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企業研修について考える -日本企業と欧米企業の違い

2020.03.04 カテゴリ: グローバルビジネス人の育て方企業経営での留意点

1.コロナ問題の影響

 学校の一斉休校はショッキングでした。私の場合、息子が小学校から通っていた高校の卒業式は中止となり、指導者として奉仕しているボーイスカウト活動は3月はすべて中止となりました。子供たち、特に遊びたい盛りの小学生はとてもかわいそう、個人的にはせめて少人数・野外活動ではいいのではと思ったりします。しかし、かなり控えめにしていると言ってもそれなりに都心に出て人と接することがある私が保菌者ではないとは保証できない以上やむを得ない面もあり、ジレンマです。

 多分、飲食やイベント業は大変でしょう。それと並んであまりマスコミ等では話題になりませんが研修業界も大変です。新入社員研修などは軒並み中止です。私も、今まで自社開催でセミナーやコンサルティング先のクライアントなどに頼まれて社員研修などやってきましたが、企業研修自体もはもう少しやってみようかと思っていたので出鼻をくじかれた感じです。

 ただ、一方で企業研修のため情報収拾をして気が付いたことがあります。ちなみに私は日本の伝統的大企業ではほぼ新入社員のころを除き働いたことがなく、ほとんどの会社員としてのキャリアを欧米系のグローバル企業で過ごしていたので企業研修に関する違いを明らかに感じました

2.欧米系の企業研修

 研修でもいわゆる日常業身に密着したものやコンプライアンス研修など社員が最低限押さえておくべきもの、こういったものについてはあまり差がありません。ただ、この手の研修は欧米グローバル企業は社内講師や近年はEラーニングなどで行うケースが多いです。わざわざ外部講師を呼んでまで行うことは少ないと思われます。

 一方、日常業務ではない様々な管理職や上級管理職が身につけるべきリーダーシップや思考力・分析力を高めるといった研修は欧米グローバル企業については圧倒的に傾斜配分で地位が高いほど、または将来性が期待されているほど研修の機会が圧倒的に多くなります。その点、わりと日本の場合は新入社員研修、X年目研修、その後は階層別研修などとわりと平等に研修機会は与えられている気がします。ここでの「企業研修」はこういった外部講師をよんだ研修のお話しです。

 私も、幸いGE時代、クロトンビル(GEのグローバルの研修センター)の研修など何回か受けさせてもらいましたが、講師もハーバードビジネススクールなどの一流ビジネススクールの教授や世界的に著名なコンサルタントで、ゲストスピーカーも先日お亡くなりになりましたが、ジャックウェルチ氏などトップが超ハードスケジュールの合間をぬってやってきます(私の時はGE航空機エンジンの社長などでしたが)。

 日本で行われたアジア・パシフィック地域の財務マネジャーの研修なども紀尾井町のニューオータニに泊まり込みでコロンビアビジネススクールの教授がやってきて、とにかくすごくお金がかかっているのは良くわかります。

 たんにお金をかけて超一流講師を呼ぶだけでなく、そもそも研修は選ばれた相当モチベーションが高い層しか来ないですから変に斜に構えたようなタイプや遊び半分の人間は全然いません。リラックスしていてもやるときは真剣で受け身な態度の人間はほぼいませんでした。

3.日本における企業研修との違い

 研修関連の会社の方や私などよりずっとキャリアのある先輩研修講師と話をすると研修後のアンケートが大事で良い評価をとることは必須なようです。そのための一つとして落ちこぼれを出さないように配慮をするということは大切で、発言していない人にもちゃんと配慮してできるだけ機会を与えることは大切と教わりました。研修において落ちこぼれが出ると、悪いケースだとどんどんこの人たちが足を引っ張って場を悪い雰囲気にしてしまうわけです。したがって、ボトム20%のモチベ―ションを維持することは非常に大切なわけです。

 多分欧米系の場合、そもそも落ちこぼれるような人間は研修に参加できません。どちらかというとトップ20%の満足度の方が優先順位が高い気がします。当然すべて一定レベル以上の研修はすべて英語です。したがって、正直なところ、アジア・パシフィックならばオーストラリア除いてみなノンネイティブですから何とかなりますが、アメリカ本土の研修だと日本人は一人だったりしますから、自分レベルの英語力だと落ちこぼれにならないようこっちが必死でした。落ちこぼれに対しては講師も周りの目も冷たいですから、重要なポイントで分からなければ恥ずかしげもなく手を挙げて質問をしていました。ただ、落ちこぼれには冷たい一方、自ら積極的についていこうとしている人間に対しては程度の低い質問にも講師も周りも温かく見守ってくれていたような気がします。

4.研修に見る人材登用の違い

 研修にも日本企業と欧米グローバル企業の人材登用の考え方の違いが表れていると思います。徐々に変化はしていますが日本企業は比較的みな平等に年功序列で昇進が基本的ラインに残っていますが、欧米グローバル企業は明らかにエリート選抜方式です。したがって日本企業はわりと皆に平等に研修でもお金をかけますが、欧米グローバル企業は明らかな傾斜配分なわけです。

 実は日本企業もエリート教育を考えたこともあり、その典型的例がMBA留学だと思われます。しかし、その結果は対象者がほとんど辞めてしまったという結果でした。私のGEやコカ・コーラの同僚にもこういった方たちたくさんいましした。お聞きするとこんな感じです。

 MBAの同級生のほとんど(日本以外)は卒業後、数年で悪くても課長クラス以上、10年以内には役員・事業部長クラスにはなっています。日本だと数年間平気でヒラ社員ですし、仕事の内容もチャレンジングな仕事を任せてもらえるわけでもないです。別に一流大学のMBA卒が偉いのではないですが、MBAを取得できるようなエリートだから若いうちからどんどんキツくてチャレンジングな仕事を任せて、成功すればどんどん上げていく、これが欧米グローバル企業の考え方です。逆に言えば一流MBA卒でも成功しなければクビも十分ありうる厳しい世界なわけです。

 したがって、欧米グローバル企業は研修なども本当はある程度セレクションしてその人たちにたっぷり時間とお金をかける、一方、やる気のない人間を教育するほど暇ではないというわけです。

 ちなみに研修講師としての立場でいうと、そういった日本企業の平等さによって研修の数はそこそこ確保されるのでありがたいとは思います。米国を見ても億単位で稼ぐカリスマ講師と社内講師のアウトソース先の比較的低単価の研修講師に二分化されているような気がします。自分としては正直現状の日本の状況の方がありがたいと思いつつ、将来のこういった二分化の流れを見つつ自分を高めていきたいとは思います。

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