エリート大学生と起業
2018.08.06 カテゴリ: 社会問題。
目次
スタートアップ大競争
日本経済新聞で「スタートアップ大競争」という連載が始まりました。その中で宇宙衛星などの残骸の回収をめざすアストロスケールが取り上げられていました。この会社の代表の岡田光信氏は東大卒業後大蔵省に入省しましたが4年で退職して起業しています。東大生の公務員就職率は約20年前と比べ6%と3%の低下を示しており、一方東大発スタートアップは3割増えたと記事に載っていました。ただ、公務員の志望者が減っているというのは単に公務員が不人気で民間企業に人材が流れているだけかもしれないし、東大発スタートアップが増加しているというのも「スターアップ」の定義がはっきりしない限りいわゆる”Apple to Apple”か(キチンと同じ条件で比較している)かどうかはわからず、統計的には極めて不確実な内容と思います。本当に東大生のキャリアプランとして起業の占める割合が増えているかどうかはこの数字からわかりません。
中国の起業熱
アメリカがシリコンバレーをはじめとしてエリート大学生が起業をめざす傾向が強いと言われているようですが、この「スタートアップ大競争」でも清華大学の起業家教育プログラム「エックスラボ」が取り上げられ400社以上が起業したと取り上げられています。確かに、若い中国人の方とお話しすると、グローバル企業勤務でもいつかは起業したいという方は多く見かける気はします。アメリカや中国と比べると(あくまでこれは私の個人的感覚で正しいかどうかは不明ですが)高学歴エリートの起業率は日本では非常に低い気がしてなりません。
日本の起業パターンの問題点
かつて多かったのがたたき上げ型で大学にはいかず若いうちから社会に出てもまれ、起業したというパターンです。今も割と自営業というとこのパターンが多いのではないかと思います。大学進学率が高くなってこの層が実は減ってしまったのではないかというのが開業率の低下の要因の一つではないかと思っています。もう一つが天才肌型でおそらくエリート大学を入れる(卒業する)能力は十分あるが大学という枠にはまり切らず中退または大学に行かず起業するパターンの方です。堀江貴文さんやZOZOTOWNの前澤友作さんなどがこのパターンに入るのではないかと思われます。この方々も社会で育てるというよりも義務教育などよりも義務教育で変に抑え込むような教育をしないといったむしろ過干渉しない方が大切かもしれません。多分日本がアメリカや中国などより圧倒的に少ないと思われるのは(あくまでも仮説ですが)エリート大学を卒業した後、起業するパターンではないでしょうか?
大学教育の問題点
この原因として教授自体が「サラリーマン」ばかりなことが大きな一つと思っています。中国はよくわかりませんがアメリカの大学の場合、終身の教授の地位を獲得するのは非常に大変で特に研究費の必要な理系はきっちり研究プランを建ててプレゼンできないと研究費も入りません。要するに起業家のような方でないとなかなか地位を得ることができないわけです。
一方日本の場合は、わりと学閥、教授閥でがっちりポジションが固められ、どちらかというとサラリーマン感覚で滅私奉公しないと教授のポジションは得られないとよく聞きます。IPS細胞の山中教授のようにノーベル賞級の研究をしていても(最終的にはノーベル賞受賞しましたが)日本では引く手あまたとまでは言い切れなかった話を聞いてもこの傾向は強いのではないかと思われます。サラリーマン教授の下ではなかなか起業家は生まれにくいと思います。博士乱造で就職できない博士号の方(ポスドク問題)が話題になりましたが、これはボス教授が人事を牛耳る仕組みを放置したままアメリカ型の競争の仕組みだけ入れてもうまくいかないと思います。最近叩かれ続けの文科省ですがこのあたりメスを頑張って入れていただきたいともいます。