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海運3社の驚くべき好決算の秘密

2022.11.27 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

目次

1.海運会社の好況

 少し前になりますが海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)の第2四半期の決算が発表されました。海運は貿易立国でもある日本を支える重要な産業とは思われますが、今まではあまり目立たない地味な分野であったと思われます。ただ、最近の決算は目をむくほどの好調です。

 今期の上半期の決算をみると以下です
日本郵船 売上約1.3兆円 経常利益約7600億円
商船三井 売上約8200億円 経常利益約6000億円
川崎汽船 売上約4800億円 経常利益約5600億円

海運業界そもそもそんなに儲かる業界だったけと過去の決算をみなおしてみましょう。

日本郵船
2018年3月から2022年3月まで経常利益の推移
280億、△20億、444億、2153億、1兆31億

商船三井
2018年3月から2022年3月まで経常利益の推移
314億、385億、550億、1336億、7217億

川崎汽船の2018年3月から2022年3月まで経常利益の推移
19億円、△489億円、74億円、894億円、6575億円

ようするにここ1~2年でいきなり利益が増えているのです

細かく見ていくと驚くことは、商船三井、営業利益550億しかないのに持分法による投資損益が6573億もあります。川崎汽船に至っては売上より経常利益が多いです

これってどういうことなのでしょうか?

2.ONE

 実は、この海運3社の利益のかなりの部分は持分法損益です。これは関連会社(持ち分比率50%以下)の損益を持ち分比率だけ取り込んだ数値です。したがって、これは関連会社が非常に大きな利益をあげたために生じているわけです

 この関連会社がONE(オーシャンネットワークエクスプレス)です。ONEは日本郵船38%、商船三井31%、川崎汽船31%の出資で3社のコンテナ船事業を統合して2017年に誕生しました。誕生の経緯は当時コンテナ船の船舶の過剰で運賃が低下、3社のコンテナ船事業は単独では生き残れないと判断したことにあります。この過当競争のあおりで韓国の有力海運会社の韓進海運は破綻しました。

 コンテナ船、輸送に関しては定型的サービスとなり価格競争の側面が強いです。船舶投資などの固定費を考えればスケールメリットは大きいわけです。アジア⇔北米路線は韓進海運の破綻により日本の海運3社にとってシェア拡大のチャンスではあったのですが当然そこには規模の大きい欧米大手が参入してきます。そのためこの3社がコンテナ船事業を統合したわけです。ただし、それでも貨物容量的には世界7位にすぎません

 そして2018年は統合作業に時間がかかり大幅赤字になり、弱者連合などと揶揄する声もありました。

 

3.黒字化はなぜか

 基本的にはコンテナ市況の大変化です。挙げられる理由の一つは、そもそもコンテナ自体の生産が市況の低迷で低下、それに加えて米中貿易摩擦で運行が減るとの予測でそれに拍車がかかりました。そこで起こったのがコロナ禍です。コロナ禍の巣ごもりで欧米の生産が滞るとともに輸入が増加しました。しかし、トラック運転手不足で空コンテナがはけません。そして、北米路線での重要な港である米国西海岸の港の荷捌きがコロナ禍による作業員不足による渋滞で滞ったことがとどめを刺しました。

 これによってコンテナ船の船賃は暴騰、一時期は低迷期の6倍程度まで跳ね上がりました。今までの議論をまとめると「なんだ、単なる好況に伴うラッキーではないか」と思う方も多いかとは思います。確かにそうなのですが、しっかりと3社の統合を行ったことが運賃の上昇というチャンスを確実にとらえ成功につながったとも言えます

 みずほグループの例を見ても統合は大きな混乱を招きむしろ動きの鈍い巨象になってしまうケースも多いです。この3社連合をしっかりまとめ上げた統合力、どこに秘訣があったのだろうかといろいろ記事を探したのですが見つけられませんでした

これは非常に興味のあることで今後もリサーチしていこうと思います

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