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日本企業の海外子会社での不正はなぜ多いか?

2018.06.18 カテゴリ: 会計・税務会計不正

 本日の日本経済新聞で日本の法律事務所が不正調査で日本の弁護士事務所の現地事務所への依頼が増えているという記事が載ってました。不正が起こった場合速やかに調査をしてどのようなことが行われていたのかを第三者の手で速やかにまとめて株主などステークホルダ―に公表するというのは大切なことだとは思います。実際日本企業が他の先進国の現地法人よりも海外で不正が多いかは信頼できる資料で確認したわけではないですが、表に現れているケース含めても多い気がします。ただ、いくら起こった後の報告書に力を入れても抑止に力をきちんと注がないと全く意味がありません。

 抑止力として弱いのは内部監査部門の日本企業一般の弱さが一因かと思います。欧米グローバル企業ですと内部監査の結果は社長かCFO(最高財務責任者)が直接関与しますので、非常に社内で権威を持つものになります。加えてそのような報告書を作る部門ですから若手のエースの登竜門というべき組織になっています。日本企業の場合例外もありますが、良くて元監査法人の人間を専門職として雇う程度、通常は一線の出世コースから外れてしまったシニア社員の吹き溜まりのようなポストになっているのをよく見かけます。海外である一定期間滞在し、慣れない言葉や文化と接しながら結果を出すのはかなり知力・体力が必要です。組織のリスク管理について学ぶ良い機会でもあり、若手の登竜門として内部監査部門を位置付けている欧米グローバル企業のやり方は一定の合理性があるかと思います。

 また日本企業の場合、海外現地法人の位置づけがあいまいなケースが多いのも一因です。ありがちなのが製品やビジネス形態ごとに海外現地法人をどんどん作ってしまうケースでこの現地法人のレポーティングが機能(財務、マーケティング、技術開発)なのか地域本部なのかビジネス形態なのかはっきりせず、指揮命令系統がスパゲッティのように入り混じっているケースをよく見聞きします。何か所からも指示命令が来る部署がある一方エアポケットのようにどこからも監視されない部署ができたりします。まさに不正の温床になってしまうわけです。

 海外子会社の経営管理というと単なる営業結果と利益管理しかしない(またはそれさえせずに野放し)、そして日本人社員さえ送っておけば安心ということでやたらと海外現地法人の日本人の数が多いというのが大半の日本企業の現状ではないでしょうか?地道に海外の組織を作りこみ、内部監査部門をじっくり構築するそういったことが真のグローバル企業に飛躍したい日本企業の課題だと思います。私も何社かそういったお手伝いをさせていただいていますが、まだまだそのあたりの意識は弱い会社が多いというのが実感です。

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