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JTBはなぜ資本金1億円に減資したのか?

2021.03.01 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点会計・税務

1 JTBの苦境

JTBが先日資本金を1億円(現状2304百万)に減資するという発表が新聞紙上をにぎわせました。その前にも、昨年11月に発表された今年上半期の決算概要がコロナ禍で大幅赤字で、以下のように苦境が報じられていました。

売上高 6860億(2019年上半期) ⇒1298億(2020年上半期)
営業利益 64億⇒△711億
当期純利益 44億⇒△782億

 株主資本で1600億あるのですがで今回上半期で約半分が消失したことになります(1600億-782=818億)。下半期Go to Toravelで一時回復したかもしれませんが、おそらく緊急事態宣言でまた需要は蒸発、今期末では債務超過も考えられるような厳しい状況であろうと想像されます。そのため、この決算発表に合わせて新卒採用中止、国内店舗115閉鎖、6500人の人員削減、年収3割カットも発表され非常に大変な状況と思われます。

 ただし、倒産も考えられるといったレベルかというと以下のようにある程度資金の手当ては行っており、しばらくは維持が可能な状況と思われます

・三菱UFJ 500億 昨年4月30日 5年間で返済 ただし、1年半据え置きで半年ごとに分割返済
・三井住友 300億 昨年4月30日 2021年4月30日一括返済
・みすほ 600億のコミットメントライン

発表はされていませんががみずほからこのコミットメントラインで資金は調達しているだろうとは想像されます。ただ、この苦境コロナ禍がほとんでではありますが、そのまえから伏線はありました。

2なぜ苦境に陥ったか?

 当然コロナ禍で旅行需要はほぼ蒸発したような状況ですから、仕方ない面がほとんどです。ただし、実はコロナ前から問題は山積していました。一番の問題はそもそも低収益の事業もでるだという点です。コロナ前の2019年3月の決算でも1兆3673億円の売上に対し営業利益はわずか63億で0.46%の売上高営業利益率でした。最終利益(親会社に帰属する当期純利益)は減損(店舗の評価減などと思われる)もあり△151億でした。旧来のビジネスモデルからの脱却は図っていたようですが、スピード感にやや欠けていた部分はあります。

 その一つの要因としては、業態的にほぼ現金商売なことが挙げられます。そして旅行申込時に前受金の形で受け取ることも多いのでキャッシュ的には割と問題がなく、そもそも借入金も202億円(2020年3月末)と実質的には無借金経営の会社でした。要するに低収益だがキャッシュポジション的に
安定している会社なので、今目の前にある危機はないのです。

 加えて、有名企業ではあるのですが、上場会社ではなく大株主は公益財団法人日本交通公社(ちなみにこの交通公社の営業部門が独立したのがJTBの始まり)で内輪が株を持っているようなものです。株主も(たぶん)うるさくなく、そもそも大胆な改革を行うようなインセンティブは低い環境だといえるでしょう。

 そのような中でどうして今回1億円に減資などという大胆な案を出したのでしょうか?

 

3 減資のメリット

 1月23日JTBは資本金1億円に減資することを発表し、法人税法上中小企業になります。そもそも法人税法上中小企業になることのメリットは何?でしょうか。

 その前に「中小企業」というが実はその定義はお役所によって異なるという事を話したいと思います。例えば中小企業庁の定義ですと小売業とかサービス業とか業種によって中小企業の定義が異なります。この定義だとJTBグループが属するサービス業は資本金及び出資金の額が5000万以下または常時使用する従業員の数が100人以下なのでJTBグループが資本金1億円に減資しても中小企業の対象になりません。これは主として補助金の交付の際などの考慮事項になります。要するに目的に講じて「中小企業」の定義が異なります。

 法人税法上は単純に資本金1億円以下だと中小企業となります(資本金が5億円以上の大法人の100%子会社である場合などは除く)。これによりJTBグループだけでなくグループの子会社も資本金1億円以下が多いと思われるので、すべて「法人税法」上は中小企業となるでしょう。

 ここでメリットして目先一番狙っているものは繰戻し還付(ただし、コロナ特例で資本金10億以下まで一時的に拡充)でしょう。簡単に言うと損失を出した場合、前期に納付した法人税の一部または全部が還付される制度です。JTBの場合昨年の税引前利益56億円より今年の損失額ははるかに多いので、昨年納税した58億円のうち国税分は繰り戻し還付として還付され戻ってきます。

 もう一つは繰越損失を将来の利益と相殺できる仕組みです。そのためJTBも将来利益が出た場合、累積損失と相殺できます。例えば今期赤字が1000億だったとすると(今回の繰り戻し還付の部分除いて)約1000億程度黒字が積み重なるまで法人税はほぼ払わなくてかまいません。しかし、資本金1億円超の法人だと50%が限度です。例えば100億の利益がでても法人税法上の中小企業は法人税額はほぼゼロですが、1億円超だと利益の50%部分しか累積損失との相殺が認められず50億円に対して法人税が課せられることとなります。

 3つ目が地方税の外形標準課税です。これは赤字でも資本金に対して0.525%(東京都の場合)で事業税が課せられる制度で資本金が約23億だと約1100万の負担がありますが、この税金も資本金1億円以下の企業には適用がありません。こういったことで数百億円レベルで節税効果があるわけです

 通常の売上が1兆円を超える企業が中小企業?とは違和感を覚えますが、法人税法上のルールとしては問題がありません。以前シャープが同様のことを検討して論議を呼びましたが、その後も特にこのあたり改正といった話も出てこないですから脱法行為というわけでもないでしょう。ちなみにアイリスオーヤマなど資本金1億の実質的大企業だけど法人税法上の中小企業結構探せばあると思います。そういった意味でやむを得ない判断といえるのではないでしょうか?

 

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