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人財育成の死角ー企業研修は今のままでいいのか?

2024.07.02 カテゴリ: グローバルビジネス人の育て方企業経営での留意点

1.一流講師と受講生

 私事ですが、以前に比べ研修のご依頼が少しずつ増えてきました。私の場合は決算書や経営数値の見方・使い方といった内容が多く、対象は管理職予備軍から役員までです。やはり基本、経理財務関係者以外はとっつきにくいので、中身をどう分かりやすく受講者が興味を持つように仕上げるか?というのは大切と思います。しかし、残念ながら、少数ではありますが一定数は落ちこぼれてしまう受講生はいる感覚はあります。

 一流といわれるような研修講師の方のお話をお聞きすると結構そのあたりこまめにケアーしてそういった「こぼれる人」を最小限にするためにいろいろと工夫されているようです。確かにアンケートの満足度などで評価されるので人事の研修担当も落ちこぼれなしを望んでいます。加えてすべての受講者に一流講師は本当に愛情をもって受講者に接しようとしている方が多いこともあります。 どんな受講生にも一人一人大切にして寄り添う力、自分には一流と比べると足りないのではという自覚はあるのでこのあたりは自分も改善していきたい分野ではあります。

 しかし、一方でモヤモヤもあります。非常に上から目線で申し訳ないですが、やはりお金を使って外部講師を雇う以上、受講者もある程度セレクションが必要なのでは?と思うのです。例えば、リーダーシップ研修をやっている講師の方にお聞きすると、「リーダーなんてやりたくない」という受講者が少なからずいて、こういった人たちにどうやって寄り添っていくかが一つの課題になっています。私などは、(講師の立場ではなく)企業の立場として「そんな人お金使って研修なんて受けさせなくていいのでは?」などと不遜な気持ちになります。こういった考え方本当に間違えでしょうか?

2. 米国企業における研修の考え方

 私は会社員時代のほとんどを欧米企業で過ごしてきました。日本の一般大手企業と違うのは「階層研修」というのはあまりないということです。そもそも階層が極端に少なくてざっくりわかりやすく言うとある会社だと、一般社員、プロフェッショナル(P)、マネジャー(LP)、シニアマネジャー(SP)、役員(Ex)な感じです。一般社員とPの違いは前者が割とスーパーバイザーやマニュアルに従って仕事をするのですが、後者は完全に自立して働き周りを巻き込んで仕事ができるプロジェクトリーダーができるレベルは求められ、ここは大きな断層がありました。

 もう働いていたのは20年くらいに前になりますが、一般社員は業務に直結つながるような研修は社内講師から多少ありますが、それ以外はイーラーニングにて自分でやってねという感じだったようです。逆に日本企業だと新人・若手は外部講師の研修なども多いけど管理職になるにしたがって研修時間は少なくなるイメージ’ありますが、米国企業は階層が上の方が研修は多くなってくる感じです。加えて、研修を受けられるのは全員ではなく、自分で積極的に上司の承認を得て受講するか、人事部門のセレクションで上の階層に行けそうな人に声がかかるケースが多いです。

 私も、リーダーシップの研修を人事から推薦されて4日くらいのリーダーシップの泊込研修を米国の研修センターで受けた覚えがあります。講師も一流ビジネススクールの著名教授などが多く、一人当たりの研修料金も航空券代など交通費・宿泊費を除いても100万円を超えていました。そういった研修ですから参加者も超前向きで、グループディスカッションも白熱します。当然すべて英語で半分近くはネイティブスピーカー、日本人は自分だけか、いても他のグループに一人くらいなので私はヘロヘロでした。結構こういった研修、参加階層も細かく決まっておらず割とばらけています。そのため意外な成果があったりします。

 後日、米国本社の他部門の役員クラスの偉い人に頼みごとをしなければならないことがあり、こわごわ電話したことがありました。しかし、相手は妙に親しげに対応、なれなれしくて狐につままれました。どうやら以前の研修で同じグループだった人の好いヤンキーおじさん風の方で私は名前忘れていたのですが先方は私が日本人であることもあり、よく覚えていたようです。当然お願いも快諾してもらえました。

 結構研修は社内人脈を築くうえでも大切で間違っても消極的だったり、斜に構えていたりというのは禁物だと改めてその時再認識しました。こういったセレクションで一部の社員に研修を傾斜配分するような仕組みはたまたま自分が恩恵にあずかったこともあり、非常にありがたく思いますし、すごくモチベーションが高まりました。では日本企業的な割と細かく刻まれた階層別研修などが良く行われ、その他の研修も割とまんべんなく広めに研修を受けさせてくれるような環境は無駄なのでしょうか

 

