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ソフトバンクGが大幅赤字でも存続できる理由

2023.05.19 カテゴリ: M&Aグローバルビジネス企業の業績分析企業経営での留意点

1.2期連続大幅赤字

 ソフトバンクグループ(以下ソフトバンクG)が2期連続の大幅赤字を先日発表しました。22年3月期(前期)の最終損益が1兆7080億円、23年3月期(当期)が9701億円ですさまじいまでの赤字です。

 主たる原因はビジョンファンド(SVF)の不振、前期が3兆6258億円の赤字、当期が5兆3223兆円の赤字です。一方、ソフトバンクG本体でも投資事業は行っていますが、そちらは1044億円の黒字、4兆5605億円の黒字でした。。

 21年3月期に4兆9880億円の日本最高の最終損益を達成した後の急落ですからショッキングではあります。この赤字の中身についてみたいと思いますが、まず不思議に思ったのは当期でSVFは大赤字なのに本体の投資事業は大幅な黒字なことです。これはなぜなのでしょうか?実はこれ、いわゆるアリババマジックなのです。

2.アリババマジックとは

 前期末ソフトバンクGはアリババの株式を24.4%持っていましたから持分法を適用していました。大株主だったので関連会社株式としての評価方法を会計上適用していました。簡単に言うと購入価額+購入後のアリババの純損益の累積x持ち分比率が簿価だったわけです。

 アリババ、いろいろと紆余曲折はありますがソフトバンクGが購入したころよりもはるかに株価は上昇しています。それを2022年8月から9月にかけて先渡売買契約により売却しました。簿価は低いのでこの際利益が出る一方、この売却により持ち分比率は20%未満となり関連会社の会計処理の取り扱いから外れました。すると、アリババの株式は時価評価となります。当然時価>関連会社株式としての評価となりこの部分が一気に利益として計上できることになりました。

 このアリババ関連の利益が4兆3403億円ですからこれが今回の本体の投資利益のほとんどだったということになります。要するにアリババの株式の益出しをして巨額の損失を免れたという言い方もできるかもしれません

 ただ、この会計処理は経済実態的にはともかく会計的には利益操作などではない正当な処理であることは申し添えます

3.倒産しないのか?

 アリババで益出ししているにも関わらず、こんなに赤字を出してこの会社大丈夫なの?という疑問が当然沸き起こるとは思われます。そこでよくソフトバンクGが出してくる数字がNAV(純資産価値)という概念です。これはすべての保有する投資の時価からソフトバンクGの単体有利子純負債を引いた部分です。これが2023年3月末現在14兆1300億円と開示しています。これを一株に換算した一株当たりNAVは9656円、その時点の株価の5182円より大きく、株価以上の資産価値がありますと主張しています

 ただ、同数値は2021年Q1では15756円ありましたのでかなり下落傾向にあることは確かです。

 一方でLTV(ソフトバンクGの単体有利子純負債÷NAVx100)は2022年Q4の20.4%から今回11.0%まで下がっています。これは何を意味するかというといわゆる借入等の純資産価値に対する割合が減ったということを意味しており、財務リスクは下げたということです。ソフトバンクGの説明のロジックとして市場環境が悪いので財務的安定性を優先させて事業を遂行しているということなのでしょう。つまり財務的にはかなり安全=倒産など大きく行き詰まることはないという主張です。

 なかなか簡単にはどうなるかわからない会社ですが興味深いことは確かです。

 

 

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