ブログ

HOME > ブログ > 企業経営での留意点 > 企業の業績分析 > 日本企業の大量の自社株買いは本当に株主還元か?

日本企業の大量の自社株買いは本当に株主還元か?

2022.04.06 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

目次

1.2021年の自社株買い

 

 4月3日の日本経済新聞によれば、2021年に設定した自社株買いの枠が前年度に比べて7割近く増え、8兆円余りにもぼったようです。背景としてはコロナ禍からの業績回復で手元資金に余裕ができた ので株主還元にまわすというのが一つ挙げられています もう一つとして東証プライムの流通株式比率をプライム基準の35%にするためZホールディングスやコーエーテクモホールディングスが自社株TOBで親会社や創業家の持ち株を買い取ったということも述べられています。流通株式から主要株主(10%以上所有)や役員等所有株式はのぞかれるためその分を買い取ったということです。

 セミナーなどで素朴な疑問としてよく上がりますが、自社株買い、別に株主に1銭もお金はいっているわけではないのになぜ株主還元になるのでしょうか?一つとしてEPS(一株当たり利益)があがるといえます。自社株買いで分母が小さくなるから大きくなりますよね。そうするとよく株式投資の割安株の指標となるPER(株価÷一株当たり利益)が低くなりますから株価も上がりやすくなります
  もう一つROEがよくなることもあるでしょう。ROE=当期純利益÷自己資本なので自社株買いで自己資本が小さくなれば当然高くなります。皮肉な見方をすれば小手先の数字を動かすともいえるかもしれません。東証プライムの基準を満たすためという理由はある程度仕方ないとしてこういった「株主還元」で自社株ドンドン進むのは望ましいのでしょうか?

 

2.自社株買いのあれこれ

 東芝のいわゆるモノ言う株主対策を見てみましょう。東芝は2021年1000億の自社株買いを行い、2021年9月10日にすべて終了と発表しました。これを東芝の連結財務諸表で見てみましょう。20201年9月の半期報告書を見ると営業活動によるキャッシュフロー1800億、投資活動によるキャッシュフロー約530億そして自社株買い約1000億と配当で900億拠出しています。いわゆる本業で稼いだお金1800億で将来のため(投資に)使われたお金はたった530億しかなく株主のためと言ってもほぼ単に社外に流失してしまったといっても仕方ないです。これから東芝はようやく立ち直り将来のためにドンドン投資していきたいところなのにすごく残念な形のように感じます。

 そうは行っても超優良企業でもがっつり自社株買いをやっている会社もあります。代表例はAppleでしょう。何と言っても2021年9月期の営業活動によるキャッシュフローは$104B(約12兆円)そのうち自社株買いは$86B(約10兆円)で、スケールがバカでかいです。いわゆる固定資産への投資は、確かに営業活動によるキャッシュフローから比べると少ないですが$11B(1.3兆円)あります。確かに成長の天井が見えているとの懸念は感じますが、このくらいまで行くと確かに自社株買いをがっつりやるのも理解はできます

一方貪欲に成長を目指している会社もあります

3.貪欲な成長

 代表例はAmazonです。2021年12月$46B(約6兆円)のキャッシュを営業活動によるキャッシュフローで生み出しています。しかし、$58B(約7兆円)を投資活動によるキャッシュフローに費やしており貪欲に成長を追求しています。

 Appleのような安定成長軌道の会社は確かに自社株買いというのはある程度わかりますが、やはりこれからあたらしい道を切り開いていこうという会社はAmazonのようなかなり成長を目指して資金をつかっていくという方が個人的にはうれしいです。

 こういった意味ではポストコロナにおいてさぁ勝負に行くぞという会社より「自社株買い」に走る会社が多数であるのはかなり寂しさ覚えます。要するに将来への投資を止めて目先の株価上昇を目指すわけですから長期保有の株主にとっては実は対して有難くないことです。

 日本はこれからもどんどん縮んで行くのでしょうか・・

 

 

お問い合わせはこちらまで

TOP