3.セレクションか全員か

 よく日本企業は欧米企業よりも社員教育にかけるお金が少ないといわれますが、自分や周りの人のイメージだと日本の大手­企業は比較的まんべんなくみんなに研修行っている感じです。実は私はあるグローバルに展開している研修会社の会計をアドバイザリーしていますが、新人研修がドル箱なのは日本だけ、アメリカだけでなくアジアでもほとんどありません。

 前述したように米国企業は一部の選ばれた人材にすごく高額な研修を受けさせる感じなので、もしかすると全社員の研修の延べ時間は日本の大手企業の方が多いかもしれません。あくまでも私見ですが、ある程度まんべんなく皆一定の研修を受ける権利があるのは日本企業(とはいってもある程度大手企業だとは思いますが)の良さと思います。最近は日本企業のエンゲージメントが世界で有数に低いなどとディスられていますが、日本の大手企業の中堅社員、平均能力レべルやモチベーションはかなり高く、研修の充実というのもその要因の一つと思います。

 一方、特に米国企業は「エリート教育」に力を入れていて、そういった人にかなり傾斜配分です。ですから米国企業、一般社員や下級管理職レベルは結構トホホな人もいますし舌先三寸で出世する人もいます。ただ、しっかりどこかではチェックが入り確実にそういった人は首になっていく気がします。一方、一般的に経営幹部候補層から層が厚く優秀な人が多いと思います。

 実は日本企業にもエリート教育がかつてありました。海外派遣MBAなどという凄い仕組みですがあったのですが、バブル崩壊ですっかり見なくなりました。問題点としてMBA帰国組の離職率が高いことがあげられています。優秀な人を育てると辞めてしまう、優秀な人をつなぎ留められない組織の仕組みが根本的問題であったと思います。昔メガバンクで海外MBAに派遣されたものの、帰国後「さび落としで地方支店に行ってこい」などという人事もあったと聞き、さもありなんです。MBAを取ってさくっと外資に高給で移る人を恩知らずなどという声も上がっていましたが、要はエリートを会社側がちゃんと使えなかった組織の問題という帰結かと思います。

 じゃあ米国並みにバンバンエリートを選抜してこの人たちに経営を任せ、それ以外はできない奴から首切って入れ替える仕組みがと良いかというとそうは思いません。やはり、日本企業の中堅社員を含めた平均的強さというのは強みだと思います。ただ、社会の成長が緩やかになってきて、ポストがなくなり、「働かないおじさん」(私も会社に居残っていたらそうなっていたかもですが・・・)が増えたとは聞きます。

 「働かないおじさん」に対し、日本の人事の人たちはまじめに再教育しようとしているみたいですがどうなのでしょうか?こういった人がいると確実に組織のエンゲージメント下げます。日本の労働法上難しいですが、個人的には経営的な目からは断固とした処置が必要ではないでしょうか。以前、米国のリーダーシップ研修で業績が上がらない部下をどうするかというテーマがありました。その会社のリーダーシップとして求められる姿勢は「その部下に能力を発揮できる環境を見つけてあげること、一番いいのは即刻辞めってもらって能力が発揮できるであろう他社で働いてもらうことだろう」でした。その時はずいぶん冷酷なと思いましたが。そのために、もう少し日本の労働法も解雇に対し柔軟であるべきと思います。そして、最初の話になりますが、こういった人たちが研修に参加すると、研修の空気も悪くしてしまい困りどころです。。

 結論としては、日本の研修で足りないのは経営幹部候補層への研修でしょう。確かにこの層は当然忙しいので時間が取れないということはありますが、逆にこういう人はむしろ部下に仕事を委譲してどんどん自由に活動する時間を増やすべきだと思います。そういった意味でこういった人たちに目先の仕事だけで追われることなく、しっかり考える時間を作ってあげるというのも大切なエリート教育でしょう

 日本のエリート教育でイメージするのは高級官僚のキャリアシステムですが、少しずつセレクションが行われ脱落するとほぼ基本戻ってこられない一方、それでもノンキャリアではほぼ到達できないレベルの出世は確実にできます。米国の私が見てきたエリート教育は確かに最初のセレクションはあるのですが、そこから脱落は非常に多いです。でも脱落しても復活はあるし、最初のセレクション漏れても次の選抜があったりします。要するに敗者復活なパスがすごくたくさんあって直線的な出世コースではないわけです。

 日本企業も年功序列を止めて成果主義だとか、ジョブ制で専門性を高めていくなど試行錯誤をしているようですが、ある程度のエリート選抜は必要ではないかと思います。そのまま、米国的な制度を直輸入止めた方が良いとは思いますが。そういった意味で、我々研修する側も経営幹部候補側に品質の高い研修を提供できるように、場合によっては大学院などで新たに専門的な勉強したりなどということも大切とは思っています。

 

 

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