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単なるイメージの悪化だけではないカネカ広報問題

2019.06.10 カテゴリ: ダイバーシティ経営企業経営での留意点経営戦略

 

昭和のサラリーマン感覚から見たカネカ問題

 化学メーカーであるカネカが育休明けの2日目の男性社員に転勤を命令したこと、それに伴う退職で有休を与えず強制的に退職日を指定したとして炎上していることはご存知かと思います。大部分はこのカネカの対応に対する批判です。ただ、私も昭和と平成初期、日本の会社のサラリーマンだったのでその感覚を振り返ってみました。

 昭和のサラリーマン感覚からするとそもそも企業戦士たるもの全国転勤は当たり前です。ましては1か月近い育休もとらせていただきたっぷり家族サービスもできたわけですから、今度は会社に恩義を返す番です。転勤を甘受するのは当たり前というわけです。

 当然これは会社の言う通りにしていれば年功序列である程度まで出世、給料もあがり続ける終身雇用の時代の話であって、この令和時代通用しないでしょう。こういった昭和感覚の広報の対応の問題点は「弁護士的対応」と以下の徳力基彦氏が秀逸な分析をされているのでこちらを参照していただいたほうが良いかと思われます。

https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20190607-00129136/?fbclid=IwAR34Kr10i5NHzOVcmsUBf5ADmr7PV3T9m0I3UZ6VLxlJMa8LbHFnQ4LFwEw

ただ、この中で2つポイントを述べられています

 ・一つは、昨日6日の発表コメントを公式の最後のコメントとして、今後は一切口を閉ざすこと。

 ・もう一つは、これまでのカネカにおける「常識」を一度根本から見直して、社員の皆さんのためにもこれからどういう会社になるべきかを真剣に議論し、なんらかの形で真摯に世間にも説明することです。

 私はおそらく前者の対応で今後は一切口を閉ざすと予想しています。所詮B2B企業なので別に多少企業イメージが悪くなっても顧客がカネカの製品の購入を控えるといったことは考えにくいと思うからです。しかし、こういった場当たり的な対応は実は間接的な影響でボディブローのように会社をむしばんでいくと思います。

カネカの新卒とモチベーション

  まずは、この求人難の時代に「カガクでネガイをカナエル会社」という求人プロモーションをせっかく行ったのに、これは「カゾクのネガイをカナエナイ会社」というネガティブキャンペーンにしか聞こえなくなります。ほとんど広告費をどぶに捨てたことになるでしょう。そしてここ2~3年の採用は大苦戦かと思われます。

 カネカが6月9日の新卒向けイベントの出店を止めたとニュースになっていました。加えて、『「クチコミ就職情報サイト「楽天みん就」では、就活生から不安の声が相次ぎ、カネカの掲示板は「大荒れ」となっている。6月1日以降、書き込みは700件を超える。』とニュースになっています。

 こういった社会からの批判が高まった時、組織は2つの方向に通常行きます。一つは社会の批判の声に対して一致団結して耳を閉ざす対応で、カルト集団などにあります。もう一つは社員のモチベーションが低下していく方向です。前者の場合はかえってモチベーションは上がりますが、企業という社外との交流が不可欠な組織にあってそれは難しいと思います。社長の社内メールが漏れるところから、どうやら後者の方向のようです。こういった社員のモチベーションの低下はがんのように会社をむしばみます。

カネカとESG

 CFO的感覚からすれば、機関投資家に対して、一連のプレスリリースはカネカのESG(環境・社会・ガバナンス)を実際には重視しない会社と見えるのではないかと心配します。日本企業にはESGに対して倫理的に正しい活動をしている会社のアピールといったイメージ戦略的なものと考えている会社は多いと感じますが、実は違います。機関投資家にとっては環境・社会・ガバナンスは重要なリスクの要素であり、これを考慮しない会社は中長期的リスクが高い会社と考えます。少し専門的な話になりますが、リスクが高いということはCAPM理論上、資本コストが高くなり、当然理論株価は低くなりますので、特に海外機関投資家は売る、または購入しないということになります。

 少しカネカのESGのHPを見てみます。その中の「働きがい」の項目で「きわめてユニークな新しい人事制度」として「頻繁に上司と部下が対話をすることで、課題に正面から向き合い、目標達成と自らの能力開発を促進させる」とのべています。具体的には「上司と部下が毎月2回定期的に対話(コミュニケーション)を行い、対話を通じてお互いの関係性を強固にする」とのことです。

http://www.kaneka.co.jp/csr/social/rewarding/

 頻繁に上司と部下が対話していれば当然転勤の話などが突然出てくることはないはずです。プレスリリースでは「育休前に、元社員の勤務状況に照らし異動させることが必要であると判断」していると述べていますが、それでしたら「ユニークな新しい人事制度」で当然にコミュニケーションをとっているはずです。法律的には問題なくても会社のHPで述べられているようなESGポリシーから外れたことをして、全く問題がないと開き直るプレスリリースをする広報の神経を疑います。

 海外のまともな機関投資家はこのままだと非常にネガティブでしょうし、カネカにくるみんマークを出してしまった厚生労働省所管のGPIF(日本の年金基金)が投資をしていたらブラックジョークでしょう。私がCFOだったら広報に対して怒鳴り込みたい気分になります。徳力氏がおっしゃっているように「これまでのカネカにおける「常識」を一度根本から見直して、社員の皆さんのためにもこれからどういう会社になるべきかを真剣に議論」をすることを願いたいです。

 

 

 

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