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戦略コンサルが役に立たない本当の理由

2023.02.09 カテゴリ: 企業経営での留意点経営戦略

1.戦略コンサルは役に立たない?

 以前ある大手企業の役員さんから大手戦略コンサル会社を入れたけど全然役に立たなかったという話を聞きました。これはしばしば聞く話です。また、大手戦略コンサル会社出身者経営者としての成功者も多いような気がしますが、逆にうまくいかない人がほとんどだという人もいます。

 実際に私も元戦略コンサル会社出身、米国超一流大学MBAを最優秀の成績で卒業という元BCGの堀紘一氏のような経歴の社長の直属の部下として働いていたことがありますが、悲惨な体験でした。(後述します)

 さて、そもそも戦略コンサル会社とはどんなことをするのでしょうか。非常にざっくりいうと経営戦略を立案する人たちです。そして、経営戦略もすごく簡単に言うと、ビジョンを定めそこに行くためにはどんなことをすればよいのかの案です。ケースによって事業別や機能別に落としていき優先順位を決めていくという部分も入るとはいえます。

 とりあえず私が見た範囲ですが、戦略コンサルの失敗と会社側が言うケースでそもそも立案した戦略自体がまずかったというケースもないわけではないですが、基本的には戦略実行の部分で躓いているのが実態でしょう。

その際の会社側の言い分は汗をかかない人たちが考えた現実的でない戦略で役に立たなかったということですが本当でしょうか?

2.頭の汗と体の汗

 そもそも特に戦略コンサルというものがかく汗はきれいな汗、よく「頭に汗をかく」といった種類の汗です。必死に根本的問題点を発見し、そこまでの解決法を考えていくといったときに出る汗といえます。これ、予想以上に訓練と習慣が必要で、そもそも頭に汗をかける人は非常に少ないと思います。そういった訓練と習慣がある戦略コンサルの人たちは価値が高いと私は思います。

 一方できたない汗、これは冷や汗・あぶら汗的な体の汗、これも流す必要があります。やはり現場で戦略に基づく実行計画を落としていくには簡単な指示だけで進むものではないです。部下が思った通りに動かない、反発が各方面で生じるなど地雷や障害はその時点でいたる所にあります。

 こういったものを一つ一つあぶら汗や冷や汗などの体の汗をかいていかないと前に進めません。ファシリテーションやコーチングなど様々なテクニックが一応ありますが、体の汗を流すには最終的に精神力や人間力が必要と言えます。

 大企業の偉くなった方、頭の汗も、体の汗もかくのを嫌がる、そんな方も少なからずいらっしゃる気がします。特に後者が多いと当然戦略コンサルがどんな良い案を作っても絵に描いた餅です。

3.一流の経営者はどういった汗をかくか

 自分も含めて思うのですが、人間は本質的には怠惰なので両方の汗ともかくのは本能的に嫌がります。本当は戦略コンサルが頭に汗をかいて作成した戦略と実施計画を今度は経営陣たちが体に汗をかいて実行しなければならないのですが、特に大企業で偉くなるとそれも嫌がる方が多いように見受けられます。酷いとまる投げの連鎖で結局誰も汗をかいてやらないといった結果に陥るのです

 前述の私が一緒に仕事をさせていただいた戦略コンサル出身の社長、戦略や方向性は素晴らしかったです。しかし、実行についてはほぼ部下に丸投げ、そして頭が良いせいもあるのでしょうが思い通りにいかない部下を罵倒するといったパワハラ系でした。数字で結果をある程度出せる営業のトップ、数字でガッツリ反論するCFOの私を除いては皆直属の部下はやられっぱなしでメンタルを病んでしまいました。私も腹を据えかねることもあり辞表をたたきつけ、社長室から出ていったこともありました(社長も反省して慰留されました)。

 逆に優秀な経営者でぱっと浮かぶのが稲盛和夫氏、私はすべてを肯定するつもりはないですが、やはりこの方頭にと体にしっかり汗をかける方だと思います。日本航空の再建でもしっかりビジョンと方向性を定めて頭に汗をかく一方、従業員の中に入ってしっかり対話を重ね、反発などもきっちり受け止めて体に汗をかきながらやっていった結果が成功したといえます。

 日本電産の永守会長、この方も買収した会社に対ししっかりとした方針と戦略を定める(頭に汗をかく)とともにどんな些細な費用も見逃さないとばかりに一つ一つの領収書まできっちり見る(体に汗をかく)と話されていました。

 戦略コンサル出身者でもDeNAの南場会長、私の上司と知人だったようで上場前のまだ小さな会社のころお話を直接お聞きする機会が会社でありました。やはりその見かけやご経歴から全く想像つかない体に汗をかく泥臭い話は心を打ったことをよく覚えています。

 要するに企業を本当にうまく運営していくためには頭と体に汗をかいてやっていかなければならないといえます。逆に日本企業の優秀な方、とにかく仕事に追われてしまうので体の汗しかかかず、頭に汗をかく習慣がなくなって来る傾向があります。これは気を付けたいことです。

 私自身もハンズオン系の仕事に追われるとついつい頭に汗をかかない知的怠惰の習慣がつきがちです。気を付けたいもので、自戒も込めて書かせていただきました

 

 

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