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アサヒビールの豪州事業買収は高い買い物か?

2019.07.22 カテゴリ: M&Aグローバルビジネス企業経営での留意点

1.豪州事業買収の概要

アサヒグループホールディングス株式会社(以下「アサヒビール」)は19日Anheuser-Busch InBev SA/NV グループ(以下、「AB InBev 社」)から豪州事業(ビールサイダー事業)を160億豪ドル(日本円約 1 兆 2096 億円)で買収しました。この豪州事業では「Carlton」や「Great Northern」といったブランドを手に入れることができます。確か私も何度かオーストラリアにいた際はよくCarltonを飲んでいたという印象があります。

 この背景には世界のビール業界の大型M&Aの余波があります。2008年、ベルギーのインベブが、バドワイザーで知られるアメリカのアンハイザー・ブッシュを買収・合併し、社名変更して誕生したのがAB InBev 社です。この際の買収総額は約5兆8000億円で、ビールメーカーの買収では空前の規模でした。その後2016年10月にはイギリスを本拠とするSABミラーの買収(吸収合併)を買収し、ビール飲料の世界シェアは3割に達する巨大企業となりました。その一方でシェアが高くなりすぎ、独占禁止法に抵触したため一部事業を売却、この際、アサヒビールはヨーロッパ事業を買収しています。今回も巨大になりすぎたAB InBevが有利子負債返済のため豪州事業を放出したのがこの買収の背景です。

2.アサヒビールの国際事業

5年くらい前まではアサヒビールは国際事業のイメージほとんどありませんでしたが、現在は国際事業はグループ全体2.1兆の売上げのうち7千億を占める主要事業となっています(2018年度決算)。この国際事業では4600億欧州 1800億オーストラリア1800億とこの2か国に絞っており、中国からはほぼ撤退しました。中国事業についてアサヒは19.99%保有する青島ビールの株式を2018年3月に約1060億円で売却しました。あまり青島ビールとの相乗効果もなく国際業務については欧州と豪州に集中するという方針と思われます。
 

 欧州事業についてもう少し詳しく説明するとアサヒは2016年10月に西欧事業(英国、イタリア、オランダ)を2045億円(25.5億ユーロ)12月には東欧事業(チェコ、スロバキア、ポーランドなど5か国)を約8883億円(73億ユーロ)で買収しています。 一方、オーストラリアにおいては2009年と2011年に飲料事業の買収を行参入し、比較的堅調に推移してきたというところです。アサヒビールは国際事業の主軸をしばらく欧州と豪州に置くようです。

3. 財務的インパクト

やはり一時的にではありますが買収の原資1兆2千万はすべて短期の借入金で調達するようなので財務体質は大幅に悪化します。今年の第一四半期までのDE Ratio(負債の資本に対する割合)は0.97でした。負債が資本の範囲内に収まった入れば財務的にはまずまずといったところでした。今回の買収でおそらくほぼ2倍を超えると考えられます。このDE Ratioが悪くなると何がまずいかと言うと財務体質が悪化ということで格付けが悪くなり、いろいろな調達金利が高くなる可能性があります。

 アサヒビールとしてもそれはまずいと言うことで3000億円程度を劣後ローン的なもの(借入金ではあるが返済の優先順位が低く資本とみなされる)と2000億以内で株式発行(含む自己株分)で多少財務的インパクトを減らす措置はとるようですが悪化は避けられないと思います。

4.このM&Aは高い買い物か

よくM&Aの際、それが高いか安いか測定する指標にEBIDTA(償却額、利息控除前税引前利益)倍率があります。今回の買収において簡易的に買収価額をEBIDTAで割ると約14倍で一般的な水準と言われる8~10倍を上回っており高めではあると思われます。簡単に言うと今回の買収額の1.2兆を回収するのに14年以上かかるということですから高いのでは・・と考えるわけです。ただし、これはあくまで過去の数字から見てということですからアサヒビールのグループに入っていろいろなテコ入れをして、将来利益がもっと高くなる体質になれば安い買い物にもなるわけです。

 今までの欧州事業などの動向を見ると2019年度予想でマイナス0.2%の売上収益の伸び(為替修正後+3.2%)ということで毀損しているということはないですが、テコ入れで大きく伸ばしているということもなくこのままでいくと成功したとは言えない状況ではあります。なんとなく海外の会社は買収して大きくなっているがきちんとアサヒグループとして運営がされているのか見えにくい状況ではあります。オセアニアとヨーロッパに主軸をおくといった戦略以外にはっきりとした国際戦略見えてこないですが、ここ数年密かに進行していれば何か見えてくるはずなのでそのあたりは楽しみです(逆に何もやっていない可能性もありますが)。

 

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