志本(パーパス)経営を目指す
2022.01.12 カテゴリ: ダイバーシティ経営、企業経営での留意点、経営理念。
目次
1.資本主義は暴走しているか?
年末年始「パーパス経営」名和高司著を読みました。全体に流れるのは米国流の原理資本主義に対するアンチテーゼといえます。.全部で500ページにもなる大著ですので様々なトピックが挙げられています。したがって、少し私的に興味を持った部分を私見を含め取り上げさせていただきます
かつて、資本主義の問題点と言えばかつてはマルクス理論にあるような労使の対立だたっと思います。しかし、現代において、実は資本主義が暴走して経営者も株主の要求にこたえるためにひたす
ら奔走するような資本増殖活動の奴隷になっています。一方で、貧富の差はドンドン激しくなってきました
さすがに米国においても株主第一主義というのは見直される機運が高まっているのですが、日本においては周回遅れな形で「グローバルスタンダード」という言葉で米国流強欲資本主義を取り入れようとしていているようです。ESGやSDGsも最近注目されてりますが「直輸入アイテム」っぽいです
現在のIFRS(国際基準会計)に対しても批判的です。確かに、私自身も会計を取り扱っている職業ですが。会計は本当に役に立っているか疑問な部分はあります。
2.会計は役に立っていないのではないか?
確かに会計は役に立たないとまで言うと極論ですが、きちんと企業の本来あるべき姿を反映しているかというとそれは疑問です。
例えばアップル、時価総額 3兆ドルを超えたとニュースになりました。しかし、しかし貸借対照表に載っている純資産価値は653億ドルでしかないです(2121年9月26日現在)。つまりその価値のほとんどは貸借対照表に反映されていません。なぜならば、こういったアップルのブランドなどの無形固定資産は全く現状表すことができないのです。もし、3兆ドルでAppleを買収できたとするとそのほとんどはのれんになってしまうわけです。
今までの自前の設備を持って運営されている製造業であればある程度貸借対照表はその企業の実態を把握していましたがGAFAのような企業の貸借対照表はほとんどその企業の実態を表していないのではないかと思われます。
一方で「時価会計」と称して貸借対照表に載っている資産については常に評価が必要です。業績が悪くなると将来キャッシュフローが不確実になるということで資産の減損(価値の切り下げ)を求められるので業績の振り幅は大きくなります。こんな短期的要素で損益がコロコロ変わるモノというのは
短期的利益を得たい株主以外の本当に役に立っているかは疑問です。
こういったグルーバルスタンダードの導入の中で注目を集めているのはESGとSDGsでしょう。こういった、直輸入アイテムであるESG、SDGsブームに対してもかなりこの本では批判的です
3.ESGとSDGs
特にG(ガバナンス)に対して批判的です。確かに私も多くの日本企業を見る限り、ガバナンスの強化も形式的に米国流を取り入れていく気がします。例えば、一部の女性や外国人に社外役員の要請が殺到しているなどが一つの例かと思われます。その企業にしっかりとしたパーパス(志)がない限り、私も仏作って魂入れずになっていると思います。
なんとなく、新聞などでも「物言う株主対閉鎖的なガバナンスが機能していない日本企業」といった
構図があるようですそもそも企業統治などというものは外部投資家が口を出して何とかなるものではないと思います。しかも。そもそもガバナンスが機能しない大きな理由の一つに強欲な株主による短期的な要求があるのではないでしょうか
例えば、最近のガバナンスに関する大きな問題で東芝が経産省とともに株主工作を行った件がありましたが、当然そこには東芝のガバナンス体制の問題もありますが、強欲な投資家たちの短期的要求がその端緒となったことは確かではないでしょうか
SDGsについては別に挙げられている項目に問題があるとこの本で指摘しているわけではないです
ただ、これをテンプレート的に使ってこれを満たせばOKといった使い方に疑問を呈しています。本来はその企業独自のパーパス(志)がありそれに沿ったものであるはずです。テンプレートにあるものをやりますでは従業員の心は動かないでしょうし、動いたとしても淡々と事務的にさばくだけでしょう。
ROEを目指すことに関しても短期的な視野だとしています。ただし、これには異論があります。やたらと高ROEを目指す必要はないですが、やはり低ROEに甘んじている企業は資本効率性は考えるべきだと思います。ただし、単にROEという結果を求めるため自社株買いなど小手先の手段に走るのはそれはダメでしょう
全体を俯瞰すると、米国流の資本主義、短期的な視野の経営手法からパーパス(志本)経営を目指すというのが骨子です。長期的な視野をもって独自の志(パーパス)をもって進むべきという点は共感
しました。