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厚労省統計不正にみる隠ぺいはなぜ起こる

2019.01.28 カテゴリ: 会計・税務会計不正社会問題

1.厚労省の統計不正の問題

 簡単に申し上げると、「厚労省が勤労者統計作成の際、500人以上の事業所については全件調査が義務付けられているのにも関わらず東京都について勝手に一部抽出にしてしまった。そのためデータが歪み実際よりも統計から推定された賃金の水準が低くなり雇用保険などで給付金額が実際よりも少なくなった」というのが問題です。問題の所在は「勝手に統計の手法を変えた」こととそれがバレそうになったので「組織的に隠ぺいしようとした」の2点かと思われます。この問題で「統計に対する考え方」や「厚労省の組織に対する批判」は結構ありますのでそれ以外の視点で見ていきます。

2.隠ぺいはなぜ起こる-犯人探しにやっき

 厚労省にかかわらずどの組織でも隠ぺいがおこる根本的な原因は「犯人探しにやっきになる体質」と「告発者が撃たれる体質(Shoot the messenger)」でしょう。

  最初の「犯人探しにやっきになる体質」ですが今回も第三者委員会の結果20人あまり厚労省の方が処分を受けましたが「お手盛りの甘い処分」などと声が上がっています。日本の組織不正では欧米とは違い「時代劇の悪代官」のようなわかりやすい誰かが主体的にやっている例はまれで、あうんの呼吸でやっているので犯人探しは無駄です。「人を責めるのではなくプロセスに焦点を当てろ」だと思います。

 あくまでも個人の感想ですが私のクライアント先に各省庁からくる統計調査の依頼膨大です。正直言って同じような調査ですし、すべて手書きまたは手インプットです。苦情が東京都に寄せられるのは十分理解できますし、そもそも統計作業が各省庁縦割りで重複が多く膨大なリソースの無駄です。例えば税務関連のデータを国の統計調査に匿名化して使用する許諾さええればほとんどすべての財務関連の統計は不要です。その一方で統計関係の各省庁の人員は非常に少ないそうです。こういった根本的問題を見ずに厚労省のお役人だけ責めるのはピントが外れています。

3.隠ぺいはなぜ起こるー告発者が撃たれる体質

 また処分にしても現事務次官も訓告とはいえ処分を受けるなどいわゆる「告発者が撃たれる体質(Shoot the messenger)」でバレたときにその場に居合わせた人間が追及されて責められるのでは隠ぺいするのは当たり前でしょう。野党が根本厚労大臣をつるし上げようと躍起になっているようですが、特別監察委員会の点では問題はあるとは思いますが少なくもこの統計不正には全く関与しているわけではないので全く無駄です。「その場に居合わせた人間が追及されて責められる」ショーを行うのは社会的にも望ましくないです。むしろ「その場に居合わせた人間」は面倒な過去の調査を指揮しなければいけない人間なので本来は皆で支援しなければならないはずです。

 少し違う話ですが、自分は外部CFO業務を受託しますが、最初に行うのは業務プロセスの確認・整備と重要な基本数値・指標のチェックです。ただ、残念なことに業務プロセスや基本的な数値・指標に大きな問題点が発見されるケースがほとんどです。ですからクライアントの方には全面的支援と意図的な犯罪行為等でない限り現場の方々を責めないように事前にお願いして念押しします。こういった安心感がないとどんな会社の現場の方々も隠ぺいに走ってしまいます。どんな組織もミスがゼロはないので「絶対的なミスゼロ」よりも「ミスが起こった時即座にに解決する」法を目指すべきなのです(人命等が関わる場合は例外として)。

特別監査委員会の調査の在り方についても一言あるのですがそれは次回で。

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