パナソニックとオリンパス&ブリジストン2つのリストラの形
2021.12.22 カテゴリ: 企業経営での留意点、経営戦略。
目次
1.最近話題だった3つのリストラ
年も後半になって大手企業のリストラの話が経済紙をにぎわしました。先陣を切ったのがパナソニックです。10月1日1000人以上の社員が早期退職制度を利用して退職しました。経済誌などでは、退職金最高4000万上乗せで50歳標的の壮絶リストラといった形で取り上げていました。50歳で割増支給50か月で50歳あたりの年代をターゲットにしています。楠見新社長就任前日の9月30日がこのプログラムの退職日になっており、新体制をフレッシュな形で乗り切るか形にしたかったのでしょう
もう一つがブリジストンで、12月10日に発表しました。防振ゴム事業は中国企業に、化成品ソリューション事業はファンドに売却するということで、日本と海外合わせて8000人規模
のリストラです。
オリンパスもこれに続き、12月17日顕微鏡や産業用の測定装置などの価額事業を分社化し第三者に売却する予定と発表しました。人員的には国内外で約3800人程度を減らす予定です。ちなみに今年の初めに希望退職をオリンパスは募ったばかりです。こういった形でリストラというのは当たり前になってきましたが、その対象者となった日本企業にいらっしゃるご本人にとってはやはりショックなことでしょう。
一方世の中にはリストラ慣れしている人たちもいます。
2.外資のリストラ慣れした人たち
私の場合、欧米系外資にいた期間が長いのでリストラ慣れというかリストラずれしている豪のものがたくさんいました。多分割増退職金などと言ったらあっという間にガンガン皆応募してしまうような輩は多いです。リストラ理由だと大手を振って転職できるし、追い銭(割り増し退職金)もあるし、いいことづくめとしか思わないわけです。
家族もリストラ慣れをしています。少し自分の例を上げてみます。やはり私も以前勤務していた欧米系の会社が日本撤退をすることになり妻に「日本法人閉鎖に伴って就職活動するよ」という話を持ち出しました。一応妻も「大変だけど頑張ってね」程度の話はしてはくれましたたが、「ところで話は変わるけど・・・聞いてほしいことがあるの」とのこと。何だったかというと「子供部屋のリフォーム工事をする」のでレイアウトなどを楽しそうに語り始め、「すごくいいでしょ!お金XX万円かかるけど別にかまわないよね」とのこと。「おいおいそれいくら何でも・・リストラの次の話題か?」と思いましたが、それほど家族もリストラ慣れしてしまっています。確かにちょうどこのリストラでもらったお金でその工事代金はほぼカバー出来てしまいましたが・・・
とはいえ普通の日本人はこんな能天気な人たちはいませんので「地獄のリストラ」(希望退職)とか「島流し」(分社・売却の場合)など非常にシリアスなことになります。
本当に両方ともひどい話なのでしょうか。2つのパターンに分けて考えてみます
3.2つのリストラタイプの違い
日本企業の場合、希望退職型と分社・売却型の2つのパターンがあります。10月に発表されたパナソニックは希望退職型、12月のブリジストン・オリンパスは分社・売却型と言えます
希望退職型の特徴はビジネスは残るが人は減る、そしてお金は割増退職金などで目先出ていくという点です。一方分社・売却型はビジネスも人も残らないですが、通常売却代金などお金が入ります。希望退職型の最大のリスクは「できる奴」は競合他社の草刈り場になることです。「できる奴」なので転職で給料は上がるし、追い銭(希望退職)ももらえるのでこれ以上美味しい話はないです。一方他社から声が係らないタイプは当然必死に会社にしがみつこうとするでしょう。かつては追い出し部屋とか様々な嫌がらせ手段を取りましたが社会問題にもなったので露骨な手段は取りにくくはなりました。もしかするとより一層陰湿な形になったのかもしれないですが
残った人たちは少ない人数で同じビジネスをやりくりしないといけないので一般的にはしんどくなるでしょう。モチベーションも確実に下がります。欧米企業にも似た形はありますが、希望退職ではなく指名解雇です。冷酷にビジネスで必要な人数を割り出し不要な頭数をご指名で減らしていきます。モチベーションも下がりはしますが、ある程度適正人数を計算するのでそのあたりは多少まし(ただ、この計算がいい加減で苦労することは会社によってはある)です。この時に残したい人材はむしろ引き止めにかかりますから草刈り場になる率も低くなります。
分社・売却型は簡単に言うと株主・経営層が変わるだけなので従業員への影響は比較的小さいと言えます。ただ、これは相手先次第なので何とも言えません。ただ、そもそもこの部門・会社を不要なものと思っていた会社より必要だと思っていた会社(またはファンド)が買ったいるわけですから普通は良い方向に行きます。ただ、当然経営能力が低い相手だったりすると悪い方向に行くこともありますが。合理的な相手であれば、買われた会社でも能力のある人間はどんどん抜擢して育てていくはずです。米系などは被買収側の社員がドンドン昇進して最終的に買収側の社長になったことなど普通にあります
売却側としてもコアでないビジネスを切り離して、かつ必要な人財は自社の方に先に引っ張っておけば、負の遺産を切り離してお金までもらえるといった美味しいリストラとなることもあります。ただ、このビジネスが実はかくれたコア財産だったりすると悲惨なことになるのでこれも経営陣の目利き力が問われます
日本の場合、解雇規制が厳しくて希望退職といった方法しか取れません。したがって、業績回復には中途半端でかえって毎年のような希望退職の募集といったダラダラとしたリストラで日本企業の体力を確実に蝕んでいるような気がするのです。そういった意味では希望退職型は本当に最後の手段でダラダラと毎年のようにやるべきではないと思うのです。