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奇跡の集落はなぜ生まれたか?

2018.11.26 カテゴリ: 社会問題経営戦略

1.「奇跡の集落」について

 これは少子高齢化と過疎化というダブルパンチをうけている地方の創生の話です。舞台となっているのは新潟県の十日町市池谷集落であり、2004年の中越新潟地震で大きな被害も受け6世帯13名というほぼ廃村寸前だった村が11世帯23名まで盛り返した「奇跡の集落」の話です。著者の多田朋孔さんはコンサル仲間で起業家を育てる「ビジネスモデルデザイナー®」という活動も一緒にさせていただいており、こういった活動が認められ、Forbes Japanの「ローカルイノベータ-55選」で関東甲信越地域1位を獲得しています。彼の場合は地域おこしにビジネスデザインの手法を適用していますが、ここでは決して都会で活躍していた敏腕コンサルタントが鮮やかな手法で一気に地域おこしをしたというようなかっこいい話ではありません。どちらかというと地味な手法の積み重ねが地方創生には必要だということがわかります。

2.人について

 地域おこしをするのはやはり「人」であり、最初に村おこしをはじめた山本さん、NPO法人JEN、研修に来ていて村おこしい携わった籾山さん、多田さん、そして意外に開放的であまり封建的な考えを持っていない集落の人々、熱心で協力的だった十日町市の担当職員といったさまざな偶然が重なってこの奇跡が起きたことがわかります。一人の人間の力ではなく、様々な人々の地道な活動があって初めて地方創生ができるのであり、そういった意味では携わった方々の努力に頭が下がる思いです。しかし、「素晴らしい人々の努力があって初めて地方創生ができる」では全く再現性がなく、小説などの物語であれば面白いですが社会科学の書籍としては意味がありません。この本の後半ではこういった「偶然の中にあった必然」を抽出しています。

3.地方創生の地味なステップ

 企業の再生の場合、リーダーが素晴らしいビジョンを掲げ若手・中堅の厳選されたメンバー中心にどんどんと改革案を掲げ一気に社員一丸となって進んでいくケースが良く取り上げられます。古くは(今は非常に残念な結果となってしまいましたが)カルロス・ゴーン氏の日産リバイバル、最近では稲森和夫氏の日本航空再生などがわかりやすい例として挙げられるかと思われます。

 しかし、地方創生の場合は企業のように「営利活動」といった共通の目的をもつ人々の集まりではありません。「創生」の意味は住民それぞれで異なりますし、関係者の地方自治体、NPOなど村おこしに携わる人々は同床異夢であることは多いといえます。したがって強力なリーダーシップでぐんぐん人々を引っ張っていくというよりもファシリテーター的に関係者の意見を集約・調整していく能力が必要だと思います。そして、種をまいてじっくり見守るような「足し算の時期」と育っていく「掛け算の時期」があるというこの本の考え方は非常に面白いと思います。詳しくは本を読んでいただきたいのですがこの「足し算の時期」と「掛け算の時期」で何をしたらよいのかというステップが丁寧に解説されてます。企業の場合は大抵この本でいう「掛け算」が最初からできるわけで、企業の感覚で地方創生を行うと「足し算の時期」であった場合は悲しい結末に終わる理由がよくわかりました。

4.集落を訪れて

 私は実は多田さんのお誘いで何回かこの集落を訪れています。この夏には私が指導者をしてる日本ボーイスカウト連盟練馬第15団のカブスカウトのキャンプにこの集落を使わせていただきました。正直何も有名観光資源はないのですが、観光地化していない自然、美味しい農作物、歓迎してくださる人々という取り合わせで小学生のスカウトたちの非常に良い思い出になりました。特にお米や野菜などあまり好きでない子供たちがとにかく食べる食べる・・・驚きでした。こういった地方には都会の人間から見るとキラリと光るものたくさんあります。是非、この地方創生にかかわる方々、ぜひ参考にしていただいたらいいのではないでしょうか?

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