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ソニーはどうやって復活したのか?

2020.01.22 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

目次

1.ソニーの現状

 ソニーが業績好調です。10月30日に発表されたソニーの2020年第2四半期決算、売上高4兆0479億円、営業利益5098億円、
純利益3400億円でした。前年同期比で売上高、純利益はわずかに下がったものの、営業利益は3年連続で過去最高を更新しています。一時期は毎年のように赤字を計上し、株価は2012年11月15日772円まで下落しました。今年の1月14日には8113円となり株価は10倍以上、時価総額も10兆円を超えました。
 

 この好調の要因としてよく言われているのが、ゲームと半導体事業の好調、ゲームが特に課金モデルとなりハード売りよりも毎月課金で積み上げる形いわゆるサブスクリプションモデルになったのが好調の原因と言われているようです。

 もう一つとしては選択と集中、一方2014年2月のパソコンVAIOと2016年10月の電池事業の売却でノンコア業務を切り離し、上記のゲームと半導体に集中したといわれています。

 当然この部分も大きな要因だとは思いますが、実はもう少し地道な要因もあるのではないかと想像します。そのあたり見ていきましょう。

2.オーソドックスな改革

年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
売上 71,775 64,931 67,955 77,673 82,159 81,057 76,033 85,440 86,657
営業利益 1,967 -656 2,265 265 685 2,942 2,887 7,349 8,942
純利益 -2,612 -4,550 415 -1,283 -1,260 1,478 733 4,908 9,163
営業キャッシュフロー 6,138 5,163 4,762 6,641 7,564 7,464 8,075 12,540 12,587
投資キャッシュフロー -7,143 -8,829 -7,053 -7,115 -6,396 -10,279 -12,550 -8,231 -13,074
フリーキャッシュフロー -1,005 -3,666 -2,291 -474 1,168 -2,815 -4,475 4,309 -487
従業員数 168,200 162,700 146,300 140,900 131,700 125,300 128,400 117,300 114,400
社長 ストリンガー ストリンガー 平井 平井 平井 平井 平井 平井 吉田
CFO 加藤 加藤 加藤 加藤 吉田 吉田 吉田 吉田 十時
売上原価率(金融除く) 76.6% 79.4% 78.8% 76.9% 75.0% 74.4% 73.8% 71.7% 70.5%
売上販管費率 20.9% 21.2% 21.4% 22.3% 22.0% 20.9% 19.8% 18.5% 18.2%

  2011年度、ストリンガー氏が退任するあたりが業績のどん底といえるでしょう。このあたりは売上原価率が79.4%、売上高に対する販管費の割合も21.2%と極めてコスト高でした。それが現在は売上原価率が70.5%、売上高販管費率も18.2%であり大幅に改善しました。

 ここから見えてくることは、わりとオーソドックスにきっちり粗利を確保する、固定費も削るといった側面が見えてきます。そしてやはり2014年4月の吉田CFOの登場以来売上原価率が76.9%→70.5% 売上販管費率22.3%→18.2%と劇的に改善していますから、数字はファイナンス主導のどちらかというと欧米的な業績改善な面が強いといえるでしょう。あくまでも仮説ですが、2014年の吉田体制の1年目はフリーキャッシュフローがプラス、これは投資をいったん絞ったことがいえます。VAIOを売却、コスト構造を見直す一環としていったん投資を凍結したのではないかと想像されます。

 象徴的なのはテレビ事業の構造改革でしょう。今まではとりあえず売上をあげればコストをカバーできるのだと量を追っていましたが、一気に規模を追わず事業規模を小さくして固定費を下げる方向に動きました。損益分岐点を下げて利益を出す形に改めたのです。

 一方、同業他社だとパナソニックは売上原価率はほぼ一緒ですが、売上高販管費率は23.5%と高く、まだまだ高コスト体質が残っているこのあたりが、まだ業績的に苦しんでいる一つの要因とは言えるでしょう。

3.今後の展望

 アクティビストであるサードポイントなどは半導体部門を分離と保険事業の売却、そしてエンターテインメント事業に集中するように求めています。理由は他の事業との相乗効果があまりないということのようです。正直その相乗効果のあうなしはわかりません。ただし、サードポイントは2013年にはエンターテインメント事業スピンオフの要求をしていますから、正直こういった人たちは会社を単なる「投資ポートフォリオの入れ替え」くらいに思っている気がしてなりません。

 ただ、吉田CFO(現在CEO)中心に会社はかなりスリム化しましたが、これからの成長シナリオはどうなのでしょうか?私のイメージとしては、ゲーム・エンターテインメントを中心として様々なサブスクリプションモデルでどんどん顧客を囲い込んでいくといった方向性が見えています。その中で確かに半導体事業というのは素人目には異質に映ることは確かです。このあたりどう進んでいくのかが面白いところかとは思われます。

 

 

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