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売り手市場で日本企業は優秀な若手を採用できるか?

2019.04.08 カテゴリ: 人の育て方企業経営での留意点

1.最近の売り手市場の動向

 先日の日本経済新聞で売り手市場を反映し初任給を上げる企業が多いとの記事が載ってました。例としてファーストリテイリングが初任給を21万から2割程度上げ、25万円にするなどの話がでていました。一方不人気ぶりが目立つのが国家公務員総合職(旧一種)試験で昨年はついに受験者が2万人を割ったと話題になっていました。

 3月の終わりごろ、私が若手弁護士と若手会計士を対象としたワークショップのMF(メインファシリテーター)を行った際、ある若手弁護士から以下のような話を聞きました。彼は国家一種合格の元財務官僚ですが同期はもうすでに半分近く辞めているとのことで、彼もやめて弁護士になったそうです。財務官僚(私のころは大蔵官僚)などと言えば皆が羨望するエリート中のエリートでした。ところが、海外留学なども留学後に辞めにくくなるので希望者が少ないとのことでした。

2.官僚的エリートの育て方

 以前確か大蔵官僚の一種合格組は6~7年くらいで税務署長となって赴任するという制度がありましたが、前述の彼の話によればその制度はなくなったそうです。そういえば確か歪んだエリート意識を植え付けているなどと批判されて無くなった気がします。そういえばある税務署の方が「バカ殿研修」などと言っていたのを思い出しました。たいてい次の税務署長就任が内々定している優秀なたたき上げ副署長のもとにこういった若手官僚が赴任し、副署長はこの若手に変な傷をつけずに大過なく過ごせるよう御守りをするため呼ばれているとのことでした。

 昔の日本国軍の兵学校も確かその時の席次が一生ついて回りその時の成績優秀者は将官となって出世していきますが、ぱっとしない成績の人間は佐官どまりで終わってしまうのと同様で、確か官僚制度も入所時の国家公務員試験の席次が優秀な人間は大臣官房などの中枢に配属され良いルートを進むのに対し、成績があまり良くない人間は外局などに最初から配属されるという話を聞きました。

 民間企業も見込まれた人間は本社や銀行の支店でも丸の内や日本橋など大手企業が軒を重ねているところでそうでない人間は地方支店などといわれていました。ちなみに私も地方のぱっとしない支店スタート組でした。成績も悪いし、全然人事部からは見込まれていなかったのでしょう。

3.欧米グローバル企業のエリート教育

 欧米グローバル企業は日本企業以上にエリート教育はさかんです。私は以前GEのエリート教育プログラム入社試験の面接官になったことがあります。驚くのは面接官は面接するためのトレーニング、それもロールプレイイングなども入れた本格的なものを受講させられることです。受験生も東大法学部卒業予定でほぼTOEIC満点、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)でほぼオールAといった劣等生だった私ごときが面接するのがはばかられるような超優秀な方ばかりです(残念ながら今はそんな人はGAFAや外資系コンサルなどに行ってしまうと思いますが)。こういった人たちに各方面から答えるには厳しい質問を投げかけセレクトしていくわけです。

 ただ、こういった選ばれたエリートたちが大切に傷がつかないように育てられるかというと必ずしもそうではありません。中枢の部署に生かされるよりもむしろ世界各国の子会社に赴任させられます。研修などはかなり充実していますが、現場では課題を見つけ何かしら解決することを求められます。部長職以上の管理職が面倒は見ますが一方彼ら彼女らを査定する役目も果たします。大過なく過ごすとほぼアウトでなにかしら実績を短い期間であげなければなりません。そのためには失敗を恐れずチャレンジしていかないといけません。こういったエリートたちが2年間で半分以上脱落してしまうという、非常に厳しいエリート教育です。そして同様の厳しいセレクションがその先も待っています。

4.日本のエリート教育は何がダメか

 日本の以前のエリート教育の場合、最初にエリート路線に乗ってしまえば、あまり失敗もせず、偉い人達の間をうまく取り持っていけば出世が約束されたという面があったと思います。一方欧米系だとエリート路線に乗ると大抵過酷な仕事が待っていて、それを乗り越えたひとにぎりの人間だけがエリート街道をのし上がっていくというものです。したがって、若いうちから様々な厳しい体験をつめますから30代後半から40代前半には経営陣の一員となって活躍できるわけです。

 日本の企業でこのようなエリート選抜制度を入れるべきかどうかというのは私もわかりません。しかし、実は少なくも将来見込みがある優秀な若手は初任給が数万高いといったセコイお金よりもどんどん挑戦的で自分を成長させるような仕組みの企業を求めているのではないかと思われます。そのあたりに昨今の東大生の官僚離れと対照的な外資系コンサル人気が表れているのではないかと思われます。

 大学卒業時劣等生だった私もある外資系企業に入り過酷な競争に放り込まれたおかげで、なんとか人生を厳しいながらも楽しく自由に乗り切ってきた面あるかと思います。そのあたりは(やや宣伝ですが)以下の著書手に取ってみれください。

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