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どうやって和民はひっそりと復活したか?

2019.08.21 カテゴリ: 企業経営での留意点経営戦略

1.渡辺美樹さんの記事

 久しぶりに忘れかけていた人の名前を見たという感じのニュースがありました。それは、5月29日に韓国の国会議員5人が日本を訪問したところ迎えたのが参議院議員初当選の渡辺美樹氏一人だったというニュ―スです。渡辺美樹さんといえば一時期ずいぶんブラック企業ということで叩かれた和民の創業者です。

 少し、その当時の経緯を思い出してみました。2008年居酒屋「和民」で入社2か月の女性従業員が自殺、その際7日間連続の深夜勤務を含む長時間労働、月140時間もの時間外労働が発覚しています。それに対して遺族が訴訟を起こした際、渡辺氏は「労務管理上は問題なかった」などの発言で問題となりました。それ以前も「たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理矢理にでも1週間やらせれば、それは無理じゃなくなる」との発言で話題になっています。平成25年にはブラック企業大賞を受賞するなどなどかなり「ワタミ=ブラック企業」というイメージ定着が定着しました。

 私は実は渡辺氏の意見に100%反対ではなく、ベンチャーの創業グループなどはこのノリはあるかと思います。ただ、「無理矢理にでも1週間やらせれば」のところは反対です。ヒトは「無理やりでも1週間自分の意思でやれば」いいですが「やらされれば」疲弊します。このあたりの感覚がサラリーマンがほとんどを占める大企業になっても変わらなかったのはまずかったと思います。

 

2.27年度の苦境

 このあたりから本業の居酒屋の苦境が明らかになってきました。26年3月期、27年3月期に連続して最終損失(親会社株主に帰属する純損失)を計上、特に27年3月期の決算では128億の最終損失で経営危機が話題になりました。既存店売上は前年比93.4%、不採算店舗100店余りの撤退、介護事業の入居率は90%程度から80%割れまで低下しました。その結果自己資本比率は7.3%とついに一けたまで落ちました。流動比率(流動資産÷流動負債)は44%(現金商売は多少低くてもよいが、100%以下は一般的には資金繰りがかなり苦しい)、短期借入金は110億増加し、ほぼ無担保借入だったのが54億が担保にとられました。

 とりわけ厳しかったと思われたのが財務制限条項の問題です。これが、入居金返還債務(老人ホーム途中退去の場合入居保証金の返還が必要だが、それの支払いについて銀行が保証するもの)が基準年の24年度の243億の純資産が27年3月期に約100億に低下して、財務制限条項の基準年の純資産75%以上を維持という条項に抵触、事前求償分(つまり先に保証部分の金額を払え)53億を銀行に払うことになってしまいました。ただ、これについては銀行と交渉して猶予してもらいましたが、おそらく28年3月までに劇的な改善を銀行から求められたと想像します。

3.どうやって転機は訪れたか?

 大きな転機は27年12月の介護事業の売却です。セグメント情報を見る限り27年3月期でもこの事業は24億の黒字であり、基幹事業の一つであったと思われます。ただし、一方この事業の保証金返還権に関する保証への財務制限条項、固定資産が必要で、居酒屋のような日銭商売と違い資金負担が重い、財務的には厳しい業種ではあります。この売却で264億の売却収入を計上、この介護事業が無くなったため財務制限条項も関係なくなり財務的には非常に軽くなりました。

 一方、ほぼ同時期の27年12月に東京地裁での懲罰的慰謝料も認め過重労働再発がないことを誓い、大きな転換を図りました。そして28年1月には労働組合も結成され国内最大の産業別労働組合UAゼンセンにも加盟しました。

 この結果28年3月期は78億の最終利益を計上、自己資本比率も36.9%と大幅に改善しました。27年3月期は流動比率が44%とかなり危険水域でしたが131%まで回復しました。

4.新たな取り組みと秘かな復活

 最近目立たないですがほぼ業績は回復し、危機的な状況からは脱したといえると思います。最終利益の推移をみると78億、△17億、1.5億、12億と回復途上にあります。平成30年からは既存店売上高は100%以上をキープしており、今年に入っても長雨が続いた6月を除き既存店売上は100%超えです。その秘訣として言われているのが「ワタミ隠し」です。いわゆる「ワタミ」の名前を介さない、「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」といった店舗を増やして「ワタミXX」といった店は閉鎖しているとのことです。確かに2018年の動きをみると 「三代目鳥メロ」(焼き鳥)123→140に増やし、ミライザカ(唐揚げ)102→154といった感じで大幅に店舗を増やしています。一方わたみん家19→0、和民・坐和民137→88といった感じで「ワタミ」の名が入った店は大幅に減らしています。

 確かに「ワタミ」という名前のブランドはかなり毀損しているので、創業以来のブランド名を捨てるというのは思い切った施策だと思います。「ワタミ隠し」などと揶揄はされてはいますが、経営者として思い切った手を打ったと思います。ただ、「ワタミ」の不振を単なるブラック企業叩きだけだったと思われると本質を見誤ると思います。もう一つの大きな原因はメニュー競争によりSKU(品数)がやたらと増えてしまい高コストになりつつあったことが根底にあると思います。

 「三代目鳥メロ」は焼き鳥専門店ですし、ミライザカは唐揚げ専門店です。したがって、お客も原則それを求めてくるので必然的にSKU(品数)も少なく店の採算もずいぶんよくなります。そのあたりの地道な取り組みが本当の復活の秘訣ではないのかと思われます。

 

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