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ニチイ学館のMBOの狙いは何か?

2020.05.12 カテゴリ: M&A企業の業績分析企業経営での留意点

1.ニチイ学館によるMBO

 今回のコロナウィルスによる緊急事態宣言業績的にはとにかく神経をすり減らすような日々を送っていらっしゃる業態の一つに医療・介護があると思います。そういった意味ではこのタイミングでの医療・介護およびその分野での人材育成を手掛ける㈱ニチイ学館のMBO(経営陣による買収)は驚きでした。

 もう少し細かく言うとベインキャピタル主導の経営陣によるMBOで社外取締役でもある杉本勇次氏が代表を勤めるベインキャピタルが買収自体は主導します。ベインキャピタルは大江戸温泉物語や雪国まいたけ最近では東芝メモリー(現キオクシア)の買収で有名です。

 杉本氏が役員として加わったのは2015年なのでおそらく別に今回のMBO含みで就任したわけでは無いと推測されます。やや社外取締役がMBOを主導するというのは複雑な印象を持ちはしますが、経営陣からスポンサ―として指名されるという事はかなり信頼が厚かったのは確かでしょう。

さて、ニチイ学館とはどんな企業なのでしょう

2.ニチイ学館のビジネスモデル

 ニチイ学館は医療事務講座や介護職員研修など講座ビジネスで人材を育成してその人材をもとに医療介護サービスなどを提供するモデルです。他社が人材不足に苦しんでいる中、比較的人材採用コストは低いのではないかと思われます。また、キャッシュポイントが人材育成と医療介護サービスの2つあるというのは強みと思われます。

 事業は人材育成、医療関連、介護をの3本柱としており、基幹事業は上記に加え保育としています。加えて、バランスサプライ事業としてヘルスケア(家事代行)、教育(英会話教室)、セラピー(犬専用グルーミングサロン・ホテルなど)を展開、その他にグローバル事業として中国、オーストラリア、カナダ、フィリピンなどに進出しています。

このような事業展開していますが、さて業績はどうなのでしょうか?

 

3.ニチイ学館の最近の業績

 経営成績としては2016年3月一度赤字に転落した以降は4年連続増収増益(経常利益ベース)今期(2020年3月期)も売上2979億、経常利益約75億で一見業績的には問題なさそうです。

 しかし、セグメント別にみると2020年3月期では医療・介護(人材育成は左記の2部門に入っている)で500億程度の営業利益を挙げたものを他のヘルスケアなどが約200億損失で食いつぶしています(保育は3億程度の小幅の黒字)。特に教育では英会話教室GABA(マンツーマン英会話)を2011年買収し、その後COCO塾というグループレッスンの英語教室も開設しましたが、赤字が続きです。特にCOCO塾は子供向けはすべて閉鎖して2018年GABAと統合されました。

 キャッシュフロ―をみるとフリーキャッシュフローは大幅プラスの状況、設備投資があまりされていない状態が何年も続いています。建物の償却率(減価償却累計額÷建物)は60%と老朽化が目立つ段階に来ています。

 全体的に業績は良好ですが、短期志向な傾向があるかもしれません。

4.今回のMBOの狙い

 骨子としては大胆な構造改革を行うので、機動的な運営が必要なこと、短期的には業績は悪くなり株価が低迷すると考えられることがMBOの理由として挙げられています。

 ただし、株主構成としては創業者一族で42%をすでに握っているので、あまり株主対応は難しくないです。一方、今回代表取締役副社長であった寺田大輔氏は代表権から外れるようなので、何かしら創業者一族の間での対立があった可能性はあるでしょう。

 また、介護、医療、保育の3事業については今後の対応が丁寧に記載されている一方他の事業についてはほとんど言及がありません。そういった意味ではこの3事業に集中し、他の事業については大胆に整理縮小していく可能性は十分考えられます。今までの多角化の責任をとれ…云々など上場企業ですとかなりいろいろと面倒なのでいったんMBOして腰をすえて集中していきたい、そんなことかもしれません。

 

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