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ミニストップのおにぎり100円の秘密

2019.10.17 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

目次

1.ミニストップの苦戦

 いきなりですが私は甘党でミニストップのソフトクリームや一種のクリームソーダみたいなハロハロなどにはたまについつい手が伸びてしまいます。最近発売されたチーズハットグや様々な種類のフレンチフライなど体にちっともよくなさそうなジャンキーなラインナップには惹かれるものがあります。

 ただ、コンビニ経営面から見るとミニストップは明らかな負け組で2017年2月~2019年2月の3年間の決算はすべて当期純利益がマイナス、特に2019年2月期は15億のマイナスです。そのため、不採算店の整理を行い2017年度に99店、2018年度には120店の閉鎖を行いました。苦戦の原因は明らかで平均日版の低さが一番でしょう。2019年2月期ミニストップの全店平均日販は41.3万円で、セブン-イレブンの65.6万円やファミリーマートの53.2万円、ローソンの53.1万円とは大きな乖離があります。基本的にはここが改善しないと上位3チェーンとは対峙できないでしょう。

 この原因の一つとしては一番の後発だったというのも挙げられるでしょう。そもそもミニストップはイオンの100%子会社で1980年にスタートした会社です。1973年のセブンイレブンスタートより大幅に遅れており、同じ年の1980年にはセブンイレブン1000店達成しています。ローソンはダイエーにより1975年スタート、ファミリーマートは1978年に西友によりスタート、今は亡きサークルKサンクスはユニーにより1980年スタートしています。大手スーパーとして「横並び」で作っており、セブンイレブンやローソンの成功を見て当社もやらねば・・・と最後発で始めるあたり日本企業的ですよね。

 少々余談ですが、ミニストップは国内店舗 2197店舗ですが実は韓国が2556店舗で韓国の方が多いです。そして、2053億の営業収入のうち1152億と半分以上が韓国ミニストップです。今回の韓国における不買運動の影響はないようで、直近の決算発表などでも全く触れられていませんでした。

 

2.ミニストップのおにぎり100円均一の結果はいかに?

 ミニストップは「おにぎり100円均一」を7月2日から始めました。どのコンビニも期間限定や種類限定でおにぎり100円はやっていましたが、すべて統一して期間を定めず行うのはミニストップが初めてです。この効果なのか9月の大手3社の昨年同月比既存店売上高はセブンイレブンが1.5%減、ファミリーマートが1.9%減、ローソン1.2%減の中、唯一気を吐いてミニストップは1.0%増となりました。(出典:流通ニュース10月11日)

 ミニストップ側のコメントとしてはおにぎりがやはり50%~100%の伸びであったとのことです。ただし、当たり前ですが値段を下げれば利益は減ります。一方、ミニストップ側からは新しい常連客の増加(いつもおにぎり100円均一なので)やついで買い(おにぎりのついでに他のものも買う)でカバーできるとみているようです。9月の既存店売上げの分析によると客数は前年同月比1.5%増加しているのですが、客単価は0.6%減で前者の訪問客の増加(常連客かどうかはわからないが)は言えますが、明らかなついで買いは客単価の下落を見る限り、あまり見えてはきません。

 

3.ミニストップおにぎり100円均一の成算

 おにぎり100円均一でやはり気になるのは大幅な粗利益の低下です。ただし、そこにはある程度の成算があるとみています。ポイントはおにぎりのもともとの粗利の高さです。中の具材を除くと輸送費・加工費・原材料費併せておにぎり1個30円くらいといわれています。こういった粗利の高い商品は値下げには強いです。簡単な例で見てみましょう。

 おにぎり現在130円、高級具材の原価が20円だとすると原価は50円、一個当たり粗利は80円(130円ー50円)で一日50個売れるとしましょう。

  80円x50個=4000円の粗利です。

 これを100円に値下げするとすると粗利は50円(100円-50円)です。

  50円x80個=4000円

 

 以上のように80個売ればほぼ同等の粗利ですから50%~100%の個数の伸びでしたらおおむね同等以上の粗利は稼げていると思われます。

 これがもし粗利の低い商品で原価が90円だったとすると130円から100円に値下げすると粗利は40円から10円に下がってしまうので大変なインパクトになります。 

   40円x50個=2000円 

   10円x200個=2000円

  約4倍売らないと同じ粗利益になりません。つまり粗利の高い商品だから勝負ができたということです。ただし、逆にいえば粗利の高い商品は企業にとってドル箱です。したがって、他の大手コンビニはあえてこのきっちり利益が出る商品で勝負には出ません。ミニストップのような下位のチェーンができるゲリラ戦法といえましょう。

 加えてミニストップ側はもう一工夫しています。これは原価低減です。おにぎりを100円均一にすると同時に25~6種類だったおにぎりを一気に15種類にまで減らしました。これはどのような効果があるのでしょうか?種類が多いとそれだけ製造ラインを止めることが多いためコスト高になります。種類が少なくなるとおそらくラインの平均スピード早くなりますからその分製造コストが下がります。したがって、100円に下がって減った粗利を少しはカバーしているわけです。

4.ミニストップの巻き返し

 そのほかにも、フランチャイズオーナーとも良い協力関係が築けるような大胆な契約を今後提案していくようです。いい意味での守りに入らないゲリラ的な動きは今後注目です。しかも、バックにはイオングループがいますから財務的な不安は小さいといえます。

 コンビニ業界は比較的健康志向に移行しています。私もいい年齢なので健康志向の食生活は心がけていますが、やはりたまには二郎系ラーメンなどいかにも体に悪そうなものが無性に食べたくなります。そういった意味でジャンクだけど、そそるものもきっちり押さえているミニストップ貴重です。頑張ってくださいと陰ながら応援しています。

 

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