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JALとANAの決算の共通点と意外な相違点

2022.05.16 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

1. ANAとJALの決算が出ました

 GW前にANAとJALの2021年度決算が発表されました。ANAは1兆203億円の売上、営業利益は1731億円の赤字なものの、昨年度の4647億円からは大幅に回復、そして2022年度決算はコロナからの回復で売上は1.66兆円を見込み営業利益500億円と回復を見込んでいます。

 一方JALも2021年は6827億円の売上、EBIT(≒営業利益)は2394億の赤字ですが昨年度の3983億の赤字からは回復、そして売上も1.33兆円でEBITも大幅改善で800億円を見込んでいます。

 ほぼ似たような経営成績ではありますがJALの方がどちらかというと急カーブの業績の回復を見ているといえるでしょう。少しこのあたりもう少し見ていきたいと思います。まずは収益面です

2.旅客収入からみた収益面

 ここでは、収益の隊部分を占める旅客収入にちいてみていきます。旅客収入のファクターを分解すると以下のようになると思います。

旅客キロxイールドx有償座席利用率=旅客収入

 旅客キロというのは乗客の移動キロ数、イールドはキロ当たり席単価、そして有償座席利用率はどの程度座席が埋まっているかです。特に航空会社が知恵を絞るのがイールドと有償座席利用率です。当然席単価が高い方がいいに決まっていますが高いために利用率が下がってしまっては元も子もないです。席が移動しても「空気を運んでいるだけ」ですが旅客を運べばそこに収入が生まれるはずです

 そこで、ビジネス出張客などには高い席単価、一方価格に敏感な観光客などには安い席単価を組み合わせてイールドx利用率を最大化しようとする戦術を取ります。これをイールドマネージメントと呼んでいます

コロナ前を比較すると

JAL国際線 イールドと利用率は10.7、85% 国内線は19.3%と76%
ANA国際線イールドと利用率は12.8、73% 国内線は17.2%と68%

 ざっくり数字だけ見るとANAは国際線ではイールド重視である程度利用率をさげても価格維持、JALはある程度ダイナミックプライシングを使って
キャパを埋める方針というように見えました。国内線に関しては数字を見る限りJALの方が価格をたもちながら空席を少なくして成功しているように見えます。コロナ期の21年もわりとイールドを両社ともキープしているものの座席使用率が国際線で27%、国内線で47%程度と両社とも苦戦をしたといえるでしょう。

3.ポストコロナに向けて

 2021年決算で大きく違う部分、それはコスト面です。ともに固定費削減を述べてはいますがANAの方がかなり大胆な固定費削減、恒久的に1300億を削減(2019年コロナ前対比)としています、。一方JALは2020年対比で300億円、2019年の推定でも600~700億程度とANAに比べると控えめな固定費削減です。

 ANAが強調しているのは固定費を下げて損益分岐点を下げていくということです。前述したように1300億の固定費削減、2022年度決算はポストコロナの需要を積極的に取り込んでいくという側面よりも、コロナ前に戻らないとしても十分利益が出る体制を目指している面が強く出ています。予測の座席利用率を見ても国際線の場合は約65%と2022年度もまだまだコロナ前レベルには戻らないと固めに予測していて、売上も2019年度の1兆9700億には届かない1兆6600億円としています。

 一方JALはむしろポストコロナの需要回復を積極的に取っていくという方針のように見えます。2019年度の売上の約1兆1400億とほぼ同じ売上を2022年度に予測しており、前述したように固定費の削減もANAに比べると控えめです。ただし、これは以前の破綻にかなり贅肉をそぎ落としそもそも体質的には筋肉質であるからかもしれません。

 両社の将来への対応は割と対照的ですが、急回復した場合はJALに有利、まだ停滞が続くならばANAに有利な展開とはなると思われます。さてどうなるかは正直言ってよくわかりません。ただ、現場に行くことの大切さは変わらないと思うので出張は無くなることはないです。ただ、オンライン会議もずいぶん慣れたので、その頻度は減るのでビジネス客は少し減るのではないでしょうか?

 

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