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アート思考ーDysonにはあって日本の家電メーカーにはなかったもの

2020.03.31 カテゴリ: 企業経営での留意点経営戦略経営理念

1.目標設定はSMARTか?

「アートシンキング」 エイミーウィテカー著を週末読んでいました。確かに近年MBA(経営学修士)よりもMFA(美術学修士)の方がビジネスでも使えるといった話題がありますし、適当に美術鑑賞などはすきですが、「アート思考」などと言われると 正直、自分からは一番遠い世界であると思っていました。図工は大抵成績で2か3でしたし、絵画や工作の作成センスは自他ともにかなり低いと認めます。ただ、やはり今回のコロナ騒動で、目先ではなく自分と一見関係ない世界にも目を向けてみようというのがこの本をとったきかっけです。本の中身をみるとは別にアート思考というのは芸術家やデザイナーだけに必要なものではなく我々のような一般的なビジネスパーソンにも大切なものだという事がわかります。

 さて、この本の中で一番私が印象に残ったのは目標についての考え方です。ピータードラッカーさんがおっしゃたことだと思いますが目標はSMARTであるべきという事があります。目標はSpecific(具体的)Measurable(測定可能)Achievable(達成可能)、Realistic(現実的)Time bound(期限がある)ということです。これ私はこれ自体素晴らしい考えだと思っていました。しかし、目標設定において本当にSMARTであるべきかこの本では疑問を投げかけています

  例えば家電メーカーがSMARTで目標を作ると以下のような感じになるでしょう.「今よりも消費電力が現在の当社のハイグレードの新製品より10%低いクーラーを来年3月までに作ろう」のような感じです。これはSMARTを満たした目標で多分この目標、優秀な技術者を有する日本の家電メーカーでしたら達成できるのではないかと想像します。しかし、これは売れるでしょうか?こういったちょっと便利になるといった製品には消費者は完全に慣れ切っています。他社も似たようなものを開発するでしょうし、非常にしんどいレッドオーシャンの戦いになると思われます。

 一方、そもそもこういった発想形式でダイソンの羽根のない扇風機は生まれるでしょうか?マーケティングリサーチで消費者から扇風機の羽根がなくなればいいという声つかめるでしょうか?こういった羽根のない扇風機といった未知のゴール(B地点とよんでいます)を設定はどうすればできるのでしょうか。そもそもどうやってB地点を探せばいいのでしょうか?

 

2.MDQとは

 このヒントとしてSTARTに代わって映画のストーリーなどにあるMDQ(Major Dramatic Question)を提唱しています。映画を例として取り上げてみましょう。映画の脚本にはストーリーを導く2つの問いがあります。一つは筋(プロット)もう一つがMDQ、いわばその奥に潜む問いです。B級映画はなぜB級か(個人的には決してB級映画嫌いではなくこれはこれで娯楽として素晴らしいとは思います)というと多分MDQが弱いからではないかと思います。例えばスタローンのランボーシリーズ、夏に第5作出ますが、第2作以降は単なるB級ドンパチ映画だと思いますが、少なくとも第一作はベトナム戦争などのトラウマからどうやって立ち直るのか?といたMDQがあったと思います。一方、スターウォーズが(特にエピソード4~6)がB級映画とは呼ばれない(と思われる)のは人間はどうして悪(ダークサイド)に落ちてしまうのか?という問いがあったからだと思います。

 さて、羽根のない扇風機のMJQは何だったのでしょうか?全く技術革新がないダサい扇風機を軽くて掃除がいらないかっこいいものにできないか?という問いがその裏にはあったのでないかと思われます。扇風機は重くて掃除が大変で子供が指を切ったりして危険です。ちなみにわたしも子供のころ手を扇風機につこんで思いっきりグサッと深く切ったことがあります。そういった。MJQがあったから有名な話ですがハンドドライヤーの原理(*)で羽根のない仕組みを思いついたと思われます

*小さい気流でも勢いをつけて周りの気流を巻き込むと、少ないモーターの力や電力で、大きな風を作ることができるというハンドドライヤ―の技術

 Dysonの創業者のJames Dysonは自分をデザインエンジニアと定義しています。こういった創業者の美に対する意識がMJQをうみだし、そしてこういった製品を生み出しているのではないでしょうか?ただし、そもそも企業の皆さんは毎日仕事に追われていてそんなにMJQ云々など優雅にしてられないよ・・というところあるかもしれません。どうすればよいのでしょうか?

3.MJQを活かせる組織とは

 そこでヒントになるのがグーグルの20%ルールです。これは仕事時間の一部を自分の好きなプロジェクトに使ってよいというもので、これによってGメールの発見につながっています。自分自身、もし中期事業計画で何の前触れもなくSMARTではない扇風機開発プロジェクトが載っていたらCFO(最高財務責任者)としては却下していそうです。おそらく一般の企業では公式のプロジェクトではなくこういった20%の部分を使ってやるべきではないでしょうか?特に今はコロナ騒ぎでかなり通常の業務は停滞気味なのではないかと想像されます。逆に言えば在宅勤務の方も多いでしょうし、こういった20%的な部分を使ってみるには絶好のチャンスかもしれません。自分もせっかくなので少し違ったことこの時を使って考えてみたいと思っています。

 一方、SMARTは無駄なのでしょうか?確かに目標を探索するには向いていません。しかし、B地点が見つかった時点でのタスク管理的には有効ではないでしょうか?羽根のない扇風機である程度アイディアが固まれば おそらく「1年以内に羽根のない扇風機を原価1万円以内で製造するプロセスを構築する」といったSMARTな目標は有効でしょう。

 ちなみに当然日本の家電メーカ―もこういった潮流に気が付いていないわけではいないということを申し添えます。例えば、パナソニックは非常にオープンに価値を創り出す場として2018年4月にデザインセンタ―京都を立ち上げています。ハコものが重要なわけではなく、そのフィロソフィと実際の運用をどうするかの方が重要ですが何か新しいものが誕生するか楽しみにしたいと思います。

 

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