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BluAgeの新卒大量内定取り消しは本当にひどい話なのか?

2021.11.09 カテゴリ: 人の育て方企業経営での留意点経営戦略

1.BluAgeの大量内定取り消し事件とは

 先週のことですが、部屋探しアプリ「CANARY(カナリー)」の運営などを手がけるIT企業「BluAge」(東京都千代田区)が、内々定47人のうち21人の大量取り消しを行ったと2021年11月4日、公式サイトで明らかにして話題になりました。内定解禁日の10月1日に座談会・グループディスカッションを行い10月2日に「座談会の内容と会社の考える基準が異なるとして内々定を取り消された」(J Castニュース)そうです。ところが、そして、このことがTwitter等で徐々に拡散、11月4日に「弊社新卒採用手続に関するお詫びと対応について」と公式サイトで正式に謝罪することになりました。

 どうしてそのような事態になったのかは以下のサイトの酒井一樹氏の分析がすごく説得力があったのでそちらをご覧ください
https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaikazuki/20211105-00266599

私なりにまとめると以下のようになります。

 BluAgeは従業員50名程度の不動産物件検索アプリの開発・運営の会社、ただアプリの利用者に不動産仲介を直接BluAgeが行うビジネスモデルでこの採用が始まりました。ほとんどの採用は個人営業でそのため宅建の資格取得などを求めていましたわけです。ただし、ビジネスモデルの転換で不動産仲介自体は代理店が行うことになり、こういった個人営業要員は一気に不要になったと思われます。これが、大量内定取り消しの背景ではないかということでした。

 そもそもこの会社、従業員約50名なので新卒47名とはかなり無茶な採用計画だと思います。一方でベンチャーでこういったビジネスモデルの素早い変更、必ずしも悪いことではないですが、新卒といった人々を巻き込んでしまったのはまずかっただろうと思います。

 一方でそもそもこのような会社に新卒で入社することが本当に良かったのか少し考えてみました

2.兵隊採用

 ビジネスモデルが変わっとあっさり不要になる人材、気の毒ですが要するに「一山いくらの兵隊」としてして採用された人たちといえます。もとからきちんと育てようとかそんな気はなかったでしょう。したがって、たとえ採用されたとしてじっくり育てることはせずに適宜使い捨てされたと思われるので、たとえ入社できたとしてもそれが本当に良かったかは疑問です。

 よく言えば合理的、悪く言うと冷たい、完全に幹部候補と兵隊が分かれているタイプの会社ではないでしょうか。兵隊は目先の仕事をやってくっれば良くて、特に育てはしない、一方幹部候補生は教育と様々なチャレンジの機会を与えて育てていきます。ただし、ベンチャーでは教育は無理なので優秀な経験者を幹部候補生と採用して仕事でのチャレンジで育てて行く一方、大多数の新卒は使い捨てでしょう

 自律的に仕事をして、自分でどんどん積極的に学んでいくことに自信があるタイプはベンチャーに新卒で入ってもやっていけると思います。ただし、この例のように一山いくらの兵隊の場合はお勧めではないです。単なる使い捨ての駒に過ぎないですから。よくある話ですが、その会社の全社員に対して採用の数が多いのは気をつけた方がよいでしょう。

 少し不謹慎かもしれませんが生物で考えてみましょう。こういった一山いくらの兵隊はネズミと一緒です。2か月程度で成長(よく言えば即戦力!)、4~5匹の子どもを20日間くらいの妊娠期間で、ねずみ算式に大量に産みます。ただし、猫やカラスなどの天敵に襲われどんどん食べられてしまいます。こういった会社の新卒の皆さんすぐ即戦力になりますが、ネズミがどんどん天敵に食べられるように力尽きて辞めていくので大量採用とまります。すごくわかりやすく冷酷かつ合理的な仕組みと思われます

 新卒の方そんな会社に社会人経験なしで様々な企業に就職できる新卒の強みである新卒カードを使ってはならないでしょう。でもそもそも、日本に特有な慣習的な新卒採用を続けていくべきなのでしょうか?

3.少子高齢化と新卒採用

 ネズミ的多産多死の兵隊採用、少子高齢化で成り立たなくなります。日本という社会が成熟化している、ある意味進化してくると高等哺乳類的、少子だがじっくり育てていく方向に舵を切っているのではないでしょうか。

 一方でこういった新卒一斉採用に対する批判でJob型採用にすべきという声もあります。ただし、自分の新卒時代を振り返ると本当に何をやりたいかまったくわからなくてJob型採用なんて恥ずかしながら全然自分には無理だったと思います。人によるとは思いますが、社会人経験3年くらい過ぎると何となく自分の方向性が少しずつ考えられるようになってくるというのが私の感覚です。

 日本若者(15歳~24歳)の失業率は4%、OECD諸国平均17.9%(2020年データ)と比較してと突出して低いです。これは、新卒一斉採用という優しい制度があるからではないでしょうか?即戦力ではなくても育てようという日本企業の制度は存続した方が良いと思うのはここにあります。ただ、この制度が硬直化して「新卒カード」という1回しか使えない形になるのは問題だと思います。例えばこのBluAgeで内定取り消しになった人たちが著しく就職で不利になったりするような事態です。

 1年くらい海外を放浪、少し起業してチャレンジしたとか回り道した人間も取り込むような柔軟性はこの制度に欲しいです。少なくとも2~3年の寄り道は許す新卒採用とキャリアチェンジが比較的容易な柔軟な社会が少子高齢化の日本で実現すればなどとこの内定取り消しのニュースを見ていて思いました

 

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