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日本企業の低学歴化の根本的な問題は何か

2022.05.04 カテゴリ: 人の育て方企業経営での留意点社会問題

1.日本の低学歴化とは

 5月2日の日本経済新聞で日本の低学歴化が特集記事となっていました。要するに、日本企業に博士号・修士号取得者が少ないということです。人口100万人あたりの博士号取得者は米国、英国、ドイツ、韓国との比較で一番低くその他の3か国の半分以下という惨状(2018年データ)です

 しかもどの国も比較年度の2008年に対し増えているのに日本だけ減少しています。2007年に276人いた米国での博士号取得者も17年は117人に減少。国別順位は21位となりました。

 経営共創基盤の冨山和彦グループ会長は米国の大学院について「今は存在しない仮説を立て、検証して一般的通用性を証明する。米国でPh.Dを取るまでの知的訓練は破壊的イノベーションそのもの」と強調されていました。

 メルカリでの博士号取得プログラムなど、ここでの論調は低学歴化が日本企業の競争力を弱めている、高学歴の修士、博士号取得者がドンドン企業の主流となるべきという話だと思われます。これについてはその通りだとは思いますがそんな単純な話なのでしょうか。

2.博士を増やせの結末

 これは、以前の大学院重点化政策とポスドク1万人計画騒動を思い出させます。1996年文部科学省が打ち出した施策で大学院を増やし、かつ博士号取得者に対しポスドクとは大学院の博士課程修了者が付く任期付き研究職で有給、これを国が支援していました。

 その結果起こったことは博士号取得者に対し研究職や大学等でのポストが圧倒的に少なく、まともな就職ができずに「高学歴ワーキングプア」に陥る人たちが続出しました。単に博士を増やせはこの二の舞となるだけでしょう

 欧米の場合、いったん社会に出てもまた大学院に戻って研究を行うなど非常に大学の仕組みが柔軟です。日本の大学の仕組みを柔軟にしないと意味がないのではないのではと思います

 そもそも、日本の大学「今は存在しない仮説を立て検証して一般的通用性を証明する」ような知的訓練を提供できるのでしょうか?

3.大学の研究室の改革

 お断りしますが、ここからは自分の狭い経験での話なのでややバイアスがかかっているかもしれません。 

日本の博士号取得者(海外ではない)についてですが、大学の研究職から移ってきた方、イノベーションとは正反対のどちらかというと頭の固い職人肌の人たちというイメージです。悪く言うと非常に狭い分野で凝り固まっていて、学際的に行うといったことをしない、よく言うと一芸を極めた職人的な人が多かったです。

 実はある一流大学の国際経済学の教授と昔、お話したとき、私が当時勤務していたGEの話で、Jウェルチ的な経営が国際経済に与える影響のようなことをお聞きしたところ「Jウェルチさんてだれですか?」と聞かれて絶句した覚えがあります。自分の専門分野から少しでも離れると興味がない方は多いのではないでしょうか。

こ れも、あくまでも自分の狭い経験で恐縮ですが、ある日本の大学、研究室の教授を頂点にした徒弟システムで大学院生たち研究室に滅私奉公しています。序列としては大学(または理研などの一流研究施設)のポスト>企業の研究所>企業に勤務でアカデミックな世界が上といったものになっています。しかも、力を持った教授だと他大学のポストなどもある程度差配できるようなところが見受けられました。

 こんな状況で博士を増やしてもそもそもビジネスの世界に入ってくるのは、アカデミックな世界に入れずに仕方なくやってくるのですから企業で博士は使えないというのは日本企業のせいばかりではないと思います。大学の研究室の古い体質、この当たりの改革が実は最初に必要ではと思うのです。

 

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