲などによるグレードでの評価に一本化されるわけですから、逆に言えばいくら長く勤めていてもグレードが上がらなければ全く給料が上がらない世界になっていくことだといえます

 能力を発揮できる人取っては素晴らしい制度ですが、そうでない人は一生給料が上がっていかない、自分に適性がある仕事に転職しかないある意味厳しい制度ともいえるわけです。

 

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