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コロナ禍でも好調なオープンハウスの秘密

2021.01.20 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

1.コロナ禍で苦しむ業界の中でも生き残る

 コロナ禍で苦しむ業界として飲食・旅行・運輸が取り上げられています。一方でそこまでは深刻ではないもののやはり、かなり苦しんでいる業界は他にもあります。今回は住宅業界を見てみます。新規住宅着工件数の20年度上期(4~10月)は月80万戸くらいで推移して前年度費マイナス10.9%と落ち込みました。このコロナの中、新しく家を買おうとか建てようとかなかなか勇気はいるものです。しかし、リモートワークの推進により新しい住まいの形を模索する動きもでているようです。例えば、やはりリモートワークで家族が全員家にいるので広いリビングがほしい、一人で仕事ができる空間がほしいなどです。

 この動きにうまく乗れたといわれているのが株式会社オープンハウスグループです。戸田恵梨香さん、松田翔太さん、角田晃広さん(「東京セントラル証券」の営業企画部の三木重行役の人)を使ったCMで好立地な住宅をアピールしています。2020年9月期の業績も売上高5,759億円(前期比6.6%増)、営業利益621億円(同7.5%増)、経常利益773億円(同40.8%増)、純利益594億円(同51.0%増)と増収増益、8期連続して過去最高の売上高、利益を更新して絶好調といえるでしょう

 調べてみると要因の一つは狭い土地、不整形な土地での住宅建築にノウハウがあることです。規制が変わって、木造三階建てのビジネスができるようになったのですが、意外にそのあたりに特化しているハウスメーカ―はないようですが、オープンハウスはここに強く都内の狭め・不整形の好立地に上手に家を建築することで人気を集めています。

 そのためか首都圏中心というドミナント戦略をとっており、このあたりも成功につながっているといえます。ただし、最近は名古屋にも進出、これがどのように将来の業績につながるかは少し見てみないとわかりません。さて、ここでは主として財務面からこの好調を追って見たいと思います

2.拡大路線

 財務的な推移を見ていると、2018年9月期まではかなりイケイケの拡大路線でした。利益は出ていますが、営業キャッシュフロ―はマイナスの年が多いです。2014年~2018年毎年増収増益ですが2016年9月期を除いてすべて営業キャッシュフロ―はマイナスです。簡単に言うと、どんどん手元の現金は資金調達をしない限り減っていく状況で財務的にはかなりリスクの高い経営でした。利益が出ているのに営業キャッシュフロ―がマイナスなのはほとんど不動産物件在庫の増加です。不良在庫などではない健全な在庫であれば成長期にはあることなのですがややリスクは高くなっていました。

 2018年9月期には自己資本比率27%まで低下、営業キャッシュフロ―がマイナスの部分は借入金で補っているので有利子負債は約2280億でDEレシオ(有利子負債÷株主資本)は2倍以上とかなり高い水準となりました。 

 2018年新築分譲施工ホークワンを買収、2020年には投資用マンションの企画販売している東証一部上場プレサンスコーポレーションのオーナーから2020年4月に譲渡を受け持分法子会社化、その後TOB(株式公開買付)をして先日1月15日成立して子会社化し、おおむね64%程度保有の連結子会社としました。

 このようにかなり強気な拡大路線をとっていたようですが、2018年9月期以降財務的には少し違った方向に舵を切っています

3.財務体質の変化

 実は2018年9月期以降は少し変化が出てきています。2019年9月期から営業キャッシュフロ―は2年連続プラスとなりました。投資も営業キャッシュフロ―の範囲内で行っているので、フリーキャッシュフロー2年連続プラスになりました。ここ2年は要するに借入に頼らなくても自己資金でビジネスを回しているわけです

 公募増資と自己株式の処分でを2020年8月に行い約440億資本を増強、当期利益が約594億なので合わせて1000億近く純資産が増加してかなり財務的安定性が増し、その結果し、自己資本比率も41%と安定的なレベルまできました。その一方でROE32.1%、TSR(株主総利回り)も開示しており2015年比で443.1%であり、成長と安定の二兎を追えている感は強いです

 ポイントは在庫でしょう。こういった住宅業界は扱う商品の単価が高く建築から引き渡しまで時間がかかるので、かなり在庫が資金繰りを圧迫、今までも好調に見えていたのに在庫の増加に資金繰りが耐えられなくなり破たんするということはしばしば生じていました。実はこの会社も在庫回転日数(在庫÷売上原価)2018年9月期は286日ありました。要するに286日資金が在庫として寝ていたわけです。ハウスメーカーが100日くらい、分譲マンションメーカーが1.5年~2年くらいの在庫回転日数なので、オープンハウスの場合マンションが40%程度あるので非常に悪いというわけではないですが資金繰りを圧迫していたことは確かでしょう。

 ところが2020年9月期は販売不動産(仕掛含む)の合計は2020年9月期で約2372億で一方売上原価は4816億円で、いわゆる在庫回転日数を計算すると約180日で半年分の在庫となりました。回転日数を100日近くも少なくしたということは、この2年間でかなり在庫も圧縮したということです。好業績の一方で、ここ2年くらいで財務体質も見直した形跡があり、成長と安定性をある程度両立させつつあるといえるでしょう。

 

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