日本企業ではなぜ在宅勤務ができないか?
2020.07.07 カテゴリ: グローバルビジネス、企業経営での留意点、働き方・仕事術、勉強術・仕事術・心がけ。
目次
1.米国での働き方
また、コロナ感染者数が都内で増加の様相を示しています。一方で特に日本企業の場合在宅勤務が欧米企業に比べて進んでいないという話を新聞誌上などでみられます。一つの理由として家が狭いとか、IT化が進んでいない、顔を合わせることを重視する文化などといわれています。ここでは自分が米国企業で働いていた経験から働き方という側面から私見を述べたいと思います。
私は、以前GEのコネチカット州スタンフォードの金融部門本社でGEクレジットカード事業の担当者として全米の事業計画の取りまとめと分析をやっていたことがあります。この仕事ではクライアントのアカウントマネジャーと連絡を取り合いながら仕事をしていました。私のような、マネジャーはすべて個室、アシスタントとスタッフは私の上司のVP(ヴァイスプレジデント 直訳は副社長だが日本では部長級)のあたりにある程度固まって席がありました。
アカウントマネジャーは顧客の比較的そばにオフィスがあるので顧客だったウォルマートだとアーカンソー州、GAPだとサンフランシスコなどバラバラにいました。したがって、会議と言っても当時は電話会議システムを使っての電話会議でした。オープンスペースで電話会議するとカフェで携帯電話で話すようなものですから大変迷惑です。したがって、部屋のドアをしめてこもって仕事をすることは多かったです。同じオフィスにいる同僚や上司、スタッフと話すことよりも多分電話会議の時間の時間の方が長かったです。
このような仕事であれば、会社の自分のオフィスが自宅の部屋になって、当時の電話会議はWeb会議に置き換わるだけですから在宅勤務あまり大きな支障なくなくできただろうというのはなんとなく想像がつきます。でもなぜこのような働き方ができるのでしょうか?私が米国にいたのは2000年初頭ですから、今ほどIT化は進んでいない時代でした。
2.2つのホワイトカラー
実は、本社には非常に少人数のアシスタントを除くと幹部候補生のスタッフとマネジャ―以上しかいません。一方「事務作業的な仕事」はCOE(要するに事務センター)に集められそこで行われていました。本社にいる従業員は広い意味でスタッフで事務センターにいる大半はクラーク(事務員)で同じホワイトカラ―と言っても全然違います。そこにはホワイトカラーの明確な二分化があります。
スタッフは極端な話、上司に1を言われたら10くらいの仕事を目指してやっています。本社スタッフは世界中から集められた上昇志向の強い人間が多いので、上司は簡潔で正確なインストラクションとこういった人たちがどんどん勝手に進めてしまう仕事の交通整理が重要です。残業などという概念はなく、やるべきことがあれば平気で夜中まで仕事しますし、そうでなければさっさと帰宅します。そもそも上司は仕事の成果物は当然見ますがそれ以外の積極的な管理などはあまり必要がありません。私も軽い調子で自分のスタッフに仕事をお願いしたところほぼ徹夜で翌朝仕上げてくれ、ちゃんと時間の余裕があること話しておけばよかったと後悔したこともあります。スタッフ部門は多少横のつながりという面では在宅勤務で支障は出る可能性はありますがそもそも仕事の環境としてあまり在宅勤務でも問題がありません。
逆にクラークである後者は逆に1言われたら1以上のことはほぼ絶対にやろうとしない人が多いですし、時間が来たらぴったり帰ってしまいます。結構欧米人のイメージとしてこういった人の働き方が日本ではあるようです。ただし、こういった事務センターは当然マンハッタンやロスのような地価と人件費の高い都会にはなく、田舎や海外にあり、とにかくだだっ広い余裕のあるスペースです。こういう人たちは高度なマニュアル化と逆に仕事ぶりの監視が必要です。基本的に定型業務なのでITの進化でかなり在宅でも可能なのではないかと想像されます。
欧米企業は労働時間が短いのに給料が高いというイメージ持っている方多いですが、決してスタッフ部門の労働時間は短くないです。ただ、日本のようにダラダラ残業はしないので短い可能性はありますが。そして、スタッフ部門は確かに日本企業よりはるかに高給で私のイメージだと米国の一般的企業で約2倍です。
一方クラーク(事務員)は同じ仕事をやっている限り昇給しないし、労働時間は長くないですが一般的な日本企業より給料は安いです。このようにホワイトからーも2極化しています。ただ、物価の安い地域にあるので一定レベルの生活は可能だったと思われます。しかし、IT化、特にRPAなどによって仕事が奪われるのはこの人達だと思われます。
では日本企業はどうなのでしょうか?
3.オンライン化で日本企業に起こること
日本企業はこのスタッフとクラークの分化はあまり明確ではない気がします。意外と機械的なチェック・確認・集計のような仕事をスタッフ部門の人たちがやっているケースが多いです。米国企業ではおそらくそのような仕事はIT化するか事務センターのようなところでまとめてやっていますから、このあたりがホワイトからーの生産性の低さの一要因かもしれません。
スタッフとクラークの未分離によって仕事に対する意識が中途半端な人が多いのも特徴です。ホワイトカラ―のスタッフ部門は本来自律的に働ける人たちですからいわゆる指示待ち族などはスタッフ部門にはいないはずです。
日本の大部屋的働き方、確かにコミュニケーションの密度など利点はあると思います。ただ、オンライン化が進めば、ビデオ会議は頻繁になるので少なくとも個室的なモノは必要でしょう。本社では、比較的少人数の「スタッフ」のみ、引き続き大部屋かもしれないですがフリードレスで一人当たりのスペースは今までの2~3倍、ビデオ会議用の小部屋が多数、こんな感じの本社になっていくのではないかと思われます。そして、在宅勤務と本社勤務の半々こんな働き方に移行していくのではと思っています。
今回のコロナに伴うオンライン化は一方で「スタッフ」的な人「クラーク」的な人を明確にしつつあるような気がします。管理職もスタッフの長として自律的な働き方を進められる人、管理のみが仕事でクラークのスーパーバイザー的な人に分かれてしまうのと思います。とりあえずネットなどで見る限りは後者が多すぎて困っているようですが。
」