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コロナ禍でセブン&アイの業績はどうだったか

2021.04.14 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

1.セブン&アイ決算概観

 東京では3月22日に緊急事態宣言が解除されたにもかかわらず、4月12日から蔓延防止措置が発令され逆戻りしたように感じます。ただ、昨年の緊急事態宣言が発令された同時期と比べると、夜の街以外は電車もそこそこ混んでいてあまり普段と変わりが内容な気がします

 そのような中で、4月9日セブン&アイの決算が発表されました。コロナ禍で大きな影響を受けたと思われる小売業の決算は2月が多いのでその一つの代表ともいえるセブン&アイの決算を見ていきたいと思います。

 営業収益をみると前期約6兆4436億円から13.2%減少で約5兆7667億円と6769億円の減少、営業利益は13.7%減の3663億円(579億減)で最終利益は17.8%減の1792億円でした。

 今回の決算では特別損失を約1090億計上したことが一つの特徴でしょう。そのうち約405億は新型コロナ感染症に関する損失として開示されています。これには感染拡大防止費用や加盟店への見舞金といった直接的な費用だけでなく休業期間に発生した固定費(人件費・地代等)240億が計上されています。日本会計士協会もガイドラインを出し、休業期間中の固定費については特別損失の要件を満たすと述べています。のこの集計方法の恣意性などは監査法人が厳しめに見ていると思われるので問題は無いでしょう。

 全般的にコロナ禍で苦戦はしたことは確かです。少しセグメント別に見ていきましょう

2.セグメント別の状況

 営業収益で金額的にマイナスが大きかったのは海外コンビニ事業で営業収益の減少は5485億円と減少のうち80%を占めました。一方国内コンビニ事業の営業収益の減少は504億円でした。ちなみにSpeedwayの買収の完了は未定なのでまだ業績には反映されていません。しかし、営業利益で見ると579億円の営業利益の減少のうち223億は国内コンビニ、182億は専門店事業からきており、海外は39億程度の減少でした。しかも為替の影響が24億なのでほぼ利益ベースではトントンでインパクトは小さかったです。

 専門店事業はバーニーズジャパン、デニーズ(セブン&アイフードシステムズ)など店舗型アパレル、外食といったコロナ禍で休業・営業時間短縮などでもっとも苦戦した業態があったのでこのあたりは理解できます。

 一方逆に好調だったのがスーパーストア(イトーヨーカドーやヨークベニマルなど)で83億の営業利益の増益で特に食品スーパーである
ヨークベニマルは好調でした。

 さて、営業収益の減少のほとんどは海外コンビニだったのですが、利益ベースではほとんど影響を与えず国内コンビニの影響方が大きいこのあたりもう少しl詳しく見ていきます

コンビニ事業の場合、営業収益は店舗の売上ではなく直営店売上+加盟店ロイヤリティ(海外は+ガソリン売上)です。ただし、加盟店売上も開示しています。

海外事業売上の今期3兆4071億円を見ると以下です
 直営店売上4071億円
 海外加盟店売上 1兆5053億円
 ガソリン売上 1兆4528億円

 海外はほぼ米国がほとんどでガソリンスタンドを併設しているお店も多いので半分はガソリン売上です。今回の減収のほとんどはガソリンの売上減少でした。おそらく米国国内の移動がコロナ禍で減ったことが原因かもしれません。

 海外コンビニで既存店商品売上(ガソリン除く)のドルベースは昨年比プラスでしたが、為替レートは3円程度円高になっているのでマイナスには作用しています。一方、ガソリンの粗利がガロンあたり23.95セントから32.6セントに大幅に改善しました。この粗利率の大幅な改善がガソリン売上の大幅な減少を補い海外事業として営業利益はほぼトントンになったわけです。

 一方国内はどうだったのでしょう。国内の売上はチェーン店売上4兆8706億円のうち、フランチャイズ店売上 4兆7875億円ですからほとんどフランチャイズ店で直営店はほとんどありません

 セブン&アイの国内コンビニの営業収益8503億円の内7630億円はフランチャイズのロイヤリティです。つまり国内コンビニ ロイヤリティ収入がほとん土なわけですから売上収入減はかなりの部分営業利益に直接ヒットします。そのため減益の半分近くは国内コンビニから来ていたわけです

3.キャッシュフローの状況

 セブン&アイの場合、基本的に現金商売なこともありキャッシュフローは極めて堅実でした。営業キャッシュフロ―はプラスでその範囲で投資をして財務キャッシュフロ―は配当で出ていく程度でした。今期は社債の発行を約3500億、借入を6162億行い約1兆円ほどの資金を手当したこともあり、財務キャッシュフローは約6900億円の流入となりました

 コロナ禍を乗り切るために手元資金を厚めにとったのとと買収資金の手当てを行ったのだと推測されます。現状2020年8月の買収の発表から買収手続きが完了せずおそらく払い込みは夏くらいになるのではないかと想定されます。このインパクトが来期の決算にあらわれてくるのでこの買収の成否は興味深く見守っていきたいところです。

 

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