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東証の新しい事業計画の開示とは~第一号WACUL

2021.03.17 カテゴリ: 企業経営での留意点経営戦略

1.東証の「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示について」

 2月15日東証よりグロース市場における「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示について」が発表されました。これは、グロース市場における新規上場と決算日後3か月以内に開示しなければならず、東証マザーズの「投資に関する説明会開催義務」とJASDAQグロースの「中期経営計画の策定義務」を一本化したものといえるでしょう。

 簡単に言うと押さえないといけない内容を明確化したものです。確かにマザーズの説明会の資料などを見ても本当にかなり資料の品質に差があり悪く言えば「義務さえ果たしておけばそれでよし・・」レベルの説明会も存在する印象がありました。これについては数十ページにわたって説明資料とQ&Aなど詳細に述べられていますが、ポイントだけ述べると説明に必要なのは以下でしょう

・ビジネスモデルとキャッシュポイント(どんなモデルでどのように稼ぐか)
・3C(自社、顧客、競合)の分析、SWOT(自社の強み弱みと外部環境の機会と脅威)のうちSOT(弱みは無し)
・事業計画(定性と定量の計画、進捗度、KPI)

これによって、どんな開示がなされたのだろうという事でまずは、実際の例を見てみました

2.WACULの開示 ―ビジネスモデルとキャッシュポイント

 2月19日に上場したため、この開示第一号になったWACULを見てみました。第一印象としては大してITの専門的知識を持っていない私でもわかるような記載になっているでした。あくまでも想像ですが、第一号ですから、かなり東証も丁寧に指導したのではないでしょうか?では上記に従って見てみましょう。

 まずビジネスモデルとキャッシュポイントですが、Google Analiticstと連動したWeb戦略のコンサル会社といえます。AIを使ったプラットフォームを持っており、(AIアナリスト)、工数のかかるデータ分析の部分はそこで行い、コンサルティングは付加価値の高いDX実現のためのデジタル部門の組織開発や技術開発部分に特化しているのが強みのようです。AIアナリストの部分はサブスクリプション、顧客当たりの月次継続収入MRR(Monthly Recuring Revenue)をアップさせ解約率CR(Churn Rate)をさげ付加価値の高いコンサルティングも使ったアップセルで顧客生涯価値 LTV(Life Time Value)アップを狙っていいます。

 要するに一時収入ではなく末永く毎月課金をしていくモデルでそのためには新規獲得も重要ではありますが顧客満足度を高めて解約率を下げることはより重要です。そして、既存顧客により適切な商品・サービスを販売し(アップセル)どんどん一顧客当たりの長期的売上げを増やしていくというわけです。

3.3CとSWOT

 3Cは自社を取り巻く環境の分析手法といえます。そのうち顧客は中小企業から中堅企業以上にターゲットをうつしつつあるといえます。やはりある程度の規模の企業の方がDX投資に積極的でLTVは高くなるはずです。そしてDX市場の拡大は顧客層の拡大や既存顧客の一層の投資に寄与すると考えられています。

 WACULは自社の今までの蓄積による行動ビッグデータと自社独自のPDCAデータの組み合わせで参入障壁を作っています。前者は時間がかかるため競合他社が追い付くのは難しく、IT業界であるデータの独占で勝者丸どりに向かって進んでいます。ただ、DX市場では成長市場なのでどんどん様々な形での新規参入があり予想できない競合が出現する可能性は高い分野と考えているようです

 SWOTでのS(強み)はAIアナリストと今までのデータの蓄積です。O(機会)はDX市場の拡大、T(脅威)はGoogle Analyticsにかなり依存しておりGoogleの戦略変更の影響を受けるという点です。「象はアリのことを気にかけないが、アリは象のことを気に書けないと死ぬ」といえるので巨象であるGoogle の戦術転換で一気にオワコンになってします可能性が(かなり低いにしても)あるのはかなり脅威といえます

 W(弱み)については特に求められていないので記載されていません。おそらく人材はこの分野取り合いであり大手のITやコンサル会社に比べ弱みだと思われます。ただ、上場で知名度が上がればかなり解消されるのではないでしょうか

4.KPIと全体の所感

 KPIで重視しているのはLTVです。現状の一社当たり350万から430万レベルに底上げを狙っています。ようやく2021年黒字転換しますが、翌年は売上10億、営業利益2億を目指します。継続課金のサブスクリプションモデルなので割と収益予測は確実で目先の目標はかなり確実性が高いと私は思います

 投資家目線としてはわかりやすい内容になっています。アナリストレベルではなく、個人投資家レベルでもある程度と勉強している方ならば十分読みこなせて投資判断に役立つのではないかと思われます。大手企業の開示された事業計画を読んでいてもビジネスモデルが今一つピンと来ない企業や抽象的なチャートと(裏付けに乏しい)数字の羅列のケースも多いので、別に新興企業でなくてもできればこのようなわかりやすいレベルは目指してほしいと思われます。

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