ブログ

HOME > ブログ > 企業経営での留意点 > グローバルビジネス > ユニクロのロシア事業一時閉鎖は遅すぎるか

ユニクロのロシア事業一時閉鎖は遅すぎるか

2022.03.22 カテゴリ: グローバルビジネス企業経営での留意点社会問題経営戦略

1.ロシアのウクライナ侵攻のニュースを見て

 ロシアのウクライナ侵攻、ウクライナの方々に同情とロシアに対する怒りを感じる方は多いと思います。なんとかできることはないかと考えて、UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)に寄付を行ったくらいが自分のできることでしたが。

 今回の報道を見ているとロシアが100%悪という一方的なモノしかないのは少し気にはなります。私の見方が悪いせいか、日本のメディアよりはバランス感覚があると思われる英文メディアでさえも一方的な論調しか目につきません。当然今回はロシアの一方的な侵略だは思うのですが、「盗人にも三分の理」があると思っています。

 例えばロシアがウクライナの民間施設を無差別に爆撃しているのではないかなどと伝えられ、私も怒りを覚えるのですがが本当に単なるロシアの暴挙なのでしょうか?あくまでも想像ですが、ウクライナがゲリラ戦をやっている限り、いわゆる人間の盾、民間人を盾に民間施設を攻撃拠点としていることは十分考えられます。別にロシアの行動を擁護するつもりは全くないですが少なくとも100%ロシアの暴挙とまでは言い切れない部分はあります。すべてにわたって、ロシアを少しでも擁護すると考えらるものはすべて悪と決めつける傾向がある気がします

 そのやり玉に当たった一つの典型的なパターン、がユニクロをロシアでも展開するファーストリテイリングです。このロシアのユニクロ騒動見ていきたいと思います。

2.ロシアのユニクロ騒動

「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利がある」と日本経済新聞で3月7日ファーストリテイリングの柳井正会長はロシア事業の継続を述ましたが、SNSなどで批判が殺到しました。結局3月10日「現在の紛争を取り巻く状況の変化や営業を継続する上でのさまざまな困難から、事業を一時停止する判断にいたった」と発表し、ロシア国内にある全50店舗の営業一時停止を表明しました。

 一方で全然目立ちませんが、実はファーストリテイリングは「UNHCRに1,000万米ドルと毛布・ヒートテックなど衣料20万点を提供-ウクライナおよび近隣諸国で避難生活を送る人々への人道援助活動を支援」のようなことをいち早くやっています。

 消費者を相手にする企業としての広報戦略としては柳井氏の発言・行動は失敗だったと思われます。ただし、本当にこれ自体、本当に企業として問題のある行動なのでしょうか?「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というファーストリテイリングの理念からすると、ロシア侵攻に反対だとしても、撤退することではなく、服を提供することで何かしらメッセージを伝えることでしょう。

 確かに軍事転用ができるような素材・部品・製品などに関してはロシアから撤退、輸出もしないというのはよくわかります。しかし、ユニクロの服が軍服として使われるわけでもなく、マクドナルドなどもそうですが困り苦しむのはロシアの一般庶民です。こういった怨嗟の声がプーチン政権への圧力になるのかもしれませんが、企業がそこまでやる必要があるのだろうかと疑問に思います。

 私は、少なくともロシアのウクライナ侵攻を直接間接的に支援することに貢献しない限り、特に一般消費者に密着しているような企業は活動するのはかまわないと思っています。ただし、SNSの影響でこのようなニュースがあっという間に広がり、一定の考えの方々の意見が一気に集まってくるので、それが大きな影響力を持ってしまうというSNS時代の広報戦略としてはロシアでの活動は自粛せざるを得ないのでしょう

 ただし、実利というかリスク管理として、あまりニュースには出てこないですが保険の問題もあるかもしれません

3.実は本音の撤退は?

 結構ロシアに進出している企業にとって痛いのは保険会社の撤退ではないでしょうか。ロシアが海外の保険会社を排除する法律を出したのがそれに拍車をかけています。要するにロシアで事業を行うことが現在ただでさえリスクが高いのにそれに加えて無保険になってしまうリスクがあるのだからより大変です

 これに加えて、大抵損害保険は再保険といった形でリスクを分散させるのですが、当然このような状況なので再保険の引受けもかなり慎重になっていると言えます。特に火災保険などは一年更新なのでなにかしら建物やプラント・工場を持っている企業は非常にリスクが高くなっています。人道的見地というよりも広報戦略に合わせて、こういった無保険になるなどのリスクの高まりといったものが、企業のロシア撤退の本音かもしれないです。

 新疆ウイグル地区の綿の問題といい、SNS時代、企業への画一的な批判というのが目だつ気がします。いわゆる一方的な決めつけ、レッテル貼りがどんどん意見として幅を利かせるのは望ましい世界ではない気がします。しかし、こういった意見で一気に広がりやすいので、広報戦略をにらみながら難しい選択をせざるを得ないというところなのでしょう。

 

お問い合わせはこちらまで

TOP