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公認会計士が不人気な理由

2018.05.14 カテゴリ: 会計・税務会計監査

 公認会計士という職業に今一つ人気が出ません。公認会計士試験の推移をみると2010年の25000人の受験者をピークに減り続け、近年は1万人程度とピークの半分くらいの受験者です。大手監査法人も人手不足にあえぎ、そのための過重労働の問題が深刻化しているようです。

 監査法人側も考えてはいるようで、12日の日本経済新聞では「大手監査法人がタッグ、取引確認システムを共同開発」という記事が載っていました。監査手続きで「確認」があります。これは何かとざっくり申し上げると貸借対照表上の数字が正しいことを確かめるため、残高確認を直接取引先に監査法人が送付するものです。残高なんて合いそうだと思われがちですが、タイミングの違いで相手先との差異は生じます。この差異を確認していくのは非常に苦痛で時間も相当かかります。これをある程度システム上で照合できるようになれば時間も軽減され、過重労働も和らぐのではというのが見方でしょう。

 これ自体間違った方向とは思いませんが、「過重労働」自体が公認会計士の不人気の根本原因ではない気がします。若手会計士などに聞くと「過重労働」の中身が問題と思われました。「監査の厳格化」がよく言われてますが、「監査の厳格化」が本当にもたらしたのは「厳格化」ではなく「マニュアル化、形式化」「(必要性の薄い)手続きの増加」「意思決定の現場からの一切のはく奪」の3つと思われます。現場の会計士はマニュアルに沿って、決められた大量のサンプルをひたすら照合して書面に残すだけの仕事を行います。大事なのは形式なので会社の担当者が実際にきちんと見ているかではなく、見た証拠(証跡)があるかなので、ひたすら印鑑やサインの入った書類を集めます。会計処理について顧客と議論になっても監査法人の品質管理部門が承認しないと認められませんから、回答はできません。品質管理部門はかなり保守的(議論の余地がないような安全な会計処理しか認めない)傾向がありますから大抵相談されるような議論が分かれる処理は一般的にはすべて却下です。結果として「使いパシリ」ですから顧客からは全く現場の会計士は尊敬されません。1~2年はある程度勉強にはなりますが、それ以降はほぼ身につくものは当然限られてきます。したがって、監査法人を辞めても他で使い物にならず将来的なキャリアパスも見通せません。

 根本的な監査手続きの考え方、キャリアパスをどうするか、このあたり抜本的に考えないとこの公認会計士という職業の将来は残念ながら暗いと言わざるを得ないでしょう。

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