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驚くほど多様化してきた物言う株主の最近の動向

2021.06.23 カテゴリ: グローバルビジネスダイバーシティ経営企業経営での留意点

目次

1.株主総会の季節がやってきました

 今年ある企業の社外取締役に就任することになったので久しぶりに上場企業の株主総会に出席します。すごく古い話ですが所詮昭和の人間なのでまだまだ株主総会では総会屋のイメージが高いです。最前列に体育会系の男性若手社員を配し「異議なし。議長進行お願いします!」などと大声が飛び交う場面が目に浮かびます。

 20世紀までは株主総会などは不祥事を起こした企業で総会屋が暴れ総会が3時間余りとなったなど新聞紙上をにぎわしたのが懐かしいです。総会屋、ほぼ死語になりましたが、以前は総会が荒れて、新聞記事などになってしまうのを恐れた企業が総会屋に高額の機関紙購入などの名目でお金を渡していました。総会屋も結構調査能力が高く、不祥事ネタなどを巧みにかぎつけて企業に近寄ってきました。

 このようなこともあり、会社法が改正され、会社法120条1項、「株式会社は、何人に対しても、株主の権利…の行使し関し、財産上の利益の供与…をしてはならない」が施行され、総会屋への金品供与が禁止されました。一方、名だたる大企業で当時の第一勧銀や野村證券など社長がこの違反で逮捕され、総会屋はほぼ根絶されたのではないでしょうか? ある上場企業の総会担当の役員だった頃、信託銀行から届く株主名簿に総会屋およびその親密先についてマークがついていたことを思い出します

 今は総会が近づくと話題になるのはアクティビスト、いわゆるモノ言う株主でしょう。一緒にするのは失礼だとは思いますが、大半の企業の総会担当者にとっては「総会屋がいなくなってほっとしたと思ったらアクティビストか・・・」というようなモノではないかと思われます。それではアクティビストについてその歴史を振り返ってみます

2.グリーンメーラーの時代

 最初は割安な株を買い占めて、様々な脅しでゆさぶりをかけて経営者から高値で株式を買い取らせる「グリーンメーラー」こんな形でアクティビストは登場しました。「ブラックメール」(脅迫状)とグリーン(ドル札の色)をかけて名前が付いたといわれています。個人的な感覚ですが、「合法的な総会屋」といったところでしょう

 有名なのはブーン・ピケンズ氏による小糸製作所の株に買い占めでしょう。1989年にいきなり20.2%の株の名義の書き換えをブーン社が要求、自身が推薦する取締役3人の選任、系列取引の見直しと増配を要求する株主提案を出しました。ただ、のちに麻布建物が買収資金を融資して裏で糸を引いていることが判明、目的が経営者から高値で株式を買い取らせるグリーンメーラーであることがわかり批判を浴びました。結局1991年には撤退宣言をピケンズ氏がだし、終結しました。

 これは(当時の)証券取引法で5%ルールが生まれる契機となりました。上場企業の発行済み株式数の5%超を保有する株主(大量保有者)は、原則として5%超を保有することになった日から5日以内に、内閣総理大臣に「大量保有報告書」を提出する義務を課する規程です。麻布建物の件が判明したのもこの5%ルールによるものです。

 グリーンメーラーは会社の経営には興味がなく単に高値で買い取らせる事しか興味がない人たちです。スティールパートナーズがブルドックソースの株式を買い占めた際にはリヒテンシュタンイン代表が「オレはソースが嫌いだ」と発言するなどもかなり世間の反感を買いました

 そのためか、こういった強引な手法は受け入れられず姿を消してきました

3.対話型アクティビストの登場

 グリーンメーラーが株式を大量に買い占める一方、対話型アクティビストは取得する株式は5%未満であることが多です。、グリーンメーラーが経営自体に対し別に興味を持っておらず脅迫まがいの強引な手法なである一方、対話型アクティビストは他の機関投資家なども賛同するような株主価値向上案を提案して時価総額の増大、増配等により着実に利益を得ていく手法です。他の機関投資家なども賛同するような案ですから、その企業の財務数値だけでなく経営戦略も詳細に検討して経営に提言する対話型をとるわけです。

 イメージとしては増配・自社株買い・事業再編の3点セットが多い感じです。有名なのがソニーとサードポイントの話です。2013年サードポイントはソニ―に対しエンターテイメント事業を本体から分離するよう求め、ソニ―から拒否、最終的には撤退しました。その後2019年またソニ―株を購入、今度はエンターテイメント事業を中心に置き半導体事業等を分離するよう求めています。 当然経営環境がかあれば言うことが変わるのは仕方のないことですが、平気で真逆のことを提案できるのはある意味感嘆します。

 仕事柄、こういった物言う株主の提案の原文を見せていただく機会ありますが、英語で書かれているため、よく言えばダイレクトな提言、悪く言うと非常に高圧的に感じます。これも最近は様々なパターンが出てきて驚かされます

 

4.新たなパターンの対話型

 一つは増配・自社株買い・事業再編の3点セットではなく、もっと長期的な価値向上を求めるアクティビストも登場しました。エクソンモービルの株主総会でアクティビストのエンジン・ナンバーワンが気候変動対策を迫り、環境科学者など2名が株主総会で選任されるということが今年起こりました。保有株はわずか0.02%なのですが大手機関投資家ブラクロックなどの大株主の賛同をえて一気にこの流れを作ったのです

 もう一つは日本のプラスティック製品製造業の天馬で起こったことです。ベトナムの贈収賄事件に絡んで創業者一族でその責任の所在で内紛がおきました。加えて監査等委員会設置会社なのですがそれに伴い現経営陣と社外取締役で占める監査等委員会が対立という事態がおこりました。経営陣は監査当委員会の社外取締役を一掃したいと考えていたようですがこの案を株主総会に提案するためにはその監査当委員会自体の同意を得ないといけません。

 ところがそれで登場したのはアクティビストでダントンインベストメントとオアシスが監査当委員会の社外取締役を一掃する提案を株主総会に提出しました。会社側とこのアクティビスト側で何らかの取引があったのではないかと日本経済新聞6月21日の法務欄では伝えていますが実際のところは不明です。

 このようにアクティビストは単純な株価対策ではなく、様々な形で企業に関与するようになっています。私はコンサルタントや社外役員として相談を受ける立場ですが経営陣にとっては単純な関与ではないのでいろいろと大変だとは思われます

 

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