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すてきナイスグループの素敵でもナイスでもない粉飾決算

2019.10.02 カテゴリ: 会計・税務会計不正

1.すてきナイスグループの特設注意市場銘柄指定

 東京証券取引所一部上場企業であるすてきナイスグループが9月20日特設注意市場銘柄となり、今後内部管理体制の改善状況を報告することになります。こういった場合、実質的な報告先は日本取引所自主規制法人となり、結構内部体制については「はしの上げ下ろしまでお伺いを立てる」ような厳しい日々が続きます。最近の有名な例では東芝で2017年10月12日に解除されるまで特設注意市場銘柄でした。

 さて、このすてきナイスグループは昭和25年木材販売会社としてスタートしてその後建材全般、住宅やマンションの販売や仲介にも事業を広げており平成31年3月期で売上2400億を超える中堅の販売会社まで成長しています。ただし、内実は創業者の息子である平田恒一郎氏によるワンマン経営であり結構第三者委員会報告を読むと面白いことがかかれています。新築マンションの完成後は完売になるまで会議の都度担当役員に会議等で毎回起立の上謝罪させたうえ、自分で定めた決まり「ワイシャツは白」「役員は喫煙禁止」「ゴルフ禁止」にした役員を降格させるなど強権をふるったと記載されています。

 ここでは主として第三者委員会報告をもとに述べていきたいと思います。明示はされていませんがどう見ても平田氏主導で意図的に会計基準から逸脱した処理をしたようにしか見えないため「粉飾決算」と私は思っています。私の個人的な見方として「会計基準」等を自社に都合よく、本来その会計基準が目指していない不適正な方向で解釈・当てはめするのは「不適正会計」です。一方、明らかに「会計基準」から逸脱しているのは「不正会計」で意図的組織的にに行えば「粉飾会計」でこのケースは第三者報告見る限り経営者主導で意図的と思われます。

2.連結子会社の除外

 本来、子会社はすべて連結、関連会社は持分法で処理を行うというが原則ですが、日本の会計基準の場合重要性に乏しい子会社等は連結等に含めない、要するに決算数値から除外することができます。ただし、当然悪用して都合の悪い会社を連結から除外することを考える会社はあるでしょうから重要性の基準を会計基準では定めています。

 簡単にいうと質的重要性と量的重要性です。質的重要性とは戦略的に重要、グループの中で重要な業務を担っている、多額の含み損や偶発事象を抱えているような会社は除くことができません。例えば小さな会社であっても社運を賭けた重要な技術を持っている、巨額の損害賠償を請求される恐れがあるなどの会社が除外されたのでは当然投資家は困ります。

 一方、量的重要性とは除外された会社の金額合計がグループ全体の資産、売上、利益、利益剰余金のどの程度の部分を占めているかで判断するものです。当然、除外されて結果財務数値が大きく変わるのでは困ってしまいます。

 第三者委員会の報告では会社も監査法人も質的重要性を検討した形跡がないと一刀両断です。加えて量的重要性についても以下の通り大きな問題が指摘されていました。連結決算で発表された最終利益と非連結会社の利益(損失)の合計を比較していますが以下の通りです(単位:百万)。

 平成26年 連結決算 1030 非連結会社分 -110

 平成27年 連結決算 488 非連結会社分 -390

     平成28年 連結決算 557 非連結会社分 -439 

     平成29年 連結決算 573 非連結会社分 -307

      平成30年 連結決算 301 非連結会社分 -632

 見て一目瞭然ですが、もし非連結会社分を連結すれば大幅に利益が減少して、30年度などは赤字に転落です。会社側は監査法人に非連結会社の赤字分はほとんど本社出向者の人件費負担部分であると説明したようですが、人件費は出向者いなくても誰か雇えばかかるはずですので、私には説得力のある説明には思えません。ただ、別に監査法人などに対し隠ぺいしたわけではなく、(説得力はなくとも)説明自体はされているのでまだ「不適正会計」の範囲とは思われます。

 

3.連結子会社隠し

 これは社長の平田恒一郎氏が実質的に所有する会社を使った操作です。平田氏はいくつか会社を所有していましたが、株主の名義は知人やナイスの従業員名義にしていました。それぞれから「実質的な株主は平田氏である」といった覚書のようなものを取っていたようです。会社の役員(またはその親族)が実質的に支配しているような会社は本来は連結の範囲ですが、自分が実質支配しているとうことを隠ぺいしていたわけです。

 このような会社を使って、不良債権の肩代わりをさせてり。決算間際に売上・利益達成のためこういった会社に物件を買取らせ、後日買戻しをしたりしています。こういった会社に買い取る資金はあるのかというのが疑問として浮かぶと思いますが、バックファイナンスとしてナイスグループの会社から貸付けを行っています。例えばナイスグループの平成27年度決算を見ると長期貸付金27億が計上されていますがおそらくこういった貸付金であったと想像されます。

 これは、明らかに意図的に取引を偽装した不正行為で不正会計・粉飾決算ではないかと思われます。ただし、第三者報告によれば大部分の関与していた社員はこれが違反行為という認識がなかったようです。

4.ナイス粉飾決算はなぜ起きた

 一つとしては、平田氏のワンマン体制が放置されており、社内の風土として平田氏に誰も意見をきちんと言える体制になかったことが言えます。加えて業績に対するプレッシャーがあり、業績不振により銀行融資に支障が出るのではいう心配が常にあったようです。内部統制の考え方としては統制環境として非常にリスクが高い状況であったっといえます。

 ところが、会計監査人は上場以来関与してきた小規模事務所であり、第三者報告は明言はしていませんが一種のゆ着のようなものがあったと行間から感じられました(私の個人的感想です)。やはり、2で述べたような非連結の範囲の判断は公認会計士として(第三者報告のデータを見る限り)妥当とは思えません。

 一方、3.の例のような連結会社隠しは会計監査で見つけるのは非常に難しいといえます。ただし、期末近くに取引が発生する、その会社に貸付金があるということでしたら、何らかの疑義がある取引であるという認識は一般的にはあると思います。あくまでも個人的見解ですが担当会計士が見て見ぬふりをした可能性はあるなということです。正直同じ公認会計士として会計士監査に対する信頼をまた落とす残念な案件といってもよいと思われます。

 多少余談ですが、このような行為をあまり問題だと他の社員が認識していなかったというのはこれも残念です。上場会社の役職の方は最低限の財務会計の知識は必要です。そういった意味で「現場で使える会計知識」を読んでいただいたり「現場で使える会計研修」など受けていただけると嬉しいですね(笑)。

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